失語症とは?原因や症状は。ブルース・ウィリスさんが公表。接するときに気をつけるべきこと

俳優のブルース・ウィリスさんが失語症を理由に引退表明。失語症の人に接するとき、どんな配慮が必要?「日本失語症協議会」に聞きました。
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ブルース・ウィリスさん
via Associated Press

『ダイ・ハード』や『アルマゲドン』など数々の映画で知られる俳優のブルース・ウィリスさんが、 失語症のため俳優業から引退することとなった。ウィリスさんの家族が、ファンらに向けSNSで病状と引退を伝えた。

失語症とは何か?症状や原因は?失語症の当事者に、周囲はどのように接したらよいのか。

全国の失語症友の会や家族、支援者などでつくるNPO法人「日本失語症協議会」のサイトや、同会への取材をもとにまとめた。

 

失語症とは?

失語症とは、脳の損傷により、「聞く」「話す」「書く」「読む」といった言葉を操る機能が失われた状態のこと。

脳卒中などの病気や事故での頭部外傷といったことがきっかけとなり、脳の中の言語中枢といわれる部分が損傷を受けたときに出現する。

失語症の症状は、軽度から重度まで様々だ。

時々物の名前が思い浮かばないという比較的軽い症状の人もいれば、「はい」「いいえ」の返事ができない重度の人もおり、程度の幅が大きい。

「リンゴ」を「ミカン」と別の単語で言ったり、テレビのことを「タデビ」のように発音を言い間違えてしまったりする症状もある。

症状が軽くても、コミュニケーションがうまく取れず苦しい体験をする人も多い。程度の差はあるが、ほとんどの失語症者は「理解することの障害」も併せ持っている。

相手に早口で話しかけられたり、長文を伝えられたりして内容を理解できないこともある。突然の話題転換についていけなくなるケースもあるという。

 

どう接したら良いのか

失語症を発症したことで、社会との関わりが変化する人は多い。

失語症者1066人を対象にしたみずほ情報総研の調査(2015年)では、発症後に外出頻度が減ったと答えた人は64.4%に上った。他者との交流頻度が減ったと回答した人は約7割だった。

失語症のある人に接する際、どのようなことに気をつけたら良いのか?

同会は、「言葉が言えなくなってしまっても、子どもの能力に戻ってしまったわけではありません」と説明し、「家族や関係者は、失語症のある方を一人の大人として対応してください」と呼びかける。

その上で、言葉が出ないからといって笑ったり、子ども扱いしたりすることは絶対に慎むようにと強調する。

失語症の人が話そうとしている時は、急かさずゆっくり聞く姿勢が大切だ。

同会は、コミュニケーションを取るためのイラストや文字が書かれた市販の「会話ノート」を活用することも勧めている。

世界的に著名な俳優であるウィリスさんが失語症を公表したことで、失語症や当事者に対する関心は高まっている。

同会事務局の園田奨(すすむ)さんは、「失語症の人の多くは、言語の障害があることが外見からはわかりません。困難が見えにくいため相手に気付かれず、速いスピードで会話をされて理解できなかったり、『おかしいのでは』という反応をされたりして苦しむ人もいます」と明かす。

 

「配慮が広がってほしい」

近年では、内部障害や難病など外見から分からなくても配慮を必要とすることを示す「ヘルプマーク」が徐々に普及し、文字で意思疎通を取るボードが駅など公共の場に設置される対応も見られる。

園田さんは「失語症があることで、本人はただでさえコミュニケーションの壁に苦しんでいます。失語症とは何なのか、周りがどう接したら良いかを多くの人に知ってもらい、配慮が社会に広がってほしい」と話している。

同会は、失語症者の家族会の紹介や、当事者の権利を守るため議員への陳情といった活動にも取り組んでいる。