💬 YouTubeの動画のBGMに使えそうな明るげな曲
💬 ウグイスやミンミンゼミなどのリアルな鳴き声
💬 レトロゲームや『ファイナルファンタジー』を思わせる効果音やBGM ーー。
約700の音源を無料で、商用利用も含めて使い放題のサイトが6月23日にオープンしました。
その名も、『Springin’ Sound Stock』(スプリンギン サウンド ストック)。
「待ってこれ凄すぎない…?」「配信者や動画投稿者のみんな!朗報だぞ!!」「聞いてるだけで懐かしい」「レトロゲームからYouTubeまで何でも使えて神」と話題になっています。
サイトを運営するのは、福岡市のクリエイティブの企業『しくみデザイン』(@SHIKUMI_DESIGN)。
誰もが使えるフリー音源サイトが生まれたのは、「多くの人がコンテンツを作りたいと思える『しくみ』を作り、世の中をもっと楽しくしたい」という思いがきっかけだといいます。
◆戦闘音だけで150個。レトロから今風まで幅広い
まずはサイトを見てみましょう。
トップページでは、「戦闘」や「レトロゲーム」、「機械・乗り物」や「BGM」 など10個のカテゴリー検索画面がお出迎えします。
今回は「戦闘」のカテゴリー画面を見てみましょう(レビューは2022年7月3日時点のものです)。
最初の感想は、「ん…?戦闘だけで150件!?」。
しかも「素手」や「剣・刀」、「モンスター」や「魔法」など、多くのジャンルを用意。ボタンを押して再生し、気に入ったものがあればすぐにダウンロードできるという気軽さも魅力です。
実際に再生してみました。まずは6種類ある打撃から。ストレートパンチのほか、膝蹴りを思わせるものも。昔友人の家でやった格闘ゲームの記憶が蘇ってきます。
そのほかにも、魔法で相手を凍らせた時の「ピキパキッ」といった音、強烈な電撃攻撃、会心の一撃など、レトロなものから今風なRPGゲームを思わせるものまで幅広く、テンションが上がります。経験はないものの、「ゲーム作ってみたいなあ」とワクワクしました。
◆「クリエイティブを楽しんでほしい」が原点
『しくみデザイン』はサイトが生まれたきっかけについて、大切している3つの思いがあるといいます。
1つは、同社設立の原点の1つでもある、「誰もがクリエイティブを楽しめる世の中を作りたい」との思い。
音や絵、ゲームなどのクリエイティブをやってみたいけれど難しそう…と感じる人も少なくありません。そこで『しくみデザイン』は、クリエイターになる「しくみ」を提供できれば、クリエイティブをしたい人が増え、世界をもっと楽しくしていけるんじゃないかーーと考え、簡単にゲームや絵本を作れるアプリ『Springin’』(スプリンギン)をはじめ、いろんなコンテンツを作ってきました。
その形の1つとして今回、『Springin’ Sound Stock』をリリースしたのは、2つ目である「『音』を大切にしたい」という思いがありました。
グラフィック畑の出身である制作部長の中村誠さんは「グラフィックの場合、少し線が崩れたものも『味がある』『面白い』と受け入れられることがありますが、音はそうではありません。だからこそ制作できる人が少ない分野でもあり、フリー音源の需要は大きいのではと考えました。それに、音が作品にはまった時、より魅力的なコンテンツになるんですよね」と話します。
3つ目は、「時代に合わせて、もっとクリエイティブを楽しむきっかけを作りたい」という思い。
近年は自身で動画などを制作し、YouTubeやTikTokなどで発信する人も増えてきました。『しくみデザイン』は嬉しさを強く噛み締める一方で、動画などに使われるBGMはフリー音源を使う人が多く、被りが多くなってきたとも感じたといいます。無料で多くの音源を公開することで、制作者に選択肢を増やし、もっとクリエイティブを楽しんでもらいたいと思ったといいます。
◆クリエイターが楽しんでこそ
「クリエイティブの楽しさを伝えたい」。 その『しくみデザイン』が大切にしている思いは、作り手が楽しんでこそでもあるといいます。
