「下駄を脱がされると男性が怯えている」 野田聖子氏は、なぜ『閣僚半分を女性に』と宣言したのか【自民総裁選】

自民党総裁選に立候補している野田聖子氏が単独インタビューに応じました。野田氏は、“日本初の女性総理“への意欲をかねてより公言しています。
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9月26日、インタビューに応じる野田聖子氏
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

9月29日に投開票が行われる自民党総裁選に、念願の初出馬を果たした野田聖子氏。“日本初の女性総理”への意欲をかねてより公言し、政治の世界におけるジェンダーギャップ解消を訴えてきた。

所見発表演説会では、自身が首相になったら「閣僚の半分を女性にする」と宣言した。政策には多様性や社会的弱者の視点に重きを置く。政治のジェンダーギャップ解消や、同性婚、選択的夫婦別姓について、どう考えるのか。9月26日、ハフポスト日本版は野田氏に単独インタビューした。

 

『閣僚の半分を女性』は「荒唐無稽ではない」

――首相になったら「閣僚の半分を女性にする」と宣言しました。なぜ数を増やすことが重要なのでしょうか?

だって、日本の代表だから。日本の国民は男女半々でしょう?それだけ。

――「クオータ制」(選挙候補者の一定数を女性に割り当てる制度)もそうですが、こうした取り組みには「性別ではなく実力で選ぶべきだ」という反対の声もあがります

それは男の人たちがおびえているのよ。履いた「下駄」を脱がされるんじゃないかって。

男性っていうだけで政治の能力があると思われているから。実際、女性がやってみると難なくできる。この間のオリパラだって、責任者は3人とも女性ですよ。(※オリ・パラ組織委員会会長・橋本聖子氏、小池百合子都知事、丸川珠代五輪相)

そういうところに気づかなくちゃいけない。女性がいないことに焦点を当てるのではなくて、「女性もできる」ということへの意識付けをした方がいいと私は思います。

自己肯定感の低い女性も多いと感じます。「これは男性しかできない」と思ってしまう。そうした女性たちを後押ししてあげたいなって。

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2020年9月16日に発足した菅内閣。20の閣僚ポストのうち、女性は上川陽子氏と橋本聖子氏の2人に留まった(発足当時)。
AFP=時事

――女性議員の候補者がなかなか増えない理由は

そもそも入り口の候補者選考委員会が男性ばかりで、女性を候補にするという発想が、少なくとも自民党はない。

女性を嫌っているわけではなくて、考えないということだと思います。人生の中で、ジェンダーによっては、考えもしないというものがあるでしょう?その一つが、候補者を女性にするということ。政治に関わった人は、自分以外みんな男性ですから、その意識すら芽生えてこない。

だから、まずは党本部の役員に女性を増やしました。その次は立候補者、立候補予定者を育成するための塾を作った。ここまでスタンバイできたので、あとは地方組織である自民党県連の選考委員会の規定で、3分の1を女性にしたい。選考委員会に一定の割合で女性がいれば、女性の候補者もアリだと、その切り替えができると思っています。

――閣僚は民間からも登用する意欲を示しています

最近は民間人を登用していませんが、全然、私は登用することに違和感がなくて。これまでも川口順子さん(※2000年に民間から環境庁長官に任命)や堺屋太一さん(※1998年、民間人閣僚として経済企画庁長官に就任)、高原須美子さん(※1989年に民間女性として初めて閣僚に就任)などもいる。

私は当選2回で郵政大臣として初入閣しましたが、若手国会議員もできると思います。

女性閣僚を半分にすると言うと、あなた方のような割とジェンダー意識が強い人からも驚かれるんですが、そこが問題だと思います。「できない」と言われるけれど、全然、できることですよ。閣僚の半分というと多くても10人程度。そんなに荒唐無稽なことは一切言っていない。

能力という言い方もあまり好きじゃないんですが、女性議員にも民間女性にも、専門性を極めている女性はたくさんいると思っています。 

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野田聖子氏
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

