9月1日に公開を控える映画『ブレット・トレイン』のジャパン・プレミアで、主演のブラッド・ピットが3年ぶりに来日した。久しぶりに日本のファンと交流したピットは、終始笑顔を絶やさず、共演者とも和気藹々とした様子を見せた。
8月22日には東京の高野山東京別院で、現在58歳のピットが「前厄」を払う祈祷を人生初体験。翌23日には、東京発京都行きの新幹線に、共演者の真田広之、アーロン・テイラー=ジョンソン、監督のデヴィッド・リーチとともに乗車し、史上初だという「動くレッドカーペット」イベントと、京都市内の映画館での舞台挨拶に参加した。
東京から京都に移動しての大規模なプロモーション活動で、SNSでは目撃情報も多く寄せられた。ピットの「神ファンサ」ぶりも話題になっている。
「ちょっと気が狂いそうになっていた」時に出会った『ブレット・トレイン』
ピットが主演を務めた『ブレット・トレイン』は、作家・伊坂幸太郎の『マリアビートル』のハリウッドでの実写映画化で、舞台は日本。個性的な殺し屋たちが続々と東京発京都行きの高速列車に乗り合わせ、死闘を繰り広げていくクライムアクションだ。ピットは新幹線で事件に巻き込まれる「世界一運の悪い殺し屋」レディバグを好演している。監督のデヴィッド・リーチは、『ファイト・クラブ』『Mr. & Mrs. スミス』などで、ピットのスタントマンを務めていたこともあり旧知の仲だ。
公開にあわせ、ヨーロッパやアジア各地でプレミア上映を行い、その最後の場所として選ばれたのが日本。「動くレッドカーペット」は、JR東海が全面協力して行われた。新幹線「のぞみ」車内の通路にレッドカーペットが敷かれ、映画のメインビジュアルや劇中キャラクターの「モモもん」のデザインで、車内が彩られた。
コロナ禍での制作となったこともあり、映画は全編ハリウッドで撮影された。「動くレッドカーペット」で念願の新幹線に乗車したピットは、「映画の撮影現場にいるみたいな感じがして、デジャブを感じます」と満足げに語った。
ピットにとって本作は3年ぶりの主演作だ。新型コロナによるロックダウンが始まって5カ月ほどが経った時に脚本を読み、当時ピットは「(ロックダウンで)ちょっと気が狂いそうになっていた」という。
本作に登場する魅力的な殺し屋のキャラクターたちに惹かれ、「この笑いがコロナ禍では必要だと思った」と感じたことが、出演の決め手だったと明かした。
「真田広之はこの映画の魂」と絶賛
本作の重要なキャラクターを演じた真田広之は、日本で子役として俳優デビューし長いキャリアを積んだのち、トム・クルーズ主演の『ラスト サムライ』(2003年)への出演を機に、拠点をアメリカに移した。数々のハリウッド大作で、そのアクションと唯一無二の存在感で観客を魅了してきた真田は、「日本の小説が原作の映画が国際的なキャストを迎えて、全世界に向けて発信できる」と、喜びを露わにした。
ピットと真田は今回が初共演。ピットは「真田さんが加わったことで、映画の優雅さ、格が上がりました。アクション映画のアイコンとして俳優をやってきて、それ自体がとても素晴らしい。一緒に仕事ができて光栄だ」と熱弁。
監督のデヴィット・リーチとピットはキャスティングの際に、真田が演じた「剣の達人」であるエルダーは「重みのある役者でなければいけない」と話し合ったという。「その人が入ってくると場が静まるような人、尊敬できる人である必要があった。(真田は)この映画の心臓の部分、魂の部分だ」と絶賛の言葉を送った。
ピットの言葉を隣で聞いていた真田は、「彼(ピット)は初めて会ったときからフレンドリーで、映画にかける情熱がすばらしかった」と回顧。「ピットの笑顔に包まれて仕事ができたことが幸せだった」と振り返り、「優雅で暖かい、機関車のような柔らかいオーラでみんなを引っ張っていく。特殊なエネルギーを感じました」と、現場で感じたピットの魅力を語った。
「戻ってくるから!」時間過ぎてもファンサ続ける
新幹線のぞみでおよそ2時間ほどで京都に到着すると、ピットらはその後、舞台挨拶の会場である京都市内のTOHOシネマズ 二条に移動。レットカーペットは映画館内に敷かれ、キャストらは、サインやセルフィーに応じながらファンとのコミュニケーションを楽しんでいた。
真田も出演作を携えての凱旋帰国となり、舞台挨拶では「ただいま!」と笑顔を見せる一幕もあった。レッドカーペットではファンと日本語で会話をしたり、時にセルフィーの撮り方をアドバイスしたりと、気さくな人柄を垣間見せた。
新幹線ではラフなつなぎ姿だったピットは、セットアップのゆったりとしたスーツに着替えてレッドカーペットに登場。プライベートで京都を訪れたことはあるが、舞台挨拶は今回が初めてだという。
会場のBGMには、『ブレット・トレイン』のサウンドトラックが使われていた。ピットはBGMにあわせて踊ったり、ファンにスマホを向けて撮影したりと、楽しんでいる様子。
大勢のファンがピットの来日を待ち侘びており、会場の熱気もあがっていた。ピットは、セルフィーが上手に撮れるようにファンのスマホを支えたり、呼び止められた時には来た道を戻ったり、後方のファンにも声をかけながら、集まったファン1人ずつとのコミュニケーションを大切にしていた。
レッドカーペットは30分で終了するはずだったが、時間が過ぎてもピットはファンとの交流を優先。最終的には、サインを待つファンに「あとで戻ってくるから!」と自ら宣言して、その後の舞台挨拶に向かうほどの大サービスぶりだった。その約束通り、舞台挨拶が終わると一人でファンが待つレッドカーペットに戻っていき、ブラッド・ピットが長年スターたる所以を垣間見た瞬間だった。
写真で振り返る『ブレット・トレイン』の来日イベント
(取材・文=若田悠希)