10月31日投開票の衆院選に向けて、経済成長や税制のあり方について、各党からさまざまな政策が訴えられている。
ハフポスト日本版と若い世代に政治や社会のニュースを発信している「NO YOUTH NO JAPAN」が、9政党(自由民主党、立憲民主党、公明党、日本共産党、日本維新の会、国民民主党、社会民主党、れいわ新選組、NHKと裁判してる党弁護士法72条違反で)に対して実施したアンケートの中から、所得向上の具体策や税制改正の検討状況、気候変動対策についての回答を紹介する。
所得向上の具体策は
読者の皆さんが政治に対して「特に積極的に取り組んでほしい社会課題」(選択肢から複数回答)について聞いた【選挙アップデート for U30】アンケートでも、「経済政策・成長戦略」の関心が上位に上がり、自由記述では賃上げをどのように実現するか意見が寄せられた。
・長く続く日本のデフレ環境を脱却して欲しい。その為にも、労働者の賃上げ政策に積極的に取り組み、物価の上昇(良いインフレ)に繋げて欲しい
・人口減少が叫ばれている今、働く人の給料・QOLを改善しながら再びの経済成長へと導くことができるような政策はないか
(【選挙アップデート for U30】アンケートより)
こうした意見や、世帯あたりの平均所得(2018年552万円)がピーク時の1994年から100万円以上減っていることを踏まえ、所得を上げるための具体策について聞いた。
企業への税制支援を通した賃上げ、成長分野の雇用創出、富裕層への税負担を財源としたセーフティーネットの拡充、最低賃金の引き上げによる全体の底上げなど、さまざまな政策が寄せられた。
消費税を含めた税制改正の検討は
また、【選挙アップデート for U30】アンケートの自由記述からは、税金が増えることへの不安や、財源確保の見通しや使い道を問う声も寄せられた。
・コロナ対応、オリンピックで税金を多く使ったイメージがあるのですが、使った分の税金をどのように回収するつもりでしょうか?20代前半ですが、税金が増えているのに給料は下がる一方でこれからのことがすごく不安です。
・減税を主張する人は、その減った税金を何から補うのでしょうか?増税を主張する人は、その増えた予算を何に費やす予定なのでしょうか?
(【選挙アップデート for U30】アンケートより)
そこで、消費税の引き上げや引き下げを含めて、何らかの税制改正を検討しているか各党に聞いた。
自民は「消費税率を下げることは考えていない」と回答。所得課税については「経済社会の変化をとらえながら、経済成長の実現と再分配機能の回復を図る観点が必要」と答えた。
公明は「消費税の引き上げや引き下げについては検討していない」と回答。「賃上げや雇用の増加を促す賃上げ投資促進税制(大企業向け)や所得拡大促進税制(中小企業向け)の強化、下請け取引の適正化などについて議論したい」と説明した。
そのほかの7政党は、消費税の引き下げを検討しているとして、数値などについて以下のように言及した。
立民 (コロナ収束時点を見据え)税率5%への時限的な消費税減税
共産 消費税率を5%に引き下げ
維新 消費税は2年を目途に5%に
国民 (経済が回復するまでの間)消費税減税(10%→5%)を行う
社民 3年間の限定で消費税率をゼロに
れいわ 消費税を廃止する法律案を包括的な税制改正と併せて可及的速やかに提出
N党 消費税をはじめとした減税を積極的に検討
温室効果ガスの削減目標は?
持続可能な成長とも密接に関わる気候変動対策についても聞いた。
まずは脱炭素社会の実現に向けて前政権が掲げた、温室効果ガス削減の目標値について賛否を尋ねた。菅義偉・前首相はパリ協定に基づき、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」ことを宣言。
4月に開かれた気候サミットで「2030年度までに温室効果ガス排出量を2013年度比で『46%』削減する」という目標を表明した。
この目標値に対する賛否を各党に尋ねた。
自民、公明、維新、N党が「賛成」と回答。立民、共産、社民、れいわが「反対」を選んだ。
「反対」の場合には、削減目標値についても尋ねた。
立民は「2030年に2013年比55%以上削減し、2050年までのなるべく早い時期に温室効果ガス排出実質ゼロの脱炭素社会を実現」、共産は「2013年度比で54%~63%(の削減を目指す)」、社民は「2013年比で2030年に60%減、2050年に100%減という目標を提案」、れいわは「原発を前提とせずに50%以上の削減を目標とするべき」と回答した。
国民は「その他」を選び、「国民生活や経済の安定と成長を犠牲にすることなく、2050年までにカーボン・ニュートラル社会の実現を果たさなければならない」とし、関連分野の政策の再構築が必要、と回答した。
2030年度の電源構成の目標は?
国の中長期的なエネルギー政策の指針になる「第6次エネルギー基本計画」についても賛否を尋ねた。計画では、2030年度の電源構成の目標を以下のように定めている。政党へのアンケート実施時は「計画案」段階だったが、10月22日に閣議決定された。
再エネ:36~38%
原子力:20~22%
LNG:20%
石炭:19%
石油等:2%
水素・アンモニア:1%
自民、N党は「賛成」と回答した。
「反対」と回答したのは、立民、共産、社民、れいわ。
反対の場合には、電源構成の目標についてどう考えるか聞いた。
立民は、「再生可能エネルギー50%、化石燃料他50%を目指す」、共産は「再生可能エネルギーによる電力を、2030年までに50%(現状の2.5倍)、2050年までに100%にすることは十分可能」、社民は「電源構成の目標については検討中であるが原子力についてはゼロを目指す」、れいわは「原子力は0。再エネは2030年には50%以上、2050年には100%を目指す。火力については、石炭火力は2030年までに廃止」とそれぞれ回答した。
「その他」を選んだ公明は「概ね賛成」としつつ、「再エネについては、足下の比率から倍増する目標が設定されたため、技術革新も含め、あらゆる政策を総動員して、目標を達成したい」と記載した。
維新も「その他」を選び、「具体的な電源構成については検討中だが、できる限り再エネを増やすことが望ましい」と回答。
国民も「その他」で、「2030年代には電源構成比で再エネ比率が 40%以上となるよう着実な取り組みを進める」とした。
(文・澤木香織 グラフィック・坪池順/ハフポスト日本版)