世界経済フォーラム(WEF)は7月13日、男女格差の大きさを国別に測って比較する「ジェンダーギャップ指数2022」を発表した。
日本は調査対象となった世界146カ国のうち116位だった。156カ国のうち120位だった前年からわずかに順位をあげたが、主要7カ国(G7)では引き続き最下位となった。
特に衆院議員の女性割合の少なさなど政治参加分野の格差は引き続き大きかった。また経済分野については前回(117位)より順位を下げた。
経済、政治の格差大きく
WEFは世界の政財界のリーダーが集う「ダボス会議」を主催する国際機関。ジェンダーギャップ指数は、「経済」「教育」「医療へのアクセス」「政治参加」の4分野のデータで、各国の男女格差を分析した指数。
4分野の点数は、いくつかの小項目ごとの点数で決まる。小項目を集計する際は、標準偏差の偏りを考慮したウェイトをかけている。 ただし、4分野の点数から算出される総合点は、4分野の平均になっている。スコアは1を男女平等、0を完全不平等とした場合の数値で、数値が大きいほど男女格差の解消について高い評価となる。
日本は今年も経済(121位)と政治(139位)で格差が大きく、順位が低かった。一方で教育(1位)や医療(63位)では、格差はない、もしくはほとんどないと評価されている。
■政治分野
「政治参加」については、以下の3つの小項目で評価される。
・国会議員(衆院議員)の女性割合(133位、スコア0.107)
・女性閣僚の比率(120位、0.111)
・過去50年の女性首相の在任期間(78位、0)
2018年に成立した「政治分野における男女共同参画推進法」では、男女の候補者ができる限り均等となることを掲げ、各政党に男女の候補者数について目標を定めるよう努力義務を課している。
しかし、この法律が成立して初めて迎えた2021年の衆院選では、当選者に占める女性の割合はわずか9.7%にとどまり、前回(2017年)を下回った。
政府は、2025年までに国政選挙の候補者に占める女性の割合を35%にする目標を掲げているが、衆院選でこの目標を達成したのは共産と社民のみだった。
なお、衆院議員の女性割合で評価されるジェンダーギャップ指数には関連しないが、今回の参院選(7月10日投開票)では181人の女性候補が立候補し、35人が当選した。候補者全体の割合で見ると33%、当選者全体で見ると28%となりいずれも過去最多に。
一方で政党別で見ると差があり、候補者について「2025年までに35%」という政府目標を達成したのは立憲、国民、共産、れいわ、社民の5党にとどまった。
■経済分野
「経済的機会」分野は、以下5つの小項目で評価される。
・労働参加率(83位、スコア0.750)
・同一労働での男女賃金格差(76位、0.642)
・収入での男女格差(100位、0.566)
・管理職ポジションに就いている数の男女差(130位、0.152)
・専門職や技術職の数の男女差(-)*スコア、順位の記載なし
経済分野については、前回(117位)より順位を下げた。労働参加率や管理職ポジションに就いている数の男女差のスコアが下がったことが背景にある。
経済的な権利についての男女格差をめぐっては、世界銀行が世界190カ国・地域の職場や賃金、年金など8つの分野で男女格差を分析した調査もある。
3月に発表された最新の調査で、日本は前回の80位タイから103位タイに大きく順位を下げた。
移動の自由や年金制度では格差がないとして満点の評価だったが、職場の待遇や賃金などで低い評価となった。
一方、男女の賃金格差の是正に向けては、具体的な政策も動き出している。
厚生労働省は7月8日、従業員が301人以上の企業に対し、男女間の賃金格差の開示を義務付ける「女性活躍推進法」の省令改正を施行した。
岸田文雄首相は1月の施政方針演説で「世帯所得の向上を考えるとき、男女の賃金格差も大きなテーマ。この問題の是正に向け、企業の開示ルールを見直します」と言及していた。
格差を可視化し、是正に向けた取り組みを促すことが狙いだ。
1位はアイスランド、世界の傾向は
今回のジェンダーギャップ指数2022で1位となったのはアイスランドで、13年連続で「世界で最もジェンダー平等が進んでいる」と評価された。
2位以降はフィンランド、ノルウェー、ニュージーランド、スウェーデンが続いた。上位5カ国の顔ぶれは前回と同じだった。
世界全体の傾向についてWEFは、新型コロナウイルスの感染拡大後、ジェンダー格差が広がったが、それを縮小する動きは力強さに欠いていると指摘。
労働力の中で格差が広がっており、「生活費の危機的な高騰が女性に強い打撃を与えると予想されている」と分析した。
ジェンダーギャップ指数とは
各分野での国の発展レベルを評価したものではなく、純粋に男女の差だけに着目して評価をしていることが、この指数の特徴だ。ジェンダーギャップを埋めることは、女性の人権の問題であると同時に、経済発展にとっても重要との立場から、WEFはこの指数を発表している。