『Springin’ Sound Stock』で公開している音は、これまで業務で制作してきたもののほか、2013年から同社でBGMなどの音源制作を担当してきた河野正樹さんと、今年3月に入社した成瀬翼さんの2人が新たに作っています。成瀬さんは、10年ほど前に人気を博し、今は音で遊べるリズムアプリとして配信中の『リズムシ』を企画製作した人でもあります。
6月23日にサイトがオープンした時に公開されていた音源は、約600個。
インターネット上では「もっと、RPGっぽいものがあったらな…」といった声もあり、2人はすぐさま音源を作成し、10日足らずで約100個を追加。「誰かにやってと言われたわけではなく、楽しみながら作りました」と笑い、河野さんは仕事での作曲が終わった後、気分転換に音源を作ることもあるといいます。
◆リアルすぎる鳴き声など、マニアック性に注目
サイトでは、各音源の「マニアック性」と「クオリティの高さ」にも注目が集まりました。
例えば「自然・動物」では、動物の鳴き声の効果音がリアルすぎるとの声も。
制作した成瀬さんは音楽大や美術大の大学院の出身で、音へのこだわりが強いといいます。
野鳥の写真ではなく鳴き声を録るために山などに散策に行くといい、前職は環境系のNPO法人の職員でした。動物の効果音は全て本物の鳴き声を録音し、ノイズを取り除いたものといいます。
また「戦闘」の「ゾンビ」の一覧には、クリーチャーボイスが43種類もあり「なんでこんなに…」と反響を呼びました。 これらは、自身で撮影した音を加工し、「それっぽく」作る楽しさがあるといいます。
◆おすすめの音源は?
河野さんは今回、BGMなどを多く制作しています。小学校の時に『ファイナルファンタジー』などのファミコンゲームにはまり、中学生の時にはゲームを作ることができるゲーム『デザエモン+』でBGMを作ることに没入。そういった経験から、音に関わる仕事に就いたといいます。
今回公開されている中で、自身が作ったおすすめの音源と、コメントをもらいました(カッコ内は、カテゴリーです)。
◯シューティング2・4(BGM)
「個人的に得意なタイプの曲で、特にクオリティ高く仕上げられたと思います。元々シューティングゲーム用に作成したものですが、明るくスタイリッシュなので、PVなどの動画などにも使いやすいと思います」
◯自然1(BGM)
「楽しくも優しい雰囲気を重視して作成しました。気疲れさせずに楽しさを感じてもらいたい動画などに使っていただけると嬉しいです」
◯【ショート】8bitBGM1~10(10秒BGM)
「音色だけでなく同時発音数も縛っているため、楽曲全体でレトロ感を感じてもらえると幸いです。短いループの違和感も少ないジャンルだと思うので、(ゲームを制作できるアプリ)『スプリンギン』以外でも使い勝手が良いと思います」
河野さんはインターネット上で話題になったことについて「すごく嬉しいです。その上で、これがゴールではないとも思っています。これからもずっと、『Springin’ Sound Stock』の素材が使われ続けてほしい。音楽を面白いと感じてもらい、『自分だったらこうしたい…』『自分も作ってみたい』思ってもらえたら」と話します。
◆「みんなが楽しい作品を作ったら…」
所属するクリエイターも含め、『しくみデザイン』全体で一貫している「クリエイティブを楽しむきっかけを作りたい」という思い。
同社の中村俊介代表は「『Springin’ Sound Stock』をきっかけに、アプリ『Springin’』(スプリンギン)をはじめ、いろんな形で、ものづくりに挑戦してくれる人が増えたら」と願いを込めます。アプリでは、直感的な操作でゲームや絵本が作れるといいます。
音源サイトに「10秒BGM」が多く用意されているのは、いずれアプリでもBGMとして使ってもらいたいという思いもあるから(近日実装予定)。
また「10秒BGM」は、近年流行しているYouTubeやTikTokでのショート動画の制作にも使いやすいといいます。
中村俊介代表は「クリエイティブをするのは敷居が高いと感じる方も多いと思うのですが、『Springin’』では知識がなくても簡単にできますし、勉強したらもっとなんでも作れるようになっていくと思います」とした上で、こう語ります。
「みんなが楽しい作品を作ったら、社会はもっと楽しくなると思うんです」
<取材・文=佐藤雄(@takeruc10)/ハフポスト日本版>