「桜」と言って最も多くの人が思い浮かべるであろうソメイヨシノ。
ソメイヨシノは開花から満開(花が80%以上が咲いた状態)までの日数が九州から関東までは約7日、北陸から北海道までが5日ほど。そして、満開から数日するといっせいに散り始めます。ということは満開から10日ほどで散ってしまうことになります。
日本花の会の和田博幸特任研究員によると、「花冷えで気温が下がれば2週間ぐらい持ちますが、逆に気温が高いと1週間で散ります」とのこと。
花が散るのは、花びらの根元に離層という細胞層が形成され、それまで付着していた花托(かたく)から切り離されるからです。
そのため満開になるまでは風が少々吹いても花は散りませんが、満開を過ぎると風が吹かなくても散るのです。
ではなぜ、ソメイヨシノはいっせいに散るのでしょうか?
江戸染井村の植木職人がルーツ?
ソメイヨシノは、江戸時代後期に染井村(現在の東京都豊島区)の植木職人によってつくり出されたといわれています。しかし、ソメイヨシノ同士では交配できず、接ぎ木でしか殖やせません。そのため、ソメイヨシノは1本の原木から接ぎ木によって増えていった、同じ遺伝子を持つクローンなのです。
野生のヤマザクラのように、それぞれが異なる遺伝子であれば、個体によって開花のタイミングも異なりますが、ソメイヨシノはすべて同じ遺伝子を持っているクローンですから、その地域で気温の条件などが揃えば、いっせいに咲き始め、満開となり、散っていくのです。
日本人は散り際にも惹かれる
こうして生まれたソメイヨシノは、育てやすいことや樹高もそれほど高くないこと、花がいっせいに咲くことから、花見に向いており、またいっせいに潔く散る様子が日本人の感性と合っていたため、全国に広がっていきました。いまや日本中の桜の約8割がソメイヨシノといわれています。
花がいっせいに散る「桜吹雪」も見逃せませんね。お濠や池の水面を桜の花びらが埋め尽くす「花筏(はないかだ)」もソメイヨシノならではの風物詩で、俳句の季語にもなっています。満開の頃とは別の美しさを魅せてくれる、散り際のソメイヨシノにも注目して、桜シーズンを満喫しましょう。
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