兵庫県尼崎市、職員のセクシュアリティをアウティングしていた。市民にカミングアウトは「不適切」と指導

兵庫県尼崎市で2019年、「市民にカミングアウトは不適切」と指導し、バイセクシュアルの男性職員が辞職した問題で、新たに男性が部署内でアウティングされていたことが分かりました。
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尼崎市役所
尼崎市 防災情報/ Facebook

兵庫県尼崎市の保健所で2019年、幹部職員がバイセクシュアルの30代の男性職員に対し、「勤務中に、性的指向などを市民にカミングアウトすることは不適切」といった指導をし職員が辞職した問題で、幹部が男性のセクシュアリティを同じ職場の職員にアウティング(本人の了承を得ずに第三者に伝えること)していたことが12月20日、ハフポスト日本版の取材で分かった。

市はアウティングの事実を認めた上で、「言いふらしたわけではなかったが、言葉遣いなど、配慮すべきことがたくさんあった」としている。

 

保健所によると19年秋、市民団体から保健所の幹部に「男性職員に性的指向を打ち明けられ、困惑している人がいる」と申し入れがあった。

それを受けて幹部は、男性が所属する部署の部長や課長、部署内の複数の職員に、「男性が市民にバイセクシュアルだと伝えていると、団体から申し入れがあった」と伝え、事実確認を行なった。
男性には事前に、申し入れ内容や、他の職員にセクシュアリティを含めて事実を確認することを説明しなかったという。
事実確認の中で初めて、男性職員がバイセクシュアルだと知った職員もいたという。

 

幹部は男性職員が市民団体にカミングアウトしていたことを把握。
12月中旬に、幹部職員らが男性と面談し、「市民団体から苦情が寄せられている。勤務中はプライベートなことを言うのはやめた方が良い」と、カミングアウトを差し控えるよう求めた。

面談の中で、男性が「市民の1人から結婚観を何度も聞かれ、話を終わらせたくて、セクシュアリティを正直に答えたことがある」と訴えたが、市民団体への事実確認はしなかった。

市は「辞めた職員が、カミングアウトは全てダメだと解釈してしまったのだと思う。性的指向のカミングアウト自体を否定したつもりはなかったが、説明や配慮が足りていなかった。再発防止に努めたい」と話している。

神戸新聞によると、男性は「社会の無理解を行政が容認した形でショックだった」として依願退職していた。「市は自分の性的指向を『不快』とした団体側に何の意見もせず、それが悪いことであるかのように一方的に注意された。納得できず退職を決めた」と語った。

 

「アウティング」や「SOGIハラスメント」とは?

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アウティングやSOGIハラスメントの防止策を語るLGBT法連合会の神谷悠一さん
ハフポスト日本版

セクシュアリティによらず、LGBTQ当事者らが生きやすくなる法整備を目指す「LGBT法連合会」事務局長の神谷悠一さんは、尼崎市の対応について「本人の同意なく性のあり方を暴露する『アウティング』や、SOGI(性的指向や性自認)に関する『SOGIハラスメント』に該当するのではないか」と話す。

 

神谷さんは「本人がバイセクシュアルであるかどうかどうかは焦点化される問題ではない。確認するにしても、本人にどこまで言って良いかや、なぜカミングアウトをしたのかなどについて、他の職員への確認の前に丁寧に聞き取りすべきだった。今回のケースでは、本人のセクシュアリティを特定せず、事実確認する方法もあったと思う」と指摘する。

 

厚生労働省の職場におけるハラスメント関係指針には、SOGIを含め、プライバシーの保護が義務付けられている。本人の同意なく、第三者に伝えることはアウティングになるため、業務上必要な場合は、まずは本人に許可を取ることが大切という。

神谷さんは「同意が得られなかった場合は自治体の専門窓口など、秘密保持義務がある窓口に、まずは相談してほしい」と呼びかける。

 

また今回のケースは、男性職員が市民団体側から結婚観を何度も聞かれるといった、顧客・取引先(カスタマー)からの「カスタマーハラスメント」を受けているとも言えるという。

「公務員に限らず、職員が取引先に対して強く出られないことは多々あると思う。ただ、カスタマーハラスメントを受けた被害者の思いを十分に受け止め、内部を罰するのではなく、上司が外部との関係調整などを行うことも必要だと思う」と話す。