ゲイカップルが「コストコ」に行って感動した話。いったいなぜ?【漫画】

「諦めていたものが当然のように手にあるとじんわり嬉しいよね…」といったコメントが寄せられています。
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ゲイカップルが、アメリカ生まれの会員制スーパー「コストコ」に行き、心があたたまったーー。

そんな体験が描かれた漫画が、Twitter上で話題になっています。

 

作者は漫画家の伊藤正臣さん(@itoomi)。

実体験を基に描いたといいます。どんな漫画なのでしょうか。

 

◆男性2人でスーパーに行く気の重さが嬉しさに変わる

まずは漫画のストーリーを追います。

パートナーのゴンちゃん(4コマ目、右)に誘われ、「コストコ」に行くことになったトシくん(2コマ目)。

平日の昼間に男2人で行くことに、「周囲からどう思われるんだろう」と気が重い様子です。

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漫画1ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

コストコを利用するには、会員登録が必要。

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漫画2ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

ゴンちゃんだけが会員証を作る予定でしたが…

「家族」は1枚無料で追加できることを知り、店員に聞いてみることに。

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漫画3ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

すると、店員さんは「同じ住所に住んでいれば、家族カードを作れますよ」と教えてくれました。

驚く2人。トシくんは「一緒の住所で良いなら、他人でもよくなってしまうのでは?」と尋ねます。

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漫画4ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

トシくんは、店員さんが自分たちの関係などを分かった上で話しているのでは、と察し、「さすが外資系…」と噛み締めます。

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漫画5ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

楽しく買い物する2人。

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漫画6ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

安いため、買い過ぎてしまったという2人。

ゴンちゃんが調べると、自分たち以外の同棲している同性カップルも家族カードを作ることができたという体験談が出てきました。

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漫画7ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

  

自身がゲイで、男性のゴンちゃんと付き合っていることで、扶養控除などとは無縁だと思ってきたトシくん。

「コストコ的に、家族なんですよって急に認定されて、ちょっと感動したかも」と、ゴンちゃんとまた来る約束をします。

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漫画8ページ目
©️伊藤正臣/ヒーローズ

 

現在、日本では同性婚が認められていません。

2021年に札幌地裁が「同性婚できないのは違憲」という判決を出したほか、全国で「パートナーシップ制度」は広がり、同性パートナーを受取人にできる保険をはじめとする民間企業の取り組みも少しずつ増えていますが、まだまだ「家族として認められる機会は多くない」という実情もあります

読者からは「とても心があたたかくなりました」「諦めていたものが当然のように手にあるとじんわり嬉しいよね…」「素敵だなぁ…一緒に暮らす場所を探すことがまず大きなハードルだから、そこから変わっていったらもっと素敵だな」といったコメントが寄せられました。

 

◆「家族」に認定された嬉しさを漫画に

作者の伊藤さんによると、ふらっとヒーローズで連載中の「ふたりでおかしな休日を」という漫画のスピンオフといいます(現在、単行本未収録)。

「お菓子作りが趣味のトシくんと、甘い物が大好きなゴンちゃん。一緒に暮らすふたりの楽しみは、週に一度のお家カフェ。『今日おやつ何食べる?』」というあらすじ。

お菓子作りの様子とともに、職場や生活する中で感じた違和感など、ゲイの2人が日常の暮らしの中で感じたことが描かれています。

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「ふたりでおかしな休日を」1巻表紙
©️伊藤正臣/

 

ハフポスト日本版は、漫画に込めた思いを伊藤さんに取材しました。

ーーコストコでのエピソードを漫画で描こうと思ったきっかけ、背景を教えてください。

この話は実体験を基に描きました。家族カードの条件は知らない人も多いんじゃないかと感じ、シェアしたいなと思いました。

僕の住んでいる名古屋市ではパートナーシップ制度がまだないため、パートナーとの今後の関係についても考える機会がなかったですし、基本的に何かを期待するものではないと思ってました。

そんな中、コストコにふらっと買い物に出かけて会員カードを作った際「家族」というカテゴリに認定され、4840円も得をしたことが、寝耳に水的な感覚で嬉しかったんです。対応していただいた店員さんにはとっても感謝しています。

 

ーーTwitterで反響があったことについて、感想を教えてください。

「あたたかい気持ちになった」といったコメント、たくさんの「いいね」をいただいて、2人が応援されている気持ちになって嬉しかったです。

「同じ経験した!」という方とは握手したいですし、「こう思うんだ」と知ってくれた方には感謝したいです。

一方で、「自意識過剰」「どうしてもLGBTに結び付けたい」といった厳しいコメントもありました。
コストコの対応や制度に嬉しいと感じた気持ちを描いただけなのに…と心が痛みました。

でも実際に条件が同居というだけで、LGBTフレンドリーと描くのは言い過ぎだったのかな…とも、今では考えています。

 

ーー伝えたいことがあれば教えてください。

今回「男2人で行くのは浮くかな?」といった描写に「気にしなくていいのに」というコメントもいただきました。

僕も誰かを励ます時によく使う言葉なのですが、今回そのコメントをいただいたときには「だって気になったんだから」と思いました。

そこでハっとしたんです。(セクシュアリティに限らず)当事者じゃなければ分からない気持ちも多くあるんじゃないかなあと。

自分が描いている漫画「ふたりでおかしな休日を」は、ゲイの日常の暮らしの中にある引っ掛かることや嬉しかったこと、驚いたことなどについて、漫画を通してなら、読者さんと気持ちをシェアできるんじゃないかと思って描いています。

登場人物の感情を1つ1つ丁寧になぞることにもこだわっています。よければぜひ、読んでみてください。

 

◆友人や恋人同士でも「家族カード」を

コストコのカスタマーセンターや広報担当者にも話を聞きました。

ーーコストコの家族カードを作る条件について教えてください。

「主会員と同じ住所に住んでいる18歳以上」の方であれば「家族カード」を作ることができます。

世帯を1つの枠で考えておりますので、同じ屋根の下(同住所)で生活を共にしていれば、親子、友人同士、恋人同士でも作ることができます。

 

ーーそうした条件にしている背景を教えてください。

コストコはアメリカ生まれであり、アメリカの文化や家族観が背景にあります。日本の家族の括りとは少し違うと思います。 

 

ーー漫画では「嬉しかった」と言う感情が綴られています。また、漫画への反応も好意的なものが多いです。そういった反応をどう思われますか。

嬉しく思ってくださったのであれば、良かったなと思っています。

 

 〈取材・執筆=ハフポスト日本版・佐藤雄(@takeruc10)〉