五輪の舞台だからこそ、挑戦することに大きな価値がある。まさに、そんな思いが伝わるパフォーマンスだった。
2月15日に行われた北京オリンピックのスノーボード女子・ビッグエア決勝で日本の岩渕麗楽選手(いわぶち・れいら)が女子で初めてトリプルコークの大技に挑戦した。
惜しくも成功とはならず4位となったが、海外選手たちがその勇姿をたたえる光景に、SNSでは感動の声が広がった。
逆転をかけた3本目。選んだのは「攻め」の滑りだった
予選では3位とメダル圏内だった岩渕選手。15日に行われた決勝では2本目を終えた時点で4位だったが、岩渕選手が選択したのは守りではなく「攻め」の滑りだった。
逆転での表彰台を狙った決勝3本目。最終滑走で女子初のいわゆる“トリプルコーク”(「トリプルアンダーフリップ」)に挑戦した。
成功すれば、世界で初めての大技だった。
仲間だからこそ分かる挑戦の価値。海外選手が駆け寄る姿に感動
岩渕選手は空中で回り切って着地したが、直後にバランスを崩して転倒。惜しくも成功とならず、表彰台には届かなかった。
だが、すでに滑り終えていた海外の選手たちはその勇姿をしっかりと見届けていた。岩渕選手が滑り終わると次々と駆け寄り、抱きしめていた。
その光景に順位は関係ない。互いへのリスペクトが表れていた。
岩渕選手は試合後のインタビューで「また4位になってしまって悔しい」と話していた。
Twitterでは「スケボーの時みたいにほんとみんな選手が仲良くてたたえ合う姿にまた感動」「メダル以上の功績。攻めの姿勢素晴らしかった」などと岩渕選手の挑戦に賛辞を送っていた。
先日のフィギュアスケート男子・フリースケーティングでは、日本の羽生結弦選手が4回転アクセルに挑戦。五輪の金メダリストが限界を越えようと果敢に挑む姿は多くの人の胸を打った。14日に開かれた会見では挑戦についても口にしていた。
2020年の東京オリンピックで見られた挑戦も記憶に新しい。スケートボード・パーク女子決勝では岡本碧優(みすぐ)選手が空中でボードを1回転させる大技「フリップインディ」に挑戦するも着地に失敗。
このミスが響き、最終順位は4位でメダル獲得はならなかったが、今回と同じように海外の選手たちが彼女の元に駆け寄った。
もちろん、オリンピックの大舞台でメダルを獲得できることは素晴らしい。だが、それ以上に大切なことをアスリートは挑戦を通して私たちに教えてくれる。