止まらぬ気候変動。危機を最小化するには、何から始めればいいのか?

台風の季節に「気候危機」と「気候正義」について考えます【ライブ配信】
|

猛スピードで壁に激突する車、地上30メートルの高さに吊り上げられた車。

人命を守るため、自動車メーカーが衝突試験などで性能を試す「安全テスト」の数々。その究極のテストとは何か。

問いかける男性の背後で、氷床が崩れ落ちるーー。

 

これは、今年3月にボルボが公開した動画です。

呆然とする男性の表情が映った後には、「Climate change is the ultimate safety test(気候変動は究極の安全テストだ)」というテロップが流れます。

刻々と進行する気候変動は、どんなに人為的に作られた「危険なシチュエーション」よりも危険な、私たち人類が直面する危機だといっても過言ではありません。

この究極の「テスト」をくぐり抜けることができるかどうかは、今後の私たちの行動にかかっています。

Open Image Modal
2019年9月20日、イギリスのロンドンで開催されたグローバル気候ストライキには数万人の若者たちが参加し、気候変動への対策や気候正義の実現を訴えた。
Kristian Buus via Getty Images

世界各地で熱波や豪雨による山火事や洪水などの気候災害が人々の命や生活を脅かす中、8月に公表された国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」の第6次報告書では、こうした異常気象を引き起こすとされる地球温暖化の原因となっているのは人間の活動であることは「疑いの余地がない」と強い表現で結論づけられました

66カ国234人の科学者たちによって作成された、世界中の科学的知見がつまったIPCCの報告書が示すのは、「もう後がない」ということです。

 

私たちはどのようにこの難局を乗り越えればいいのでしょうか?

9月のハフライブでは、台風の季節に「気候危機」について考えます。

 

「気候危機」が脅かすのは誰の命か?

気候危機について考える際に忘れてはならないのが、「気候正義」という視点です。

気候変動は、科学や気象の問題であると同時に「格差」や「不平等」の問題でもあります。 

世界全体のCO2排出のうちの70%もの量が、上位10ヵ国によって占められているというデータもある中で、その代償を払わされている途上国、貧困層の存在があるのです。

Open Image Modal
マダガスカルの人里離れたフェノアイボ村で、3年続く干ばつによって乾いた川床に掘られた水穴のそばに座り込む子どもたち=2020年11月
via Associated Press

気候変動による気象災害で住む場所や食料を奪われ、それでも住む場所を変える経済的余裕もない。

例えば、アフリカの島国マダガスカルでは、気候変動が原因とされる干ばつにより114万人以上が深刻な飢餓に苦しんでいると、国連世界食糧計画(WFP)のビーズリー事務局長が警告しました。

ツケを支払うのは、将来世代も同じです。

ユニセフ(国連児童基金)は、『気候危機は子どもの権利の危機である』と指摘しています。

国家間に横たわる「不正義」と、世代間に横たわる「不正義」。番組では、この2つの「気候正義」に注目します。

Open Image Modal
気候変動のリスクを受けない国はなく、日本も「Midium-High(中の上)」のリスクが指摘されています。 世界の22億人の子どもの約半数にあたる約10億人の子どもたちが、「極めてリスクが高い」とされる33カ国で暮らしています。
UNICEF (2021)

激甚化する気候災害、もう後がない

2021年の夏、世界各地を襲った気候災害の数々。今すぐに温室効果ガス排出削減のための「大胆な努力」を実行しなければ、気候変動によって確実に地球は姿を変え、人間が築いてきた社会や経済のシステムも崩壊してしまうーー。

様々なデータが同じ種類の警鐘を鳴らしています。

気候変動のカーブを少しでも緩やかにしていくために、私たちは何から始めればいいのでしょうか?

冒頭に紹介したボルボは、2030年までに生産・販売するすべての車をEVにすることを宣言しています。動画の最後は「今すぐに始めます」というメッセージで締めくくられています。

Open Image Modal
ギリシャの山火事=2021年8月8日
AP Photo/Petros Karadjias

「気候危機時代、私たちはどう生きる?」

一緒に考えるのは、Z世代の環境活動家、気候変動をめぐる国際的な議論に詳しいジャーナリスト、そして「気候変動」に哲学のアプローチで問題提起する法哲学者の3人のゲストです。

鹿児島大2年の中村涼夏さんは2019年、高校3年生の時に、グレタ・トゥーンベリさんが発起人となった若者の運動「Fridays For Future(FFF)」に参加しました。現在はFFF Kagoshima/Japanのオーガナイザーとして活動を続ける中で、たくさんの課題を感じていると言います。

毎日新聞の八田浩輔記者は、そのグレタ・トゥーンベリさんに日本メディアで初めてインタビューを行いました。欧州の環境政策や気候ストライキの動きを取材する中で見えたことなどをお話しいただきます。

京都大学大学院地球環境学堂の宇佐美誠教授は、気候危機のような地球規模の問題を考える時には、「個人単位ではなく、社会をセクターに分けて何ができるかを考える必要がある」と提案します。

 

折しも、政権与党の総裁選や衆議院選挙も近づいています。

企業や業界、市民セクターや国家として、私たちは何から始めればいいのでしょうか?

気候危機時代を、私たちはどう生きるのか。みなさんの感想や質問もお待ちしています。