実在しないスイスの生物学者「ウィルソン・エドワーズ」というアカウントに掲載された、新型コロナウイルスの起源調査に関する証言について、フェイスブックを運営するメタ社は、拡散などに用いられた524アカウントを削除したと発表した。
「エドワーズ」はコロナの起源について中国側の主張に沿った証言をしていたが、2021年8月にスイス大使館によってその存在を否定されている。
■民間企業が協力し拡散か
この騒動があったのは2021年7月。スイス・ベルンの生物学者を名乗る「エドワーズ」がフェイスブックなどに登場すると、新型コロナウイルスの起源をめぐる証言を投稿。コロナの起源をめぐる調査について、武漢市にあるウイルス研究所から漏れ出た可能性は「極めて低い」などとする調査結果を支持した人たちが、「アメリカやあるメディアからの圧力や脅迫に遭った」などとした。
この証言は中国の国営メディアなどに相次いで転載された。
しかしその後、スイス大使館がSNS・ウェイボーで「ウィルソン・エドワーズという名前の国民は一人として登記されていません」と存在そのものを否定していた。
フェイスブックを運営するメタ社はこの「エドワーズ」について調査を開始。その結果、拡散などに関わった524のアカウントなどを削除したという。
メタ社によると、拡散のために作られたネットワークは主に中国国内で作られたもので、アメリカやイギリスの英語話者、それに台湾や香港、チベットの中国語話者をターゲットにしていたという。一方でメタ社は、こうした一連の試みは「ほぼ成功しなかった」と表現している。
また調査の結果、四川省に本社がある「四川無声信息技術有限公司」と「世界各地にある中国国営のインフラ企業」にそれぞれ関連する個人との繋がりが見つかったという。
「無声信息」の公式サイトによると、同社は2000年設立のデータセキュリティ企業。公安部など中国当局への技術提供をしていると謳っている。提供サービスを見ると「世論コントロールと誘導システム」があり、「世論の対抗などに主に用いられる」などと説明している。