「尊敬する人物を教えてください」
「転校の経験はありますか」
「家族の職業はなんですか」
就職や転職活動の面接官を務めた経験がある人がいたら、当時を振り返ってみてほしい。例えば、受験者に上記のような質問を投げかけたことはあっただろうか。
厚生労働省はこれらの質問に対し、「職業差別につながる恐れがある不適切なもの」として注意を呼びかけている。
これらの質問のどこに問題があるのか。他のNG例とともに紹介する。
「どんな本を愛読」「結婚の予定は」→NG
厚生労働省大阪労働局は「就職差別につながるおそれのある不適切な質問の例」を紹介し、面接を担当する者に対して注意を促している。
不適切とされる質問は主に、「本籍」「住居とその環境」「家族構成や家族の職業・地位・収入」「資産」「思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党」「男女雇用機会均等法に抵触するもの」の6つに分類される。
例えば、「どんな本を愛読しているか」という質問は思想や信条に当てはまり、「結婚の予定」について聞くことは、男女雇用機会均等法に抵触する可能性を含んでいるという。
厚労省は、これらの質問が不適切な理由について「ひとつの質問からかえって緊張したり、気持ちが沈んだりして、それが態度や返答に出てしまいます。ひいては、そのことが採否の判断基準に大きな影響を与えてしまうことにもつながります」とまとめている。
また、企業や組織側から質問せずとも、他の質問に関連する形で受験者側から「家族の職業」「親の勤務先」などを話し出すケースがあるとして、そのような際には、「趣旨を応募者に説明し、これらのことについて話す必要はないことを一言伝えてください」としている。
これらは不適切。すぐに使えるNG質問集
厚労省が掲載している不適切な質問とその理由を紹介する。筆者は2013年の新卒での就職活動時、以下の中から複数の質問を実際に投げかけられた経験がある。
当時からは約8年の時が経っているが、日本は誰もが尊重し合い、平等でかつ多様性に溢れた社会を目指す道半ばだ。
以下で紹介する質問は、今後は控えるようぜひ改めて欲しい。
【本籍に関するもの】
あなたの本籍地はどこですか
あなたのお父さんやお母さんの出身地はどこですか
生まれてから、ずっと現住所に住んでいるのですか
ここに来るまでどこにいましたか
※本籍を質問することは「結果的に」就職差別につながるおそれがあるという。
【住居とその環境に関するもの】
○○町の△△はどのへんですか
あなたの住んでいる地域は、どんな環境ですか
あなたのおうちは国道○○号線(○○駅)のどちら側ですか
あなたの自宅付近の略図を書いてください
家の付近の目印となるのは何ですか
【家族構成や家族の職業・地位・収入に関するもの】
あなたのお父さんは、どこの会社に勤めていますか。また役職は何ですか
あなたの家の家業は何ですか
あなたの家族の職業を言ってください
あなたの家族の収入はどれくらいですか
あなたの両親は共働きですか
あなたの学費は誰が出しましたか
あなたの家庭はどんな雰囲気ですか
あなたは転校の経験がありますか
お父さん(お母さん)がいないようですが、どうしたのですか
お父さん(お母さん)は病死ですか。死因(病名)は何ですか
お父さんが義父となっていますが、詳しく話してください
「資産」に関する質問は「応募者の適性・能力を中心とした選考を行うのではなく、本人の責任でないことがらで判断しようとしている」と指摘。
また、住宅環境や家庭環境の状況を聞くことは、地域の生活水準等を判断することに繋がり、「主観的判断に属する事柄」としている。
例としては、以下のものがある。
【資産に関するもの】
あなたの住んでいる家は一戸建てですか
あなたの住んでいる家や土地は持ち家ですか、借家ですか
あなたの家の不動産(田畑、山林、土地)はどれくらいありますか
個人の思想や信条に関わる質問にも、注意を払わなければならない。
【思想・信条、宗教、尊敬する人物、支持政党に関するもの】
あなたの信条としている言葉は何ですか
学生運動をどう思いますか
家の宗教は何ですか。何宗ですか
あなたの家族は、何を信仰していますか
あなたは、神や仏を信じる方ですか
あなたの家庭は、何党を支持していますか
労働組合をどう思いますか
政治や政党に関心がありますか
尊敬する人物を言ってください
あなたは、自分の生き方についてどう考えていますか
あなたは、今の社会をどう思いますか
将来、どんな人になりたいと思いますか
あなたは、どんな本を愛読していますか
学校外での加入団体を言ってください
あなたの家では、何新聞を読んでいますか
厚労省は、「思想・信条や宗教、支持する政党、人生観などは、信教の自由、思想・信条の自由など、憲法で保障されている個人の自由権に属することがら」として、これらを採用選考に持ち込むことは「基本的人権を侵すことであり、厳に慎むべき」と厳しく訴えている。
男女雇用機会均等法の趣旨に反する採用選考につながるおそれがあるとして、次のような「女性に限定しての質問」を控えることも呼びかけた。
【男女雇用機会均等法に抵触するもの】
結婚、出産しても働き続けられますか
何歳ぐらいまで働けますか
今、つきあっている人はいますか
結婚の予定はありますか
紹介したのは、計42の質問例。これ以外にも、不適切となる質問や表現は今後時代とともに増えていく可能性がある。採用活動を行う際には十分に注意してほしい。