「中国はプーチン氏と一緒にまとめられてはいけない。できる限り早く切り離すべきだ」。
中国政府の公式な立場とは異なる見解を示した文章が注目を集めている。発表したのは政治学者の胡偉(こ・い)氏で、中国政府の直轄機関が設置した研究センターの幹部も務めている。
■「できる限り早く切り離せ」
胡氏が発表したのは「ロシア・ウクライナ戦争のありうる結果と中国の選択」と題された文章だ。
文章は3月5日に書かれたものとされていて、ウクライナ侵攻ついては「電撃作戦でウクライナに入り、親ロシア派政権を樹立することで、国内の危機から目を逸らすことが目的だったが、国内外の情勢は日に日に不利になっている」などと分析。西側諸国の経済制裁は空前のレベルにあり、「反戦、反プーチン勢力が結集し、政変が起きる可能性も排除できない」と見ている。
その上で、中国のロシアへの態度は「形式的には中間路線をとっており、国連安保理で棄権したり、ロシアを支持しながらウクライナを慰めようとしたりしている」と評価している。
胡氏は文章のなかで、中国がこの路線を続ける限り、国際的な孤立を深める可能性があると言及し、「中国はプーチン氏と一緒にまとめられてはいけない。できる限り早く切り離すべきだ」と提言している。
ロシアと西側諸国の対立が深刻化すれば、中国に向けられていたアメリカの注意がロシアに向き、プラスの効果はあるとしたものの、「それはロシアが倒れないことを前提にしている。プーチン氏が権勢を失えば、同じ船に乗る中国は必ず影響を受ける」と指摘。「“永遠の友はおらず、永遠の敵もいない。あるのは永遠の利益だけ”が国際政治の基本法則だ」とし、一刻も早い決断を求めた。
胡氏は、中国はロシア側に対し「プーチン氏の可能な冒険を阻止するために明確な行動を取るべきだ」としている。「中国は世界で唯一その能力を持つ国で、この独自のアドバンデージを生かすべきだ。それにより国際社会から広く賞賛を得て、アメリカや西側諸国と関係を改善する契機にもなる」と締め括っている。
■ネット空間で批判も
この文章が指摘する内容は、中国政府の公式見解とは異なるものだ。
中国のネット空間では批判的な意見も出ていて、中国SNS・ウェイボーに280万人以上のフォロワーを抱えるインフルエンサーは、「アメリカと手を組み、ロシアを捨て、西側に跪くよう主張した」と批判。「中央と対立する路線の意見を、公に提出するべきではない」などと主張した。