5月は下痢や便秘、腹痛などお腹のトラブルに悩まされる人が少なくないといいます。生活環境の変化や連休中の疲れ、五月病、寒暖差や気圧変動などと関連があるようです。
草間かほるクリニック(東京・麻布十番)の草間香院長に、今日からできる対策を教えていただきます。
ストレスが腸の健康を脅かす
今の時期にお腹の調子が悪くなる要因はさまざまだといいます。
「五月病の症状として下痢や便秘、腹痛などがあらわれることもありますし、天気による寒暖差や気圧変動が大きいのも腸機能に変調をきたすもととなります。ただ、不調のある多くの方に共通しているのがストレスです。
新入生や新入社員、異動など4月から環境を新たにした人は多いでしょう。連休明けから本格的な活動に入り、ストレスがかかる時期です。これまで張り詰めていた緊張の糸が切れ、心身の不調として現れてしまうのです。
腸はとてもデリケートな臓器で、ストレスに敏感です。腸の蠕動(ぜんどう)運動は自律神経にコントロールされています。ところがストレスで交感神経が過剰に活発になるなど、自律神経のバランスが崩れると腸の動きがおかしくなります。ストレスが脳から自律神経を介して腸に悪影響を与えるのです」(草間先生)
たかがお腹の調子のことだからと我慢してしまうのはよくありません。
「脳と腸の関係は、腸がストレスの影響を受けるだけではありません。腸の調子が悪いと集中力が低下するなど、脳と腸はお互いに影響を与えあう『脳腸相関』があるのです。腸の調子が悪ければ、免疫力も低下して、食あたりになりやすくなったりします」(草間先生)
5月のお腹対策
お腹の調子を整えるため、まずは休養と生活の改善です。
「ストレスに負けないためには、十分な休息をとる必要があります。軽い運動や趣味の活動などで気分転換をはかるのもいいでしょう。ただし、ストレス解消をお酒に頼るのはやめましょう。アルコールは胃腸の粘膜への刺激となり、分解するために肝臓へ負担となります。
生活のリズムを整えることも重要です。朝、決まった時間に起きて夜は睡眠時間を確保すること、規則正しく食事をとるなどです。人間の体内時計は自律神経と関係しているので、生活のリズムを整えることが有効なのです」(草間先生)
体を冷やさないことも大切だといいます。
「今の時期は寒暖差がある上に、冬の寒さや夏の冷房に比べ、服装など油断してしまいがちです。冷たい飲食物を摂る機会も増えますが、冷えで血行が悪くなり腸の働きもにぶります」(草間先生)
ストレス解消につながる食材は?
栄養成分のバランスが崩れたり、不足から、ストレスにつながることもあるようです。
「ストレスに強くなる体作りも重要です。特に意識して摂りたい栄養成分は、『抗ストレスビタミン』とも呼ばれるビタミンC、自律神経を安定させる効果が期待できるビタミンB群、精神の安定に欠かせないセロトニンの原料になる必須アミノ酸のトリプトファンです。
ビタミンCはブロッコリーやキウイ、パプリカなど、ビタミンB群は豚肉、うなぎ、枝豆など、トリプトファンは大豆製品などに多く含まれますので、こうした食材を積極的に摂るようにしましょう。
一方で、お腹に不調があるときは、カフェインやアルコール、香辛料、脂っこい食事などは控えましょう。食の楽しみを豊かにするものなので、元気なときは問題ないのですが、お腹の調子が悪いときは別です。ストレスがあるときほど、こうした刺激を求める傾向の人も多いので、注意してください」(草間先生)
まずは1つ1つ心がけてみるといいでしょう。
「なかなか改善しないようなら、過敏性腸症候群やほかの病気の可能性も考えられます。あまり我慢しないで、消化器科を受診しましょう」(草間先生)
今年は梅雨の期間が短めで、猛暑になるとの予報があります。充実した日々を過ごすためにも、体を整えていきたいものです。
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