7月10日投開票の参議院議員選挙。若者の政治参加が進まず、未来へ希望が持ちにくいと言われるなか、各政党はどのようなビジョンを示すのか。
U30世代に向けてSNSなどでわかりやすくニュースや社会問題を伝えている「NO YOUTH NO JAPAN」代表で、ハフポスト日本版のU30社外編集委員を務める能條桃子さんが各政党にインタビューを実施。政治への疑問や社会に対する不安をぶつけた。
第6回はれいわ新選組。党政策審議会長の大石晃子・衆議院議員(45)が取材に応じた。
*ハフポスト日本版は6月20日、政治家とU30が同じ目線でリアルに対話するイベントを開催します。アンケートへのご協力をお願いします。
「自分」のために戦うことが、「みんな」を守ることになる
能條桃子さん(以下、能條):
まず、れいわ新選組はどういう社会を次世代に残したいと思っていますか?
大石晃子・政策審議会長(以下、大石):
私たちには「決意文」というのがあって、「この国を守るとは、あなたを守ることから始まる」というところから始まるんですね。「この国を守る」とはよく言われてるけど、「あなたを守る」ということができていなくて衰退してるよねって。
れいわ新選組は当事者の党なので、重度障害の車椅子の議員もいる。まずは「自分」が豊かに生きるために戦う、それが「みんな」を守ることになる、ということです。
能條:
具体的に、この国に生きる人々は今、どういう状況にあると思っていますか?私の周りは、それぞれ大変な状況にある人もいますが、「しょうがない」という風に思っている人も多いのかなと思うんですけど。
大石:
私自身、大阪府庁で公務員をしていたころしんどかったです。子どもを産むのもすごく気をつかった。でも、おかしくないですか?産みたいけど遠慮しちゃう社会自体、どこかに歪みがありますよね。その辺は若い人はどう受け止めているのかな。
能條:
人によると思いますが、やっぱり「産みたいと思えないような状況」もあるのかな。子どもを「産みたい」「育てたい」と思える社会にするには、何が必要でしょうか?
大石:
大人が時間にもお金にも余裕がない。子育てにお金がかかるっていうか、一回脱落したら転げ落ちるような社会じゃないですか。それって、産む時のハードルにもなりますよね。漠然と「子どもを産んだら自分の人生どうなっちゃうんだろう」って。
能條:
そういう状況を変えるために、具体的にどんな政策があるか教えてください。
大石:
基本的には「誰もが時間とお金に余裕を持ってみよう」と。若い人たちは「この状況が当たり前」と思っているかもしれませんが、「生活が苦しい」と思っている人はたくさんいます。何が必要か。れいわ新選組は、「消費税廃止」と一人ひとりへの一律給付金みたいな全員の所得が上がることをやろうと言っています。
能條:
他の政党は「給料を上げる」と言います。なぜ「所得」なんですか?
大石:
消費税を廃止したら、みんなが物を買いやすくなる。需要が増せば物が売れる。そういう中でお給料も上がります。
ただ、お給料の上がり方はそれだけじゃない。労働者がちゃんと戦わなきゃお給料なんか上がらないんですよ。「お給料を上げなさい」は、資本主義の中では難しいから、それを言っている政党は私は「ウソつき」だと思いますね。
『国債は次世代へのツケ』はウソ。若い人は返さなくていい。
能條:
財源はどうでしょうか?れいわは「国債の発行」を言っていますが、「次世代へのツケ」という点ではどうですか?
大石:
そういうことを言うてる人たちこそ、私はじじい世代だと思ってますよ。
「(国債のツケは)若い人が将来返さないといけない」っていうのはウソ。日本は戦後もずっと国債を発行し続けていますが、その当時の若い人たちは返してないですからね。
国には通貨発行権があるから、その時必要なお金を社会に回すために国債を発行しています。これまでもそうだったし、これからも必要な分は国債発行して、若い人が返さなければいい。
能條:
ただ財政規律もあります。他の政党は「賃金を上げれば成長する。だから返せます」という言い方をしますが、そういう思考ではないということですか?
大石:
そういう論理は理解するし否定はしないけれど、うまく言えない違和感があるんですよね。「この社会を成長させる」というより、「『あなたの生活を成長させる』という社会に変えましょう。それをやったら、結果として社会が成長しています」っていう価値転換をしたいんです。
「ちょっと待て、誰にやられてる?」
能條:
「民主主義」をどう捉えているのでしょうか?
私は、民主主義って、自分たちが納めた税金の再分配のルールだったり「私たちの社会のことを私たちが決めること」だと思っていたんです。いくらでも国債を発行できるとなると、「じゃあ、全部にもっとあげよう」って話になりませんか?
