作家で僧侶の瀬戸内寂聴(せとうち・じゃくちょう)さんが11月9日に亡くなった。享年99歳。10月より体調不良のため、入院、加療していた。
NHKなどによると、心不全のため京都市内の病院で息を引き取ったという。
瀬戸内寂聴さんの本名は、瀬戸内晴美さん。1922年徳島県生まれ。東京女子大を卒業。1957年に『女子大生・曲愛玲』で新潮社同人雑誌賞受賞した。現代を生きる多様な女性の姿を描き、多数の文学賞を獲得し、人気作家となった。
多くの名作を残した作家。文化勲章受賞
多くの名作を残し、特に代表作として知られるのは『夏の終り』『蘭を焼く』『花に問え』『場所』など。『源氏物語』の現代語訳などにも取り組んだ。文学賞の選考委員も務めた。
1997年には文化功労者に選ばれ、2006年には文化勲章を受章している。
原発問題など社会問題についても発信
1973年、51歳の時に岩手県平泉町の中尊寺で得度し、「寂聴」を名乗り始めた。翌年には、京都・嵯峨野に「曼陀羅山 寂庵」を開き、「写経の会」「法話の会」を定期的に開催してきた。
近年では、2011年の東日本大地震で、東北の被災地を回るなどの支援を行った。2012年には原発再稼働反対などを訴え、経済産業省前で座り込みをするなどの活動も行っていた。
2016年には、貧困や虐待などに苦しむ若い女性を支援する「若草プロジェクト」を立ち上げた。
瀬戸内寂聴さんの公式インスタグラムのアカウントでは、日々の生活の様子をとらえた写真が頻繁に掲載されていた。
最後に瀬戸内寂聴さんの写真が公開されたのは2021年8月30日だった。「コロナはいつになればなくなるのでしょう。100年近く生きてきてこんなことは初めてです」「久しぶりに外へ出たら、さるすべりの花が咲いていて綺麗でした」などのコメントとともに、マスクを頭につけ、微笑む姿がおさめられていた。