フランスで開催されている「カンヌ映画祭」のレッドカーペットで現地時間5月22日、フェミニスト団体「Les Colleuses」による抗議活動が行われた。
黒い衣装に身を包んだ女性たちは、フランスで家庭内暴力(DV)の結果亡くなった女性129人の名前が記された横断幕を大きく掲げた。片手を突き上げ、中には発煙筒とみられるものを持つ人もいた。
129人の犠牲者。フェミサイドに抗議
抗議活動はカンヌ映画祭のメイン会場であるパレ・デ・フェスティバルで行われた。
アメリカの映画メディアVarietyやDEADLINEによると、同団体は、名前が記された129人は「前年のカンヌ映画祭から今回までの間に、フランスでフェミサイドによって亡くなった女性の数」だと説明しているという。
フェミサイドとは「女性であること」を理由にした殺人。世界保健機関(WHO)は2012年に発表した報告書で、「フェミサイドは通常は男性による犯行で、しばしば女性の家族が関与する」とし、多くの場合は「パートナーや元パートナーによる犯行」だと解説している。
フランスでは近年、家庭内暴力が深刻化し、フェミサイドに対する大規模な抗議デモに発展している。
DEADLINEによると、この抗議活動は、同映画祭で特別上映された、フェミサイドや路上で起こる性的嫌がらせや性的暴行の問題に関するドキュメンタリー映画『Riposte féministe(原題)』と関連づけて行われたものとみられている。
抗議活動は、イランで実際に発生した、女性を標的にした殺人事件を追った女性ジャーナリストをモデルにした映画『Holy Spider』の上映前に行われた。
レッドカーペットは黒い煙で覆われたが、警備は介入しなかったといい、事前に主催側に知らされていた抗議活動だったと考えられている。Getty Imagesが配信した写真では、フランスの写真家で映画監督のレイモン・ドゥパルドン氏がカメラで抗議の様子を撮影する姿も収められている。
「Stop raping us」ウクライナでの性暴力に抗議する女性も
カンヌ映画祭では20日にも、ロシアによる軍事侵攻が続くウクライナでの性暴力に抗議する意図があったとみられる女性がレットカーペットに乱入する一幕があった。
上着を脱ぎ捨て、トップレス姿になった女性は、胸元から腹部にかけて、青と黄の2色のペイントでウクライナ国旗を表現し、その上から「Stop raping us(私たちをレイプするな)」と抗議のメッセージをつづっていた。