安倍晋三元首相が7月8日、奈良市の近鉄大和西大寺駅前で演説中に銃撃された。心肺停止で病院に搬送され、死亡した。
安倍元首相の銃撃事件で何が起きたのか。これまでに分かっていることや、事件を受けた政界や海外の動きなどを紹介する。
安倍元首相は7月8日、近鉄大和西大寺駅前で、自民党の候補者の街頭演説に応援で参加した。候補者の演説は11時10分に始まり、安倍元首相は19分ごろに現場に到着。そして11時29分ごろから演説を始めたという。
会見した自民党奈良県連の堀井巌・参議院議員によると、31分ごろに銃声のような音がして、安倍元首相が倒れたという。撃ったのは山上徹也容疑者。その場で身柄を拘束され、殺人未遂の疑いで逮捕された。
現場にいたyumaさんは、ハフポスト日本版の取材に「とても大きな発砲音を2回、聞きました。周りにたくさん人が集まっていてざわざわしていました」とコメント。yumaさんが、発砲直後に撮影した動画には、騒然とした駅前のロータリーで、関係者とみられる人物が「救急車がまもなく参りますから、スタッフの方、救急車が入ってきやすいようにご協力を」と大声で呼びかけている様子が映っていた。
松野官房長官が会見を開き「11時45分、官邸危機管理センターに官邸対策室を設置し、この後、関係省庁による会議も開催し、対応に当たっています」と説明。「いかなる理由であれ、今回のような蛮行は許されるものではなく、断固非難します」と訴えた。
自民、首相や閣僚の応援演説の中止を表明(午後1時ごろ)
自民党はTwitterで「どんな場合においても、このような蛮行は許されません。安倍晋三元総理の無事を強く祈っております」と投稿。
きょうの岸田文雄首相や党役員・閣僚の応援演説を取りやめると発表した。
務台俊介衆議院議員は、党選対委員長から、全国で全ての本日の選挙活動を停止するよう通達があったと投稿している。
立憲民主党の泉健太代表は「この卑劣で許されない凶行を断固非難し、安倍元総理のご無事をお祈り申し上げます」と投稿。
原口一博衆議院議員はTwitterで「党本部から残す参議院選挙期間中の街頭活動中止の要請があった」と明かした。
日本維新の会は、安倍元首相が撃たれたことを受けて「全活動を中止する」とツイート。国民民主党の玉木雄一郎代表や共産党の志位和夫委員長らも、安倍元首相の無事を祈ったり、暴力に対する抗議を示したりするメッセージを投稿した。
自民党奈良県連が記者会見を開き、副会長の堀井巌・参議院議員が、当時の状況について説明した。
安倍元首相が参院選の応援で奈良県に入るのはこれで2度目だが、前回は特にトラブルもなく、これまでに脅しのような連絡もなかったという。
報道陣から、殺人未遂の疑いで逮捕された山上徹也容疑者について「あの人だ、となるような身元の分かる人か」と問われたが「特にありません」と回答。
堀井氏は事件当時、安倍元首相のそばに立っていたといい「私が見ている範囲では(倒れた後に安倍元首相との)受け答えはなかった。民主主義を根底から脅かす暴挙であり、決して許されない」と話した。
岸田文雄首相は7月8日午後、官邸で記者団の取材に応じ「民主主義の根幹である選挙が行われている中で起きた卑劣な蛮行であり、決して許すことはできない。最大限の厳しい言葉で非難する」と時折言葉を詰まらせながら話した。
安倍元首相の容体について「今、懸命の救急措置が行われていると承知をしている。何とか一命を取り留めていただくよう心から祈りたい」と説明。
今後については「今後の政局に与える影響については今触れるべきではないと思います」と言うにとどめた。
ラーム・エマニュエル駐日米国大使はTwitterで次のようなコメントを発表した。
「私たちは、安倍晋三元首相が銃撃されたことを悲しみ、ショックを受けています。安倍さんは、日本の素晴らしいリーダーで、揺るぎないアメリカの同盟者です。アメリカ政府とアメリカの人々は、安倍さんの回復と、彼の家族、日本の人々の為に祈りを捧げます」
台湾の蔡英文総統はFacebookで「(安倍元首相は)台湾にとって最も揺るぎない真の友」などとするコメントを発表した。
安倍元首相が死去(午後5時3分)
治療を受けていた安倍晋三元首相が亡くなった。搬送された奈良県立医科大学附属病院が明かした。
病院が会見(午後6時)
安倍元首相が搬送された奈良県立医科大学附属病院は午後6時、記者会見を開いた。
福島英賢医師は冒頭で「安倍晋三氏は本日12時20分に搬送され、病院到着時に心肺停止状態、センターで蘇生処置をしたが、残念ながら5時3分にお亡くなりになった。頸部に2箇所の銃がありまして、心臓および大血管の損傷による心肺停止と考えられました」と説明した。
質疑応答では、傷について尋ねられると「場所は(首の)真ん中のところより少し右の2カ所、大きさは非常に小さい」と説明。深さは「心臓にまで到達する深さ」と語った。
「胸部の心臓大血管が損傷したために出血した」とも付け加えた。
出血がひどく、胸を開いて止血し、輸血する手術を施したという。
状況を尋ねられると、次のように説明した。
「止血がコントロールできたところもあったが、大量に出血していたのですでに血液が凝固する力を失っていて、いろんなところから出血する状態だったので、完全に止血することはできなかった。ある程度大きなところは止血できたが、残念ながら心拍は再開しなかった」
奈良県警が会見(午後9時半)
奈良県警によると、逮捕された山上容疑者は容疑を認め、「特定の団体に恨みがあり、安倍氏がこれと繋がりがあると思い込んで犯行に及んだ」という趣旨の供述をしているという。
県警は、犯行に使用された銃について、見た目や特徴から「手製の銃と判断している」と説明。容疑者宅の家宅捜査で、同様の銃用のものを複数押収したと明かした。銃弾、火薬については捜索中という。
容疑者は現場周辺に住んでおり、当日は「電車できた」と供述しているという。
事件当時、県警参事官をトップとする警護体制だった。人数や詳細は「今後の警護体制に支障をきたす恐れがある」として明かさず、万全だったかどうかを問われると「その点も踏まえて、捜査に全力を尽くしていく」と言うにとどめた。
県警は捜査本部を設置し、殺人事件として捜査している。
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