性をタブー視する日本で広がる「生理の貧困」。LiLiCoが考える、自分の体について知ることの重要性

好評連載 第28回 LiLiCoの「もっとホンネで話そう。私たちのこと」
Open Image Modal
タレントのLiLiCoさん
Yuko Kawashima

生理用品のキャンペーン「#NoBagForMeプロジェクト」やがん検診普及啓発イベントなど、女性の体にまつわる仕事に縁の深いLiLiCoさん。メディアでも、生理や性について多く発言してきました。

世間を騒がすイシューからプライベートの話題まで、LiLiCoさんがホンネで語り尽くす本連載。今回のテーマは、「自分の体を知る」です。8歳から性教育が行われる国・スウェーデンで生まれ育ったLiLiCoさんが、自分の体について知識を深める重要性について語ります。

 

世の中で「生理」の扱いが変わった

Open Image Modal
Yuko Kawashima

この数年で、生理に関する社会の意識はずいぶん変わりました。ニュースの見出しで「生理」という言葉をよく見るようになったし、地上波のテレビ番組で深夜枠に生理の特番が組まれたこともあります。

ショッキングだったのは、「生理の貧困」のニュースです。経済的な理由や家庭環境などによって、生理用品を手に入れられない人がいる問題です。

生理があると、生理用品だけでもお金がかかりますよね。私はお金のない時代でも生理用品を優先的に買っていましたが、頻繁にナプキンを取り替えることはできませんでした。また、少ない日用の薄いナプキンまで買う余裕がなかったので、生理の後半はトイレットペーパーや布、綿などで代用していました。

経済的な理由以外に、父子家庭で父親に「買って」と言えなかったり、ネグレクトによって生理用品を与えてもらえなかったりする子どもたちもいるそうです。

メディアには生理の貧困が重要な社会課題であることをもっと報じてほしいし、都立学校や一部の自治体のように、学校などの公的施設で配布する制度にした方がいいと強く感じています。

Open Image Modal
Yuko Kawashima

女性スタッフが目の前で流産するなんて……

生理の貧困が見て見ぬふりをされてきたのは、日本では長らく「性」がタブー視されてきたからでしょう。生理に対する世の中の目が変わった一方で、生理を含む性について知りたがらない、語りたがらない傾向はまだまだあります。

例えば、コロナ禍で中高生からの妊娠相談が増えたというニュースがありました。先日、産婦人科の先生の話で驚いたのは、その多くはセックスをしていない子どもたちからの相談だったということ。性交渉をしていないのに妊娠を疑う子どもたちがいるほど、日本は性教育が行き届いていないのです。

その人の一生を左右し得る妊娠について、仕組みも知らなければ、正しく自覚もできないというのは、おそろしいこと。

性教育を含め、体についての知識は、性別を問わず人生の早い段階でしつこいぐらいに教えた方がいいのではないでしょうか。私たちは自分の体でしか生きられないし、自分の選択に責任を持たなければならない。体への知識は、他人への思いやりにもつながります。

女性である私だって、女性の体について知らないことがたくさんある――。それを思い知らされる出来事は、この連載の取材中にも起きました。

撮影、取材が終わり、その場の全員が帰ろうと立ち上がったら、ある女性スタッフが座っていた真っ白いソファに、明らかに生理ではない量の血が……。

彼女は、私の目の前で流産してしまったんです。

とっさに持っていた生理用品と生理用ショーツと衣装のスカートを渡しましたが、こんな場面に立ち会ったのは生涯で初めて。「流産」という言葉はもちろん知っていますが、こんなことが起きうるのだとショックを受けました。

 

「生理はあって当たり前」のスウェーデン

Open Image Modal
Yuko Kawashima

私に初潮が来たのは13歳ぐらい。保健室に行った記憶があるから、学校のトイレで気づいたんじゃないかな。

経血を初めて見たときは「これが!?」とびっくり! でも、生理が来ている周囲の女の子たちがうらやましかったから、やっとデビューできたような喜びがありました。

私の出身国であるスウェーデンは、8歳から男女ともに性教育を受ける国。生理のことは女子だけ、精通のことは男子だけ、ということはありません。

水泳の時間に見学している女子を見ると、男子が「アイツ生理じゃね?」と言うこともありました。ただ、クラスメイトが「そうだよ、生理だよ~」とサラッと対応するカッコイイ子たちだったので、生理は当然あるものとしてクラス全体に受け止められていました。

一度、体育の時間に黄色いユニフォームに血がついてしまった女子がいましたが、彼女をいじる子もいませんでした。

それより大騒ぎになったのは、学校の廊下にブラジャーが落ちていたとき! なぜなら、当時のスウェーデンでは、ブラジャーは胸が大きい人が使う物で、中高生でブラジャーをつける子なんてほぼいなかったからです。

だから、私の初めてのブラジャー体験は、18歳で日本に来てから。おばあちゃんに「葛飾のおじさんたちがみんなあなたのおっぱいを見ているから、ブラジャーをしなさい」と言われて、イトーヨーカドーでワゴンセールになっていた500円のブラジャーをサイズもわからず買ったんです。

私はそこで自分がジロジロ見られるのは胸のせいなのか、と思ったのを覚えています。そもそもハーフだから珍しいものを見るような視線を送られるのには慣れていたからね。

Open Image Modal
Yuko Kawashima

自分の体の声を聞こう

日本は、がん検診の受診率がとても低いですよね。とくに女性特有のがんの検診率は低くて、乳がん検診も子宮頸がん検診も受診率は4~5割で、なかなか上がりません。がんは早期発見が大事で、がんにかかってしまったら、検診よりずっと怖く痛い思いをしなければならないはずなのに。

例えば、子宮頸がんになって子宮を摘出したらどうなるか。

結婚して1週間後に子宮頸がんが発覚した女性は、子宮や卵巣の摘出手術を受けて子どもが産めなくなり、子どもを虐待する人のニュースが流れるたびに「私にください、私が面倒みるから」と号泣してしまう、と話していました。

彼女はセックスをしても感じない、尿意がわからなくなって2時間に1度はトイレに行かねばならないといった後遺症にも苦しめられているそうです。

検診を受けるかどうかを選択する自由はあっていいと思います。ただ、それを選択しなかったときにどうなるかという知識は、もっともっと知られるべきではないでしょうか。

Open Image Modal
Yuko Kawashima

自分の体について見て見ぬふりをするのはいいことではありません。

何年か前、胸に叫び出すほどの激痛が走り、「乳がん!?」と驚いてかかりつけ医に電話をしたら、「痛みを感じたなら大丈夫。がんは痛くない時もあるから検診が必要なんです」と一言。

痛みは、ストレスからきた肋間神経痛でした。先生に「ストレスが溜まっているって体が合図をしているから気をつけて」と言われました。

体を知ることは、自分を知ること。

私は毎朝必ず全裸で体重計に乗ったあと、全身鏡で顔色や肌の調子、体のフォルムをチェックします。便も必ず観察してから流します。こうしていると、気候や生活習慣、心の状態が、いかに体に影響しているかがわかるんです。

コロナ禍で健康に気を配ったり、生活を見直したりした人が増えたと聞きます。この機会に、まずは自分の体に興味を持ってみませんか? 自分の体に対する想像力は他者への想像力にもなるはずです。

Open Image Modal
Yuko Kawashima

 

(取材・文:有馬ゆえ 写真:川しまゆうこ 編集:若田悠希