――自民党議員は9割が男性です。党内でどう説得していくのでしょうか

もう変革しなきゃ、ということに尽きると思います。世界にどれだけ遅れをとってるんだと。

やっぱり、わかっていても、動きたくないのね。変えるということは怖いことだから。

変えたいと思ってても、自ら言えない男性議員もいっぱいいると思います。男性から女性に変えるというのは、すごく大きなパラダイムシフトなので。その代わりに私が、ある意味のマインドチェンジャー、ゲームチェンジャーになろうと。ものを言えない男性議員のためにも頑張ろうと思っています。

――女性の政治・社会進出には自民党内では先進的ですが、一方で、自民党の杉田水脈議員が性暴力被害者への支援をめぐって「女性はいくらでもウソをつける」と発言した問題では、フラワーデモの抗議署名の受け取りを拒否しました。そうした対応に落胆した人も多かったと思いますが、見解を改めて聞かせてください

以前申し上げた通り、署名には「議員辞職を求める」と書かれていて、私にはそんな権限はないですから。私達は杉田議員をしっかり叱責しましたし、やはりいち国会議員として言葉を気をつけろと。それ以降はおそらく反省して、(心を)入れ替えていると思うので、その結果を見てほしいと思いますね。

 

同性婚に「賛成」 多様性の第一歩には選択的夫婦別姓制度

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野田聖子氏
Jun Tsuboike / HuffPost Japan

――同性婚の法制化についてはどのように考えていますか?

賛成か反対か、2択で聞かれれば、賛成です。賛成の理由は、法律をつくることによって、いま不足していることが解消されるなら、立法の意味があるからです。

ただ私は、選択的夫婦別姓をちゃんとやらないと、多様性の第一歩は進まないとも思っています。

――同性婚よりも「先」に選択的夫婦別姓ということですか?

同時でもいいですが、選択的夫婦別姓については法務省で25年以上前に提案していて、私はそれをしっかりやりたいと思っています。

菅総理がかつて選択的夫婦別姓に前向きな立場だったので、反対派の人たちがやおら問題意識を持って、菅政権に入って自民党内でようやく議論が始まりました。安倍政権の時は議論すらしないという方針でしたから。

ようやく問題が顕在化して、それぞれ賛成派と反対派が集う場ができた。

――導入に向けて前向きに進んでいると?

そうですね。賛否が見えることはすごく大事で、今までは賛否どころか、議論の場すらなかったんですから。おそらく総選挙が終わってからじゃないと、議論はできないと思います。

――総裁選も終盤に入りました。改めて意気込みや、出馬されてから気づきはありましたか?

手応えはあります。

今回、私がずっとライフワークにしていた「こどもまんなか」という世界初のパラダイムシフト政策をやっと発表できました。

本当はもっと前の総裁選挙からやりたかったんだけど、ずっと出られなかったので。自民党の中でもほとんど取り上げてこなかった子供たちのこと、マイノリティのこと、多様性のことを、この総裁選を通じてとにかく伝えることができたというのが私にとっては大きいですね。

私が出るまでの間、3人の候補者は「こども庁」の「こ」の字もありませんでしたが、ようやく岸田文雄さんと河野太郎さんはこども庁を作ると言ってくれました。高市早苗さんは駄目だったけれど。それでも4人のうち3人が作ると宣言して、実現可能性が高くなった。

「こどもまんなか」の司令塔ができれば、オールドメディアも取り上げざるを得ないですし、ようやくこれまで端っこにあったポテンシャルのある政策が自民党のセンターに来ることができた。総裁選に出た意義は非常にあったと思います。

 

インタビューは9月26日、野田聖子氏事務所で実施しました。ハフポスト日本版は自民党総裁選の4候補(河野氏、岸田氏、高市氏、野田氏)に取材を申し込んでおり、現時点で野田氏が個別インタビューに応じています。16日には、河野氏へのグループインタビューに参加しました。

(聞き手:ハフポスト日本版ニュースエディター 生田綾、小林豪、田口雅士 写真・動画撮影:坪池順