「私、メンタル強いから」はもうやめよう。メンタルには強いも弱いもない。あるのは個人の中でのグラデーション

「メンタルヘルスとSDGs」をテーマに掲げた5月のハフライブ。ゲストで臨床心理士・公認心理師のみたらし加奈さんはこう語り、心理教育の大切さについて説きました。
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5月26日配信された、ハフポスト日本版の生配信番組「ハフライブ」。臨床心理士・公認心理士のみたらし加奈さん、サイボウズ株式会社で健康推進に取り組む「すこやかチーム」の佐藤友莉果さんをゲストに迎え、「メンタルヘルスとSDGs」について語り合いました。   

「心理教育」が無理解や偏見を取り除く鍵に

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Yuki Takada/ハフポスト日本版

メンタルヘルスとは「心の健康」のこと。かつては個人の問題と捉えられがちでしたが、SDGsにも明記されるなど、近年は企業や社会全体で取り組むべき課題との認識が広がりつつあります。

しかし、現実にはメンタル不調を抱えても適切な対処がとれず、悪化させてしまう人も少なくありません。番組では、メンタルヘルスを取り巻く課題として次の3つを挙げました。

・正しい知識の不足

・社会や個人の中にある偏見

・社会や企業の制度や仕組み

これらの解決を目指し、SNSを通した発信を続けてきた臨床心理士・公認心理士のみたらし加奈さん。活動を続ける中で感じたのが、心理教育の大切さでした。

みたらしさんは「心理教育とは、精神疾患などの偏見や差別に晒されやすい疾患を抱える患者や家族に、専門家が『どんな病気なのか』『どんな治療方法があるのか』といった正しい知識を伝えること。メンタルヘルスに関する知識不足を補い、偏見をなくすためにも、心理教育の重要性を社会にもっと広く知らしめる必要があると思います」と語りました。 

メンタルヘルスに不調をきたしたときは、どこを受診すればいい?

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Yuki Takada/ハフポスト日本版

メンタルヘルスについての知識が不足していると、不調を感じても専門機関の受診を躊躇してしまうことがあります。読者アンケートでも「どういう状況のときに、どこに行けばいいのかわからない」との声が寄せられました。

なかでも、多くの人が迷うのが「精神科と心療内科のどちらを受診すべきか」ではないでしょうか。みたらしさんは、精神科と心療内科の違い、また、臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングの役割についてこう説明します。

「精神科では主に精神疾患を治療しますが、心療内科では精神症状に伴う身体症状を主に治療します。先に体の医師に診てもらって、心因性と言われた場合に心療内科で診てもらうこともあります。

ただ、精神科へのスティグマ(偏見)の強さから、近年はあえて『心療内科』『メンタルクリニック』と標榜する精神科もあります。『精神科には行きづらいな……』と感じるときは、ひとまず心療内科に行き、そこで医師に、精神科と心療内科のどちらで診てもらうべきかを判断してもらうのもいいですね。まずは、ご自身が行きやすい方に行ってみましょう。

診断や薬の処方といった『治療』を受けられる精神科や心療内科に対して、臨床心理士や公認心理師によるカウンセリングでは、気になる症状がなくても心の悩みについて相談できます。人間関係の悩みや将来への不安など、基本的にはどんなことを相談しても構いません」

また「一番つらいときに病院やカウンセリングルームを探すのは大変です。ある程度心の余裕があるときに、どこが良さそうか目星をつけておきましょう」と呼びかけました。

企業ができるメンタルヘルスケア

サイボウズ株式会社で健康推進に取り組む「すこやかチーム」の佐藤友莉果さんをゲストに迎えた後半は、「メンタルヘルスケア、社会や企業ができること」をテーマにトークを展開。「メンタルヘルスの問題を放置すると莫大な経済損失を生むリスクがある」としたうえで、コロナ禍以降、ますます重要性が増し、サイボウズが注力しているというメンタルヘルスケアの事例を挙げながら、企業が従業員のメンタルヘルスと向き合うことの意義について話し合いました。

サイボウズの「すこやかチーム」では、セルフケアやマネジャーによるラインケアを促す、社内外の相談窓口へ繋ぐなどの多面的な方法で、従業員のメンタルヘルスをケアしているとのこと。

佐藤さんは「サイボウズでは、すこやかチームに直接相談できる窓口と、社外のクローズな窓口という2つの相談先を用意しています。すこやかチームには『社内の事情をわかっている』というメリットがありますが、人によっては人事にメンタル不調を知られたくないなどの事情があることも。相談先のチャネルを複数設けることが大切だと感じています」と、サイボウズの工夫についてシェアしてくれました。

 

心身の健康を叶える鍵は「頼れる先をたくさん見つけること」

番組の終盤には、ゲストのおふたりがそれぞれ思う「ウェルビーイング(身体的・精神的・社会的に健康であること)実現の鍵」について発表しました。

「私は『依存先をたくさん見つけること』だと思っています。専門家だけでなく、自分を支えてくれるサポーターを見つけること。『依存する』とは違うニュアンスですが、例えば毎朝挨拶するコンビニの店員さんなど、『この人と話すと少し元気がもらえる』みたいな相手がたくさんいるといいですね」とみたらしさん。

佐藤さんも、サイボウズ代表取締役・青野さんの「自立とは頼れる先を増やすこと」という発言に触れながら、メンタル不調や悩みをひとりで抱え込まないことの大切さを改めて強調していました。  

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Yuki Takada/ハフポスト日本版

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