自民党総裁選の投開票が9月29日に実施され、岸田文雄・前政調会長(64)が新総裁に選ばれた。
この結果に注目してきたのが中国だ。当日朝から「日本の次の首相は誰になるのか」という話題がSNS・ウェイボーのトレンド入りを果たし、岸田氏の勝利が伝えられると各メディアが一斉に速報した。中国メディアは岸田氏をどう見ているのか。
■中国への態度は「選挙対策」との見方も
複数の中国メディアが日本専門家の意見を伝えている。
このうち国営通信社の電子版・中国新聞網は、菅義偉政権が「たった1年」で終わることになると指摘し、その主要な原因は「コロナ感染状況と経済がダブルで悪化し、ぬかるみにはまった」と分析。岸田氏がこれを突破できなければ「第二の菅義偉になる」と指摘した。
そして、中国社会科学院日本研究所の呂耀東・研究員の分析を掲載している。それによると「岸田氏は内政面では緊急の問題に対処する形となり、長期的な社会課題の解決は難しい」としている。
そして外交では「当然日米同盟を堅持することになる」とし、インド太平洋地域を重視する戦略が新しい方向性になるとも指摘した。また台湾についてはより一歩進んだ政策を打ち出す可能性があるため、「しっかり注目していくべきだ」と話した。
中国新聞網は、岸田氏個人について「政策的にはハト派(穏健派)だが、総裁選期間中に対外強硬的な態度に転換した」と分析する。
岸田氏は伝統あるリベラル派で、ハト派と目される「宏池会」の会長だ。対中姿勢については、9月13日に発表された外交・安全保障戦略のなかで中国への対抗姿勢を鮮明にしたほか、同日に「中国政府による新疆ウイグル自治区などでの人権弾圧に対する国会での非難決議を成立させるべき」とツイートするなど、毅然とした態度をアピールしていた。
これについて呂研究員は「自民党内の保守勢力に迎合しようと、中国脅威論を選挙の看板として強調してみせた」とする。そして「そうした態度は望ましくない。日中関係をさらに悪化させることになる」とした。
一方で「実際には選挙対策であって、首相就任後に極端な右派路線をとるとは限らない」という見方を紹介している。
そして、日本が中国への対抗姿勢を強めた場合には「日中関係の発展が地区の平和と安定にとって重要であることを、日本に理解させるべきだ」などと提言した。
■別のメディアも同様の見方
人民日報系の「環球時報」電子版は、米中対立下では日本は中国に対し「安定路線」をとるだろうとする別の専門家の談話を紹介。日中関係をこれ以上悪化させるべきではないとして、緩和や改善の方向に進めるべきだとした。
また、外交学院国際関係研究所の周永生・教授の話として「選挙期間中に頻繁に中国に対し威圧的な話をしていたが、元はハト派だったため、今のところは選挙対策と考えられる。極端な右派路線を走るとは限らない」と、こちらも呂耀東氏同様の見方を示した。