中国・湖北省武漢市で、早ければ2019年夏に、遅くとも秋口には猛烈な感染拡大が起きていた可能性があると、オーストラリアのサイバーセキュリティ企業が報告した。PCR検査機器の公共調達額などを分析したところ、同時期に劇的に増加していたという。
中国の公式発表などでは、最初の患者の発生は2019年12月8日、WHO報告は2020年1月3日となっている。そのため、報告書は「高程度の確証」で、WHO報告よりも前に「パンデミックが始まっていたと評価する」と結論づけている。
調査を実施したのは、オーストラリアのサイバーセキュリティ会社「Internet 2.0」。中国の入札公募プラットフォーム「采招網」を通じて2007年から2019年までに締結された、PCR検査機器の公共調達契約額などを調べた。
その結果、2019年には武漢科技大学や現地のCDC(疾病制御センター)などで合わせて6740万元分(約11億5000万円)の購買契約がされていて、これは過去2年分(2017年、2018年)を足し合わせた額よりも大きかった。購買契約が増加したのは「中程度の確証(medium confidence)」で2019年7月ごろとされ、武漢科技大学では9月ごろに増えていた。これは例年の季節ごとの購買傾向とは異なるという。
Internet 2.0は同じく「中程度の確証」で「湖北省内のPCR検査機器購買契約額の増加は、新型コロナウイルス感染症のような緊急事態に起因すると評価する」とした。「高い確率で、早ければ夏に、遅くとも秋口には武漢で猛烈な感染拡大が起きていた」とも分析する。
また、「高程度の確証」で中国がWHOに新型コロナウイルスについて通報した時期よりも前に「パンデミックが始まっていたと評価する」と結論づけている。中国の公式発表などでは、最初の患者が発生したのは2019年12月8日で、WHOへの情報提供は2020年1月3日からとなっている。
これらの分析は新型コロナウイルスの起源をめぐる論争に関係はないという。
このデータに事前にアクセスしてきた多摩大学ルール形成戦略研究所の井形彬・客員教授は「中国政府による情報開示が進まない中で、比較的客観性の高い数字をデータで提示したことは非常に価値がある。次なるパンデミックとなりうる感染症が生じた際に、また同じ間違いを繰り返さないためにも、更なる調査が求められる」と話している。