違法なものではないものの、適切ではなかったーー。
インターネットメディア「Choose Life Project」(CLP)への資金提供をめぐり、立憲民主党の西村智奈美幹事長は1月12日の記者会見で、調査結果を公表した。
この問題をめぐっては、立憲の福山哲郎・前幹事長とCLP側がそろって資金の授受を認めており、泉健太代表が西村氏に調査を指示していた。
西村氏は会見で、会計に関する資料を確認し、福山氏や事務局に聞き取り調査を行ったとした上で、2020年3〜8月分として、同8〜10月に合計1500万8270円が広告代理店に対して支払われていたと明らかにした。
「一切番組内容などに関する要求は行っていないことは確認した」とも強調し、「現執行部としては、本件の支出は違法なものではないものの、公党として3つの観点から適切ではなかったと考えている」と述べた。
西村氏が指摘した3点は次の通り。
- 特定のメディアに公党が資金を提供したにもかかわらず、そのことを公表せず、その出どころを隠していたのではないかとの疑念を持たれるものであったこと。
- 特定のメディアに党が資金を支援することそのものが適切であるか議論があること。
- 立憲民主党、CLPの両者において、公党からの支援が適切なものであるのかについて、支援の開始がなされた時、あるいはCLPが公共のメディアを作るとした理念をまとめた際など、その妥当性について組織として議論・検討した形跡がないこと。
その上で、「国民の皆様に疑念を与える結果となった。反省すべきことだ」とした。
今後の対応策については、支出の妥当性などのチェック体制を実施し、党内ガバナンス機能の点検を行うとした。その上で、「資金の使途だけではなく、メディアとの適切な距離感を保ち、国民の皆様に疑念を抱かれることのないように努めて、類似の事案が発生しないようにする」とも語った。
西村氏は、「今回の支出については、最終的な判断は福山前幹事長の、幹事長としての判断である」と述べた一方で、「違法性があったものとは言えない」ことから「処分は考えていない」とした。
今夏の参院選で改選を控える福山氏。すでに党が公認しているが、「処分を考えてないので、公認も継続される」と述べた。
問題点は?収支報告書を見てみると…
政党から特定のメディアへの資金提供にはどのような問題が考えられるのか。
CLPの番組に出演したことがある津田大介氏や安田菜津紀氏、小島慶子氏ら5人が1月5日に連名で公表した抗議文では、「報道機関でありながら、定政党から番組制作に関する資金提供を受けていたことは、報道倫理に違反するもの」であり、「公正な報道の根幹を揺るがす行為」と指摘している。
CLPは自らを「公共メディア」とし、様々な社会問題をテーマにインターネット上で動画を配信してきた。また、2020年7月に法人化し、クラウドファンディングの募集を実施したが、立憲からの資金提供を受けていた実態は明かしていなかった。
立憲からの資金提供は、「公共のメディアを作るとして、クラウドファンディングを開始することになったことから、協議の上、同年9月をもって党からの支援は終了することとなった」(西村氏)という。
また、立憲が資金提供をしたと公表した計4回の支出の内訳は、以下の通り。
2020年8月7日 447万5390円
2020年9月4日 563万7090円
2020年10月9日 251万1420円
2020年10月9日 238万4370円
立憲側もCLP側も「番組制作費」名目で資金の授受があったと認めているが、政治資金収支報告書を確認すると、いずれも支出先は広告代理店と記載され、最初の支出は「動画制作費」とされているものの、その後の支出は「企画広報費」名目で記載されている。
この点について、西村氏は会見で「弁護士にも確認したが、統括や支払い管理などを広告代理店でされていて、動画制作費や企画広報費としての取引実態があるので、CLPへの寄付とするのはむしろ実態と異なってしまうという話だった」と述べ、収支報告書の記載については問題視しない考えを示した。
会見では、CLP以外にも類似の支出があったかどうかについても問われた。
西村氏は「(新執行部の)泉体制になってからは存在していません」とし、「その前の体制で類似の支出があったかどうかについては、あったという調査結果は出ていない」としたが、「まだ確認作業は進めている」「ないとは断定的には申し上げていない」と語っている。