「私はバンクシーではありません!」
イギリスを拠点に活動する覆面アーティストのバンクシーだと疑われ、ウェールズ南西部の町ペンブローク・ドックの議員ウィリアム・ガノンさんが辞職に追い込まれた。5月末、現地の複数のメディアが報じている。
何が起こった? 「ライバル候補者に広められた」と主張
ガノンさんは5月23日にFacebookを更新。これまで何度もバンクシーであるという疑惑をかけられ、多くの人にそれが真実だと受け止められてきたという。ガノンさんは「この疑惑は、議員として、評議会の仕事を適切の行う人間としての自分の能力を損わせています。この疑惑がペンブローク・ドック町議会の評判を落とすことは望みません」とし、辞任を発表した。
ガノンさんは、もともと地元に密着して芸術活動を行うコミュニティアーティストでもあった。 子どもの遊び場や病院の壁などの建物の外壁にアートを描いているために「イギリスのストリートアーティスト」として、バンクシーと比較された可能性があると考えている。
ガノンさんは5月に議員に選出されたばかり。1月頃からバンクシーではないかという疑惑が広まり、当選後にさらに激化したという。ガノンさんは、「選挙でライバルだった候補者によって広められた」と主張しているとテレグラフは報じている。
BBCによると、これまでにペンブローク・ドックにバンクシーの作品が現れたことはない。もっとも近い場所では、約70マイル(約112km)離れたウェールズ南部のポート・タルボットの車庫に2018年、作品が描かれたことがある。
「否定すればするほど、より多くの人々が信じる」
ガーディアンの取材に対し、ガノンさんは、「バンクシーである」と疑惑を流されることの戸惑いと、精神的な負担を訴えている。
「問題は、『私はバンクシーではない』と言うと、『バンクシーはそう言うだろう』と思われることです。否定すればするほど、より多くの人々が信じるのです」
「私が求められているのは、私が『誰であるか』と証明することではありません。『誰ではない』と証明することが求められているのです。どうやってそれを証明したらいいのでしょうか」
ガノンさんは、バンクシーだという噂を広められ迷惑を被っているのは事実だが、同時にもともとバンクシーを敬愛する気持ちも抱いていたと明かしている。
「バンクシーがパレスチナ問題に踏み込んだだけでも、私の心の中で特別な存在になりました」
また、バンクシーの作品が誰の目でも見られる場所に描かれることも賞賛し、バンクシーのアートは「すべての人のためのものだ」ともコメントしている。
アーティストであるガノンさんは、町の人々の混乱を避けるために「I Am Not Banksy!(私はバンクシーではない)」バッジを作成し、それを日常的につけている。公式サイトによると、バッジは無料でガノンさんが配布しているといい、「バンクシー以外の人は誰でも利用できる」としている。