ジャーナリストの伊藤詩織さんが、元TBS記者の山口敬之さんから性的暴行を受けたとして損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決が1月25日、東京高裁であった。中山孝雄裁判長は、山口さんに慰謝料などの支払いを命じた一審判決を支持し、約332万円の賠償を命じた。一方で、伊藤さんに名誉を傷つけられたとする山口さんの反訴請求の一部を認め、伊藤さんに55万円の支払いを命じた。
東京高裁は、性行為の合意がなかったと判断した一審判決を支持し、山口さんの不法行為を認定。賠償額を増額し、山口さんに対し、慰謝料など332万8300円の支払いを命じた。一方、一審判決で棄却された山口さんの反訴請求については、デートレイプドラッグに関する公表が真実性、または真実相当性がないとし、山口さんへの名誉毀損などにあたるとして、伊藤さんに対して55万円の支払いを命じた。
2019年12月の一審判決で、東京地裁は「酩酊状態にあって意識のない伊藤さんに合意のないまま性行為に及んだ」と認定し、山口さんに損害賠償の支払いを命じた。また、名誉を傷つけられたとして反訴した山口さん側の請求を棄却。山口さんは判決を不服として、2020年1月に控訴していた。
どんな裁判なのか? これまでの経緯は
伊藤さんは2015年4月、就職相談のため山口さんと都内で食事をした後、ホテルで性的暴行を受けたとして警視庁に被害届を提出。準強姦容疑事件として捜査されたが、東京地検は嫌疑不十分で不起訴処分とした。
2017年5月に伊藤さんは名前と顔を出して記者会見し、検察審査会に不服申し立てをしたことを公表。検察審査会は同年9月、「不起訴相当」と判断した。
その後伊藤さんは、望まない性行為で重大な肉体的・精神的苦痛を被ったとして、山口さんに慰謝料1100万円の損害賠償を求めて民事訴訟を起こした。
一方、山口さんは、性行為は伊藤さんとの同意の下で行われ、不法行為はなかったと反論。伊藤さんが記者会見や書籍の公表などを通じて性暴力被害を訴えたことで、自身の名誉を毀損されたなどとして、慰謝料など1億3000万円の損害賠償や謝罪広告の掲載を求めて反訴した。
一審は山口さんに賠償命令
2019年12月18日にあった一審・東京地裁判決で、鈴木昭洋裁判長は伊藤さんの主張を認め、性行為に合意がなかったと認定。また、山口さん側の反訴請求は棄却した。
判決文では、山口さんが「酩酊状態にあって意識のない原告(編集部注:伊藤さん)に対し、合意のないまま本件行為に及んだ事実」と「意識を回復して性行為を拒絶した後も原告の体を押さえつけて性行為を継続しようとした事実」が認められると指摘。山口さんに慰謝料など330万円の支払いを命じた。
また、反訴請求については、伊藤さんが被害を公表したことは性犯罪被害を取り巻く法的、社会的状況の改善を目指したものだとし、「公益をはかる目的だと認められる」と判断。山口さんの名誉を毀損する行為ではないとして、請求を棄却していた。