ニュース番組なのに、マスクで顔を覆いながら原稿を読み上げたり、インタビューしたりする男性キャスター。
日本のニュース番組とは全く異なる風景。彼らは決して新型コロナウイルスの感染対策のためにスタジオでマスクを着用しているのではない。
これはSNS上で「#FreeHerFace」とのハッシュタグとともに知れ渡り始めた、れっきとした抗議活動だ。
抗議活動が巻き起こっているのは、イスラム主義組織タリバンが支配するアフガニスタン。
テレビ局の全ての女性キャスターは、顔を隠して番組に出演するようにーー。
英ガーディアン紙によると、2021年にタリバンによる支配が始まって以降、とある女性キャスターはお気に入りのカラフルな服ではなく、ロングドレスを着てテレビ番組に出演することを余儀なくされていた。女性キャスターは今回の更なる制限に失望し、ショックを受けているという。
こうした中、アフガニスタンでニュース番組を24時間放送しているTOLO newsの男性キャスターらは、顔を隠して出演することを命じられた女性キャスターとの連帯を表明するため、自らもマスクを着用して番組に出るようになった。
同時に同番組は、SNS上で使うハッシュタグ「#FreeHerFace」を生み出し、拡散し始めた。こうした取り組みには同番組の男性キャスターだけでなく、世界中の影響力あるジャーナリストも追随しているという。
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は「(アフガニスタンの)女性ジャーナリストは、女性の権利を脅かす世界で最も深刻な危機の中での最新の犠牲者に過ぎない」と強調する。
タリバンは女性キャスターへの命令を出すわずか数週間前、「女性は必要なときだけ家を出るべき」との考えのもと、全ての女性が公共の場で頭から爪先までを覆い、目だけが見える服を着るように命じるなど、締め付けを強化していた。
HRWは「だが、タリバンは不動ではなく、協調的な圧力は彼らの決断に影響を与える可能性を持っている」と指摘。「外国政府はもっと懸念を表明すべきだ。タリバンと会談する外交官は、#FreeHerFaceキャンペーンへの支持を示し、タリバンによる女性や女子への権利侵害の激化について公の場で発言する必要がある」と訴えている。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