北京オリンピックのフィギュアスケートは2月10日、男子シングルのフリースケーティング(FS)が行われる。躍進する日本勢を支える「コーチ」たちにも注目が集まっている。
団体戦と個人戦のショートプログラム(SP)で自己ベストを更新した宇野昌磨選手のコーチを務めるのが、ステファン・ランビエールさんだ。
2月8日のSPの採点を受けて、2人でピースサインをして喜ぶ姿も話題になった。
一時引退を考えたこともあったという宇野選手を奮い立たせたランビエールさんとは? 現役時代の活躍や2人の歩みを振り返る。
五輪銀メダリストで「氷上のアーティスト」
ランビエールさんは1985年、スイス生まれ。
初のオリンピックとなったソルトレークシティ大会(2002年)で15位、トリノ大会(2006年)では銀メダルを獲得した。
ISUグランプリ(GP)シリーズ・ファイナルで2度の優勝、世界選手権でも2連覇と偉業を達成した。
怪我で2008年に一度は引退したが、翌2009年に復帰。2010年のバンクーバーオリンピックにも出場し、4位に入った。
現役時代は特にスピンを得意としていた。表現力に優れ、「氷上のアーティスト」とも呼ばれた。
引退後は、ソチオリンピックで活躍した町田樹さんの振り付けやフィギュア女子の紀平梨花選手らの指導も担った。
ステファンの生徒の1人として
宇野選手の指導を本格的に始めたのは2020年から。
2018年の平昌オリンピックで銀メダルを獲得した宇野選手だったが、2019年11月のグランプリシリーズ・フランス杯で自己最低の総合8位に沈んでいた。
悩んでいた宇野選手が指導を仰いだのが、ランビエールさんだった。フランス杯の後、メインコーチに就任した。
2021年11月のオリンピック公式サイトのインタビューでは、フランス杯後に引退を考えたこともあったと明かした。複雑な心境の中で「ステファン・コーチなら楽しむことも、技術の向上も、両方できる」と考えたという。
「もっと上を目指して、ステファンの生徒の1人として大きく名前が上がるような、ステファンのために少しでもなれたらなと考えている」と語っていた。
宇野選手は2020年9月、自身のYouTubeチャンネルでランビエールさんについて「選手思いなところ」を好きな点としてあげ、「100%(選手の)味方をしてくれる」と語っていた。
ランビエールさんは、スイスを出発する前に新型コロナウイルスの陽性反応を示し、北京に入るのが遅れたが、宇野選手の大一番には間に合った。
フリーの演技で目指すもの
宇野選手は個人戦のSPで自己ベストを更新したものの、「4回転ー3回転」で手をつくミスもあった。
毎日新聞によると、宇野選手はランビエールさんから「4回転ー2回転で成功するより価値あるジャンプだった」と声をかけられたという。
「今、僕に必要なのは練習でなく、試合で4回転ー3回転をやること。失敗しながらも試合の中で4回転ー3回転をしっかり跳ぶ癖をつける。そういうところが今の自分に必要」と語った。
フリーで使用する楽曲は「ボレロ」。ランビエールさんが振り付けを担当した。
宇野選手はインタビューで、フリーのプログラムについて「おそらくですけど、完璧にできる確率は相当低いものだと感じている」と難易度の高さに言及した上で、「完璧な演技をしたいというよりも、次につながる演技、失敗しても自分の成長につながる演技、決して自分の気持ちに負けずにいつも通りの自分を出すことが目標です」と語っていた。