大石:
私の言葉で言い換えれば、民主主義というのは実体経済。その社会にどんな生産力があるのか、誰がうまく働けて誰がうまく働けないのか、そういう「資源」をみんなでどう分けるか、というのは民主主義の大きな要素だと思います。
むちゃくちゃ面倒くて泥臭いもんだとは思うんですよ。「ルールを作りましょう」っていうイメージより、「今現実の社会で困ってる人がいるんだから、何とかしようや」というような人の血の通った、そういうものが民主主義かなって思います。
能條:
わかりました、ありがとうございます。
ここまで内政の話を聞いてきましたが、外政という点で目指す国家像はありますか?ウクライナ危機もあって外政に対する関心も広がっています。
大石:
「自分たちのものは自分たちで作る」「自国民を飢えさせない生産体制を守る」ということ。
今の政府はウクライナのことを言いながら、憲法や緊急事態条項など違うことを考えてるんですよ。そういう火事場泥棒のような進め方をしようとしているリスクの方が高い。「ちょっと待て、誰にやられてる?政府でしょ」「戦争より自分たちの生活を振り返ってみいひんか?」と思うんです。
参院の被選挙権年齢「30歳」は妥当?
能條:
「政治の中の多様性」についても教えてください。例えば参院選の被選挙権年齢は30歳ですが、このあたりはどう考えていますか?
大石:
若い人にも聞いてみたいけど、30歳はちょっと高い気がするよね。でも、じゃあ18歳からでいいのかなというと、ちょっとよく分からない。子どもはまずそうな気もするけど、くそジジイの議員もいっぱいいますので…。どう思います?
能條:
私は成人年齢も18歳ですし、選挙権が18歳なら被選挙権も18歳でいいのかな、と。ちなみに「女性議員が少ない」という問題についてはどうですか?
大石:
そりゃ、少ななるわって思うんですよ。「死んでも来い」みたいな異常な縛りがあって子どもの卒業式に行けなかったり、私のように地方出身だと単身赴任になる訳ですが、その時点でかなり厳しい。
特に、れいわみたいな「噛みついてなんぼ」みたいな政党だとハードルが高くて。立候補しようという女性がいても、いろいろ考えてるうちに周りから「やめとけ」って言われるみたいですね。
能條:
もう一つ伺いたかったことがあって…。2019年の参院選では、れいわの政策って「脱原発のためなら石炭火力を使う」というイメージが強かったんです。今回は「グリーン・ニューディール」を言っていて、石炭火力の全廃へと大転換した印象があります。
大石:
「とにかく原発は許さん」っていう頑固親父がちょっと丸くなった感じですね。
れいわ新選組って政治闘争をむちゃくちゃ真面目にやる党なんですよ。で、今の政治の主戦場って何かっていうとケンカ。上の方々が仕掛けてるケンカの本質は「原発再稼働」なんですね。これを食い止めないと、という危機意識があります。
能條:
そこまで「原発は絶対にダメ」という主張のコアは何なんでしょう?
大石:
原発は決してクリーンではない、矛盾だらけなんですよね。放射性物質という、人類が制御できないものを持っていて、「戦争が」「平和が」と言うてるけど、そんなもん原発バーンやられたら終了でしょ?
能條:
ちなみに、気候変動はどう捉えてるんですか?
大石:
資本主義がもたらした矛盾だと私は思ってますよ。党内でそういう議論してるかっていうとまだかもしれないけれど…。
れいわが「権力側」になったら、戦う相手は…?
能條:
信頼できる政府って、政権交代したら作れると思いますか?
大石:
イエスなんですけどね。でも、今の国会の中で信頼できる政党ってあんまりない。「信頼できる議員」というのをカウントするとごく少数になっちゃうんですね。「じゃあ、その人たちで政府作れるんですか?」と言われると、今の実力じゃちょっと難しいなって思う。
でも、国会の外の、能條さんもですけど、今に危機感を持って前向きに変えていこうという方はいっぱいいる。国会は社会の多数派ではないから、変えていけるとは思うんですよ。
能條:
なるほど。今は「対権力」だと思うんですけど、自分たちが権力側になったらどうなるのか気になりました。
大石:
たしかに。でも、その時こそ、人類として気候変動と戦えるんじゃないかな。人間同士の上下争いを早く終わらせて、「人類全体の課題と戦う」ってどうですか?みんなで戦うって私、大事だと思うんですよ。
能條:
とりあえず戦うことはなくならないんですね(笑)。最後に、どんな若い人にれいわ新選組に投票してほしいですか?
大石:
そりゃ、もう誰でも。むしろ「若い人に興味持ってもらうにはどうしたらいいんだろう」って感じですね。
能條:
今、若い人たちの中でも熱狂的に支持してる人たちも周りにいらっしゃると思うんです。
大石:
積極財政に共感してくれる方は多いですね。あとは、山本太郎の生き様かな。「自分のためにやってくれてる」感がすごい。小さくて権威もなくて変な政党だけど、常に「魅力ある政策だな」と思っていただけるように磨いていきます。
【執筆:中村かさね、写真:坪池順】