映画『ピッチ・パーフェクト』などで知られるオーストラリア出身の俳優レベル・ウィルソンさんが、同性パートナーとの交際を公表したことをめぐり、本人の意思ではなく新聞社からの「アウティング」を恐れてのカミングアウトだった可能性が浮上し、波紋が広がっている。
ウィルソンさんは現地時間の6月9日、ファッションデザイナーのラモナ ・アグルマさんとのツーショット写真をインスタで公開し、2人が交際中であることを明かしていた。
投稿で、「私はディズニーの王子様を探していると思っていました…でも私がずっと必要としていたのは、ディズニープリンセスだったのかもしれません」とつづっていた。
肩を寄せ合い、仲睦まじく写る2人の写真は大きな反響を呼び、祝福のコメントも多数寄せられていた。
「カミングアウトの強要」批判相次ぐ
だが、背景には別のストーリーがあった。
投稿の翌日、オーストラリアの新聞社シドニー・モーニング・ヘラルドは、ウィルソンさんがアグルマさんとの関係を公表する前から2人の交際を把握していたとする記事を公開。
記事を執筆した記者でコラムニストのアンドリュー・ホーネリー氏は掲載前、ウィルソンさんに1.5日以内に交際関係に関してコメントするよう代理人を通じて伝えていたという。
記事の中で「完璧な世界では、同性の著名人同士の関係を“暴露”することは2022年には余計な概念になるはずです」「愛は愛、そうでしょう?」などとと主張していた。さらに、取材にコメントしないままウィルソンさんが交際に関してインスタで公表したことを非難した。
ホーネリー氏の記事に対し、ネット上で「カミングアウトの強要だ」「カムアウトするよう圧力をかけることは認められない」などと批判が広がった。
「非常に困難な状況だった」
オーストラリアのジャーナリスト、ケイト・ドーク氏はツイッターで、「どうやらカムアウトはレベル・ウィルソンの選択ではなかったようです...。ヘラルド紙は、彼女に対し“暴露”を2日前に予告していたと認めています」と指摘した。
このツイートに対し、ウィルソンさんは自ら「コメントしてくれてありがとう」と返信。リプライで「非常に困難な状況でしたが、品位を持って対処しようとしました」と心境を明かした。
一連の騒動をめぐり、ヘラルド紙の編集者ビーバン・シールズ氏はアウティングの意図はなかったと否定。
「ウィルソンの新しいパートナーが男性であったとしても、同じ質問をしていました」「私たちは単に質問をし、標準的な慣行として回答期限を設けたのです」との見解を示した。
「手順を誤った」と謝罪、コラムを削除
しかし同紙やホーネリー氏に対する批判は収まらなかった。
ホーネリー氏は13日、「(ウィルソンさんへの)アプローチの手順を誤った」と認めて謝罪。物議を醸した元の記事は削除された。
ウィルソンさんに辛い思いをさせたことを心から後悔しているとした上で、「決して意図したものではありませんでした」と釈明。「しかし彼女は驚くほどの品位を持って対処してくれたと感じています」とつづった。
ホーネリー氏は彼自身が同性愛者であると言及。その上で、「差別がどれほど相手を深く傷つけるかをよく知っています。私が最もしたくないのは、その痛みを他の誰かに与えることです」などと詫びた。