子どもに楽しみながら幅広い知識を持ってもらおうと、小学生らの間で高い人気を誇る「うんこドリル」(文響社)と国の省庁や自治体のコラボによる教材開発が広がっている。4月には新たに国土交通省や林野庁から、うんこドリルの冊子やゲームアプリなどが発表された。
ネット上では「これなら子どもも読んでくれそう」「(子どもへの)最初の導入は大事。使いたい」と歓迎する声が上がっている。
「あっ!うんこが川に・・・」
うんこドリルは2017年に小学生向けの漢字ドリルとして発売された教材。漢字の穴埋め問題の例文に「うんこ」を用いるなどのユーモアが小学生から絶大な支持を受け、2022年4月までにシリーズの発行部数が累計950万部を超える大ヒットとなった。
近年は漢字以外の分野も展開し、省庁や自治体とのコラボにも力を入れている。
冊子では、ドリルのキャラ「うんこ先生」が「川の事故にあわないよう てきせつにこうどうじゃ!」と呼びかける。「うんこねこ」「うんこいぬ」といったキャラとともに川に遊びに行った設定で、5つの問題が出題される。
Q. 川には近づくとあぶないときがある。それはどんなとき?
「うんこがいっぱい出たとき」か「川の水がふえているとき」の2択。ページをめくると「川の水がふえているときは川に近づいてはいかん!」と解答が示される。
「雨がふっている日やそれから何日間かは、川の水がふえることがあるのじゃ。危ないから川に近づいてはいけないぞい!」とうんこ先生が解説してくれる。
Q. 川にものを落としたときはどうする?
「あっ!うんこが川に落ちちゃった!このままじゃ流れていっちゃう!」
慌てるうんこいぬ。「どうする?」との問いに対し、選択肢は「うんこ目がけて、ジャ〜ンプ」か「あきらめる」。解説はこうだ。
「川には流れがはやいところや深いところがある。きけんな目にあわないために、どんなに気に入っているものでも、むりに取りに行かずにあきらめる勇気が大切じゃ!」
ゲームアプリでも同様の問題がランダムで10問出る。
国交省河川環境課の担当者は「川での水難事故は、暖かくなる4月やゴールデンウィークあたりから増え始め、夏休みでピークを迎えます。川で遊ぶ前には、このドリルで楽しく対策してください」と話す。
学校でも活用してもらうため、4月に文部科学省から各都道府県教育委員会などに向けて発出した水難事故の防止を呼びかける通知で、ドリルについても周知したという。
7省庁と連携、自治体とも
うんこドリルはこれまでに財務省、法務省、海上保安庁などの7省庁と連携して教材を作成してきた。
ドリルを手がける文響社(東京都港区)によると、最も反響が大きかったのは金融庁とのコラボ。お金の流れなどについて学べる子ども向けの教材を作っただけでなく、新成人向けのクイズも動画で配信している。
たとえば「ヤミ金で借りた借金」と「全然流れないうんこ」の共通点を問う問題。正解は「どちらも雪だるま式に増える」。
うんこ先生は「成人したら未成年を理由に契約の取り消しはできなくなるぞい」と言い、「ヤミ金融業者からは絶対にお金を借りない!違法な高金利やひどい取り立てで生活が破綻することもある」と助言した。
自治体との連携も広がる。
東京都足立区とはSDGs(持続可能な開発目標)について学べる冊子を作成。ウミガメが具合が悪くてご飯を食べられない理由を「ごみを食べてしまった」か「うんこが止まらなくなった」かの2択で問い、解説も用意している。
毎年、厳しい暑さになることで知られる埼玉県熊谷市とのコラボでは、汗をかいているうんこ先生とともに熱中症対策を学べるドリルを作った。
文響社の担当者は「子どもが笑い声を上げながら楽しそうにうんこドリルを読んでくれたという感想が多く届いています。子どもが幅広い分野を学ぶきっかけになったらうれしいです」と話している。
〈取材・文=金春喜 @chu_ni_kim / ハフポスト日本版〉