「上総介」の死去に広がった衝撃。『鎌倉殿の13人』の“本当の始まり”とは? 脚本の三谷幸喜さんが明かしていた【大河ドラマ】

頼朝の謀りごとで命を落とす上総介にネットも衝撃。脚本担当の三谷幸喜さんが語っていた“大河ドラマ”への思い。「史実無視とか荒唐無稽とか言われまくり」。でも...
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脚本家の三谷幸喜さん(2017年撮影)
時事通信社

放送中のNHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』。SNSでは毎週のように話題になるが、17日放送の第15回「足固めの儀式」では佐藤浩市さん演じる上総広常が無念の死を遂げる展開に多くの反響が寄せられた。

多くの視聴者に衝撃を与え、今後の展開に注目が集まるが、本作の脚本を担当する三谷幸喜さんは「(物語が)本当に始まるのは頼朝が死んでから。頼朝が生きている時代はプロローグに過ぎない」と語っている。

衝撃的だった上総広常の死。最後の笑顔の意味

佐藤さん演じる上総広常(通称:上総介)は、大泉洋さん演じる源頼朝の元で有力な御家人の一人として活躍を見せていたが、第15回の放送では自らの権力を絶対的なものにすることを目指す頼朝によって“陰謀”に巻き込まれ、無念の死をとげる。

頼朝がいる御所にて謀殺された後、そこにいた多くの御家人らが頼朝に一斉に忠誠を誓ったシーンは、物語の1つの分岐点とも言えるものだった。16回からは、いよいよ平家討伐に物語は動いていく。

SNSで多くの人が声を寄せたのは、上総介が最期に見せた笑顔だ。上総介は絶命する寸前、小栗旬さん演じる主人公・北条義時に笑顔を見せていた。

この笑顔について佐藤さんは、大河ドラマ公式Twitterに投稿された音声インタビューで「『お前が俺になるんじゃねぇ』という思いがああいう笑顔になるんじゃないのかな」と話している。

あまりにも非情な頼朝の謀りごとに、Twitterでは「頼朝嫌い」などの関連ワードが日本のトレンドになるほどだった。

生前、陰ながら読み書きを学んでいたという上総介が頼朝に宛てた書を義時が読み上げたシーンで、頼朝が「あれは謀反人じゃ」と言い放った芝居にも注目が集まった。

Twitterでは上総介の死を惜しみ、「上総介を偲ぶ会」というハッシュタグまで作られる盛り上がりを見せ、視聴者それぞれの感想が飛び交った。

「頼朝が生きている時代はプロローグ」

『新撰組!』(2004年)、『真田丸』(2016年)に続き、大河ドラマの脚本担当は今回で3度目となる三谷幸喜さん。

今作でも喜劇作家らしさあふれる展開は多く見られるが、上総介が命を落とすシーンでは一切のそれがなかった。「三谷脚本の本領発揮感が凄い回だった」の声もあった。

三谷さんはNHK大河ドラマ公式サイトで2021年12月に掲載されたインタビューで「『鎌倉殿の13人』が本当に始まるのは頼朝が死んでからなんですよ。『強い権力を持った人が突然死んだあと、残された人たちがどうしていくのか』、それが今回の最大のテーマ」と語っている。

この言葉を借りれば、本当の物語は始まってすらいないという考えに及ぶ。

続けて、「大泉洋さんにはまだ言ってないけど、頼朝が生きている時代はプロローグに過ぎない。総集編では全部カットの可能性もあります」と“公開インタビュー”で話しているところに、三谷さんらしさが滲み出ている。

大河ドラマは、まず“ドラマ”であるべき

三谷さんは自身が手がけた作品が「史実無視とか荒唐無稽とか言われまくり」と言及した上で、大河ドラマそのものについて、次のように話している。

「歴史劇だから歴史を描くことはもちろんですが、大河ドラマはまず“ドラマ”であるべきというのが、僕の考え。エンターテインメントとして満足できるものをつくりたい」

本作の脚本に笑いを積極的に取り入れることについては、以下のように話す。

「鎌倉初期って怖い時代なんです。裏切りとか平気であるし、人もどんどん死んでいく。笑いがないとつらすぎる。やはり日曜の夜8時に家族で楽しめるものにしたいじゃないですか。そんなものはとっくに幻想になってしまっているかもしれないけど、それでも僕は大切にしたい。そういうものをつくりたい」

同作のキャッチコピーは『三谷幸喜が贈る予測不能エンターテインメント』。第16回からも物語の展開に注目したい。