安倍元首相の国葬で「民主主義が危機に瀕する」。実施反対に40万筆以上の賛同集まる

国葬中止を求める署名の発起人は「国葬に対する反対意見は、安倍晋三元首相の支持層からも上がっている」と指摘します。
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国葬に反対する署名は28万人以上から集まった
ハフポスト日本版

9月27日に予定されている安倍晋三元首相の「国葬」に反対する市民グループなどが5日、東京都内で記者会見を開き、国葬の閣議決定の撤回や中止を求める署名が40万4258筆集まったことを明らかにした。

署名活動に取り組んだのは、東京大の上野千鶴子名誉教授やルポライターの鎌田慧さんら17人が呼びかけ人となったグループや弁護士団体『自由法曹団』など4者。「安倍元首相の『国葬』中止を求めます」などのタイトルで7月以降、オンライン署名サイト『Change.org』で署名を募っていた。4者それぞれで募っていたため賛同者が重複する場合もあるが、少なくとも計28万人以上に上るという。

国葬については全国各地で反対運動やデモが行われており、それに呼応するように署名が急激に増加。発起人らは会見で、「この短期間で40万筆が集まったことで、国民からの不満がいかに大きいかがわかる」との受け止めを語った。

自由法曹団の小賀坂徹幹事長は「安倍元首相の支持層からも、国葬に反対する声が上がっている。民主主義の観点からも、国民の声に耳を傾ける必要がある」と指摘する。

 

◆国葬、これまでの流れは。何が問題?

国葬とは、政府が主催し、国費で行われる葬儀。岸田文雄首相は安倍晋三元首相が亡くなった6日後の7月14日に行った記者会見で、「憲政史上最長の8年8か月にわたり重責を担ったこと」「震災復興、日本経済の再生や日米関係を基軸とした外交など大きな実績をあげたこと」などを理由に、安倍元首相の国葬実施を発表。8月末には「国葬」の経費として、警備費を除く約2億5000万円の予算が閣議決定された。

国葬の実施に対し、「法的な根拠がない」「丁寧な説明がない」といった理由から批判が集まり、読売新聞JNNなどの最新の世論調査でも「評価しない」「反対」が「評価する」「賛成」を上回った。岸田首相は9月、国会の閉会中審査で実施の意義などを説明するという。

署名の発起人らは国葬に反対する理由について、以下の3つを挙げている。

1つ目は、法令上の根拠がないこと。発起人らは「内閣の独断で国葬を行うことに対し、『政治的思惑に基づく国費の恣意的支出』と批判が上がっている。また、国家が財政を動かす際は議会の議決が必要である、とする財政立憲主義に反している」と指摘する。

2つ目は、国葬はすべての国民が弔意を強要されることになりかねず、思想・良心の自由を侵害する恐れがあること。

3つ目は、市民の分断、批判封じをもたらす恐れがあること。発起人らは「安倍元首相は在任中、集団的自衛権を容認する安保法制や特定秘密保護法、共謀罪の成立を強行してきた。また、森友・加計学園問題、『桜を見る会』などでの政治の私物化や行政文書改竄問題について、真相は明らかになっていない」と指摘。「国葬を実施すれば安倍元首相を礼賛する空気が作られ、批判意見に対する攻撃に拍車がかかる。正当な批判をはじめとする自由な言論が保障されず、民主主義が危機に瀕することも懸念される」と主張する。

 

◆旧統一教会との関わり「安倍元首相が存命であれば」

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会見で国葬反対の理由について語る東京大の上野千鶴子名誉教授
ハフポスト日本版

9月5日に開かれた会見で、上野名誉教授は「不慮の死を遂げたからといって失政がチャラになるわけではない」と指摘。「事件を機に明るみに出てきた旧統一教会との関わりについて、もしご存命であれば、最も矢面に立たされるのは安倍元首相であるはず。彼がこれまでやってきたことの検証の必要があり、対立を煽るような国葬には反対したい」と述べた。

小賀坂幹事長は「国葬の実施については、安倍元首相の支持層でも反対する人がいるなど、彼の政治的評価を超えた声が上がっていると感じる。岸田首相から、安倍元首相の死を政治利用したいという思いが透けて見えることも、日に日に批判の声が大きくなっていることにつながっているのではないか」と指摘した。 

東海大の永山茂樹教授(憲法学)は「法の下の平等を定めた14条や思想・良心の自由の19条に抵触する違憲性がある」と指摘。国葬に反対する市民らが、予算の執行をさせないよう求めた仮処分の申し立てについて、東京地裁や東京高裁などが退ける決定をしているが、「現在の法律では、これから起きるかもしれない人権侵害を想定して処分することはできない。請求を退けたことと、国葬が人権侵害に当たらないことはイコールではありません」と指摘する。

<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>

 

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