ウクライナ、そしてこの軍事侵攻に心を痛めている世界の人々へ。「4つのR」で心のケアを

ロシアによるウクライナへの侵攻によって、世界中の人々が深い悲しみと怒り、大きな不安を抱いています。認定NPO法人「世界の医療団」は、いま私たちができる心のケアについて発信しています。
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Omar Havana via Getty Images
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今回のロシアによるウクライナへの侵攻によって、世界中の人々が深い悲しみと怒り、大きな不安を抱いています。そうしたなか、認定NPO法人「世界の医療団」が、いま私たちにできる心のケアについて発信しました。

リリースの中では、ウクライナだけでなく「今なお紛争やテロに見舞われている、シリア、アフガニスタン、エチオピアやサヘル地域の平和も私たちはいつも願っています」とのメッセージを表明。

精神科医の森川すいめいさんは、トラウマインフォームドケアの考え方をベースに「4つのR」で心のケアについて解説しています。  

 

【4つのR】

≪まずは不調が起こることを知ってください(Realizes)≫

まずは、誰もが今回の戦争によって、こころや身体、行動に何らかの不調が起こることを知ってください。

不調の起こり方は人それぞれ異なります。イライラしたり、眠れなかったり、頭痛やめまいが起こるかもしれません。人によっては自分を責めてしまうこともあります。しかしどうか、自分を責めないでください。

≪どんな不調が起こるかを知ってください(Recognizes)≫

不調は、こころや身体、行動に現れます。

眠れない、悪夢を見る、何も考えられない、不安で落ち着かない、意欲が起きない、小さな音でびくっとする、怒りっぽくなる、感情がわかない
頭痛、吐き気、じんましん、体がだるい、喘息が悪化する、
嫌なことを思い出しそうな場所や人を避けようとする、
学校に行かない、暴れる、勉強に集中できない、ひきこもる
人よっては自分を酷く傷つけたり、他人に攻撃したりしてしまうこともあります。

飲酒量が増えたり、薬物を乱用してしまうかもしれません。

≪これらは自分のせいではありません(Responds)≫ 

自分を責めたり、またはそのような状態にある人を怒ったりしないでください。
もしも友人が、お子さんが、職場の仲間がこのような状態にあったら怒ったりせずにじっくりと話を聞いてあげてください。少しでも楽しい時間を一緒に作ってあげてください。
学校の先生も、警察官の方も、医師も、どうかこのことを大切にしてください。
お酒や薬物は、一瞬自分を楽にするかもしれませんが良い対処方法ではなく余計に苦しさを増しますので手を出さないようにしてください。

≪こころの傷が深くならないようにしてください(Resist-re traumatization)≫

 自分自身を大切にして守ってあげてください。

たくさんの偽情報があります。心配で情報を全部見たいと思うかもしれませんがたいていの記事や番組は、こころや感情を煽るように作られています。本当につらいときはそのような情報からはいったん離れてください。

周りの人は、苦しむ人を見かけたら、その人をさらに追い込むようなことは決してしてはいけません。どうか一緒に、良い時間を過ごしてください。

 

こころが少しでも楽になるために

● できるだけ規則正しく生活してください
● 1日20分くらいの散歩をしてください
● 良く寝てください
● しっかりと食べてください
● 気分を変えるためにお酒や薬物の乱用は避けてください
● 深呼吸を忘れずに
● 自然の中を歩いてみてください
● ゆっくりお風呂に入ってください
● 良い香りを見つけてください
● マッサージを受けたり、自分でしたりしてみてください

※こころが楽になるための方法はたくさんありますので、ぜひご自身で探してみてください。

苦しむ人の助けになるために周りの人ができること

● できるだけ早く助けてください
● 助かるまで手厚く関わってください
● 具体的に必要なものがあれば、その支援をしてください
● 表出した行動に対して、怒ったり、排除したりしないでください
● 話したいことをよく聴いてください
● 話したくないことを無理に話させようとしないでください
● 解釈したり、分析したり、診断したりしないでください
● 良かれと思ってその人に嘘をつかないでください
● その人の意思を尊重し、その人が自分で選択できることを助けてください
● 対等であり、対話的であることが大切です
● 支援をする人が勝手に結論を出すことは避けてください
● 痛みを持つ友人や、仲間、家族と一緒に優しい時を過ごしてください
● 文化や、歴史、ジェンダーの問題を理解し、尊重してください

各機関の方やご家族へのお願い

● 学校、会社、地域、警察、行政、家庭など、それぞれの場所で、心の傷のことを良く理解し、どうしたら安全、良い時間を作ることができるか、良く話し合い、そして実行してください。