若者の“最も深刻な”性被害、現場は学校が最多ーー。
内閣府男女共同参画局は6月17日、全国の若者(16〜24歳)を対象とした性暴力被害に関する実態調査の結果を公表した。回答者のうち、4人に1人が何らかの性被害に遭っていたことが分かった。
被害別で5つに分類
調査は2022年1月、2回にわたってオンラインで実施した。対象は16〜24歳で、有効回答数は8941人(1回目:6224人、2回目:2717人)。
「性暴力」の定義を「望まない性的な言動」とした上で、性暴力被害を次の5つに分類して実態を調べた。
1)言葉による性暴力
2)性器を見せられるなど、視覚による性暴力
3)体を触られるなど、身体接触を伴う性暴力
4)性交を伴う性暴力
5)裸を撮影されるなど、情報ツールを用いた性暴力
報告書では、回答率が低いことから「母集団の特性を反映する疫学的なデータとは言えない」と注記した上で、1回目の回答者のうち、4人に1人(1644人、26.4%)が性被害に遭ったことがあると判明した。
手口別では、痴漢(7.7%)が最も多く、セクシュアルハラスメント(6.4%)、SNSを利用した性被害(5.2%)と続いた。AV出演の強要やレイプドラッグ、酔わせて性的行為を強要するなどの手口による被害もあった。
「学校・大学の関係者」は最多の36%
1回目と2回目の調査を合わせた有効回答者8941人のうち、性暴力被害を経験したと答えたのは2040人。
性自認ごとの内訳は、女性が 82.6%、男性が 12.5%、X ジェンダー・ノンバイナリーが 3.1%、その他・答えたくないが 1.8%だった。
最も深刻な/深刻だった性暴力被害では、「言葉による性暴力」が最も多く38.8%。次いで「身体接触を伴う性暴力」(28.2%)、「情報ツールを用いた性暴力」(16.3%)ーーの順だった。
「視覚による性暴力」は8.5%、「性交を伴う性暴力」は8.2%だった。
被害に遭った場所別(複数回答)では、学校(22.5%)が最も多く、次いで公共交通機関(16.8%)、 インターネット上・SNSアプリ上(11.9%)の順だった。
加害者との関係別(複数回答)では、「通っていた(いる)学校・大学の関係者(教職員、先輩、同級生、クラブ活動の指導者など)」が最多の36.0%だった。
次いで「まったく知らない人」(32.5%)、「SNSなどインターネット上で知り合った人」(14.0%)、「職場・アルバイト先の関係者(上司、同僚、部下、取 引先の相手など)」(11.0%)となっている。
被害内容と加害者との関係では、「言葉による性暴力」と「性交を伴う性暴力」において、最も多い加害者は学校・大学の関係者だった。
「視覚による性暴力」と「身体接触を伴う性暴力」はまったく知らない人、「情報ツールを用いた性暴力」はSNSなどインターネット上で知り合った人が加害者であることがそれぞれ最も多かった。
被害を受けた回答者のうち、「どこ(だれ)にも相談しなかった」は47.3%に上り、半数近くが相談につながっていない状況にあることが明らかになった。
被害による生活の変化(複数回答)は「特にない」(33.3%)が最も多かった。一方、「自分に自信がなくなった」(21.4%)、「夜、眠れなくなった」(18.9%)、「異性と会うのが怖くなった」(17.8%)、「誰のことも信じられなくなった」(16.8%)といった訴えも目立った。
6割が刑法改正を希望
性暴力のない社会にするために必要な取り組み(複数回答)として、「性犯罪・性暴力に関する刑法を改正して、加害者を罪に問えるようにしたり、罪を重くする」(59.2%)が最も多かった。
相談しやすくするための取り組みとしては、24時間・365日相談できるようにしたり、SNSなど多様な相談方法を用意したりすることを求める回答が多かった。
性犯罪に関する刑法改正をめぐっては、法務省の法制審議会で議論が進んでいる。「暴行・脅迫要件の見直し」「性交同意年齢の引き上げ」「地位・関係性に乗じた性暴力」といった諮問項目である10の論点について、改正する条文の文言などの審議が続いている。