自傷行為の手当の方法や相談先を集約したリーフレットを医師らが無料公開

「『自傷なんてやめて』と子どもを否定するのではなく、自傷してしまうほどの苦しい背景が子どもにあることに気がついてほしい」。リーフレット「しんどいって言えない」が無料公開されています。
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リーフレット「しんどいって言えない」より一部抜粋
不登校新聞

2020年4月以降、アンケートを通じて、小中高生の声を聞き続けてきた国立成育医療研究センター。2021年12月に実施したアンケートでは、小学生の7人に1人、高校生の4人に1人が自傷行為をしているという結果が出ました。

同センターは「子どもたちに自分を責めなくてよいと伝えたい」という思いから作成したリーフレットを、WEB上で無料公開しています。リーフレット作成に携わった医師らにお話をうかがいました。

国立成育医療研究センター「コロナ×こども本部」は3月23日、「コロナ×こどもアンケート」の第7回調査の結果を公表した。アンケート結果によると、小学生の7人に1人、高校生の4人に1人が自傷行為をしていることが明らかになった。

本アンケートは昨年12月、子ども487名、保護者3282名を対象に実施された。

「実際に、自分のからだを傷つけたこと(かみの毛を抜く、自分をたたくなど)がある」という質問に対して、「1週間のうち数日ある」、「1週間のうち半分以上ある」、「ほとんど毎日ある」と回答した子どもが小学4年~6年生で14%、中学生で12%、高校生で25%となった。

結果をうけ「コロナ×こども本部」は若者の自傷にくわしい精神科医・松本俊彦さん監修のもと、4月6日、リーフレット「しんどいって言えない―ひとりで自分を傷つけ癒しているあなたへ―」を発表した。

リーフレットには、自分を傷つけてしまったあとにできる手当のしかたや、傷つけたくなったらどうするか、気持ちがマシなときにはどうするかなど、子どもがすぐに実践できる具体的な対応方法のほか、相談先のリストが掲載されている。  

否定せずに寄り添って

「子どもたちに、自分を責めなくていいよと伝えたい」。

同センターの半谷まゆみさんはリーフレット作成に込めた思いをこう語る。

また、周囲の大人には、「『自傷なんてやめて』と子どもを否定するのではなく、自傷してしまうほどの苦しい背景が子どもにあることに気がついてほしい」と訴える。

さらに、子どもの気持ちに寄り添う際には「子どもたちは自傷という行為によって苦しみに対処しているのだ、という前提に立つこと」が重要だと語る。

「コロナ×こども本部」ではコロナ禍が始まった2020年4月以降、小学生から高校生までの子どもに対するアンケートをこれまでに7回行なってきた。アンケートを通して、子どもの気持ちに寄り添いながら子どもの声を社会に届ける活動を続けている。

同センターの山口有紗さんは「子どもたちにとって、自分たちの声を聞いてくれる人がいる、自分たちの声には意味があるんだと思えることが何より大切。大人が子どもたちの声を日常的に聞いて、尊重していく。それがあたりまえになる社会を目指しています」と語る。

リーフレット「しんどいって言えない―ひとりで自分を傷つけ癒しているあなたへ―」は「コロナ×こども本部」HPから無料で閲覧・ダウンロード可能。(編集局・茂手木涼岳)

(この記事は2022年05月11日の不登校新聞掲載記事「『自傷行為の手当の方法や相談先を集約したリーフレットを医師らが無料公開』」より転載しました)