尋常でないうめき声「私死ぬ」 ウィシュマさん映像、議員らが見たこと

生前のウィシュマさんが映るビデオの一部を視聴した議員の一人は、「緩慢なる殺人といわれても仕方ない」と指摘した。
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ウィシュマ・サンダマリさんの遺影。奥は妹ワヨミさん=2021年8月、東京都千代田区
時事通信社

名古屋出入国在留管理局に収容中のスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさん(当時33歳)が死亡した問題で、生前の様子を映した監視カメラ映像の一部を視聴した国会議員らが1月21日、「難民問題に関する議員懇談会」を開き映像の内容を報告した。

データが残る2021年2月22日から亡くなった3月6日までの13日分295時間のうち、入管庁側が編集した約6時間半の映像が同年12月、衆参両院の法務委員会の議員らに開示されていた。

立憲民主党の階猛・衆院議員は、死亡する10日前の2月24日午前4時から約1時間の映像で、ウィシュマさんの「断末魔のような声」を聞いたと明かした。

「聞くに耐えないような悲鳴、うめき声を延々とウィシュマさんが発し続けている。それにもかかわらず職員の皆さんは『あと4時間待ってください』と言って放置していた」

ウィシュマさんが「口から血、鼻から血」と言ってインターホンで職員を呼んでいた場面もあったという。階議員は、ビデオには尋常ではないうめき声が記録されていたとして「痛みや苦しみだけではなく、怯えや絶望も混じっているように感じました」と報告。さらに、ウィシュマさんが「私死ぬ」と訴えていたとも述べた。

階議員は「ビデオと(入管庁の)最終報告書の内容は大きくずれています。最終報告書は(ウィシュマさん死亡事件の)実態を隠しているのではないか」と指摘した。

立憲の有田芳生・参院議員は視聴時のメモを共有した。亡くなる2日前の3月4日、「明らかに顔色に異変あり。首が左右に揺れるが声は出ない。『大丈夫?』と声をかけても返事なし」「2人の職員は立ったままじっと見つめ続ける。時計を見て出ていく。残った職員は立ったままじっと見つめている」などと記録し、「こうした状況でなぜ救急車を呼ばないのか」と疑問を呈した。

有田議員は、「ウィシュマさんは医療放棄と介護虐待の結果、生命を奪われました。緩慢なる殺人といわれても仕方ないでしょう」と文書で報告した。

ウィシュマさんの遺族代理人の駒井知会弁護士も出席し、映像は「残虐そのものでした」と振り返った。駒井弁護士は、ウィシュマさんが痛がっているにも関わらず、看護師がウィシュマさんの亡くなる前日にも腕や足に触り、マッサージのようなことをしていたと証言。「痛がって悲鳴を上げているウィシュマさんに対して、明るくさえある声で『睡眠をとって良くなりますよ』という言葉をかける。ウィシュマさんが『アーッ』という悲鳴を上げているのにそれさえお構いなし。まさに地獄絵図でした」

「生きている人間を人形のようにもてあそび、さんざん絶望、恐怖、苦痛を味わわせた上で死にいたらしめてしまったのは、入管の職員たちであり、責任者たちであり、入管の制度自体です」と訴えた。