自殺防止ホットラインを曲名にした人気ラッパーの楽曲、大勢の若者を救っていた【調査結果】

ロジック(Logic)が2017年に発表した「1-800-273-8255」。SNS上での言及が最も多い期間に自殺者の減少が観察されたという。
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ロジックは、2018年のグラミー賞で「1-800-273-8255」を掲げてステージに立った
Jeff Kravitz via Getty Images

1-800-273-8255

この11桁の数字は、アメリカ政府が提供する自殺防止ネットワークのホットラインの電話番号だ。

人気ラッパー、ロジック(Logic)は2017年にこの数字をタイトルにした楽曲を発表し、グラミー賞の最優秀楽曲賞にもノミネートされた。

それから4年、この「1-800-273-8255」が、多くの若者を救っていたとする調査結果が明らかになった。

 

SNSで話題になり、自殺率が低下

イギリスの医学誌「ブリティッシュ・メディカル・ジャーナル(以下、BMJ)」が12月13日に発表した報告書によると、「1-800-273-8255」リリース後、電話が1万件近く増え、さらに10歳〜19歳の自殺が5.5%減少したという。

楽曲のリリース(2017年4月)、著名な音楽アワードであるMTVビデオミュージック・アワードへの出演(2017年8月)、グラミー賞授賞式への出演(2018年1月)という注目を集めた3つのイベントの後の34日間で、ホットラインへの連絡が増加。

さらに、同期間中の若者の自殺率も低下しており、予測値よりも自殺者の数が「245人減少した」との調査結果も発表された。

論文の著者は、パパゲーノ効果(メディアが自殺を思い留まり成功した例を挙げることで大衆の自殺を抑制する効果)を提唱する、ウィーン医科大学のThomas Niederkrotenthaler氏。

同氏は、「1-800-273-8255」がライフラインでの電話の大幅な増加に関連していると結論づけ、「この曲に関するソーシャルメディア上での言及が最も多い期間に自殺者の減少が観察された」とも分析している。 

さらに、音楽やエンターテインメント業界などが協力することで、「幅広いリスナーの共感を呼び、ソーシャルメディア上でも影響を及ぼし、安全なサポートを求めるためのストーリーを促進すること」にもつながるとの見解も示している。

 

どんな曲? ロジック自身もメンタルヘルスの問題を抱える

曲を作ったロジック自身も、メンタルヘルスの問題を抱えていることを明かしている

アレッシア・カーラとカリードをゲストに迎えて制作された「1-800-273-8255」。MVは、ゲイの黒人の少年が、家族にもクラスメイトにも受け入れられずに自殺を考えていた時、この番号に電話し、アレッシア・カーラ演じるカウンセラーとの会話を通して救いを得るというストーリーだ。「生きていてほしい 死んじゃダメだよ今日 死んじゃいけない 生きていてほしい」とも歌われている。

YouTubeでの再生回数は、4億回を超えている。

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ロジックは、2018年のグラミー賞の授賞式、「1-800-273-8255」とプリントされたTシャツを着た人々と一緒にステージに立った
Jeff Kravitz via Getty Images

ロジックは、2018年のグラミー賞の授賞式、「1-800-273-8255」とプリントされたTシャツを着た人々と一緒にステージに立った。それは、実際に自死を考えたが思いとどまった人たちや、 自死で家族や身の回りの人を亡くした人たちだった。

BMJの調査結果を知ったロジックは、CNNの取材に答え、こう話している。

「自分の音楽が実際に人々の生活に影響を与えていると知ったことが、この曲を作ったインスピレーションになりました」

「人の命を救いたいという、心の温かいところから生まれた曲です。そして、実際にそうなったという事実に心揺さぶられています」

日本では、厚生労働省が推奨している「こころの健康相談統一ダイヤル」として、0570-064-556(おこなおう・まもろうよ・こころ)がある。

また、以下の団体でも相談窓口を開設している。