FPと考える、お金の増やし方。「預貯金が安全」20~30代への金融教育の遅れが、日本と世界の差を生んだ。

投資初心者のための「お金のきほん」【第1回】。ライフプランをまずは立てよう。
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「お金について考えよう」と言われたら、どんな気持ちになるだろう。増やすための投資・NISA・iDeCo…。聞いたことはあるが、何から手をつけるべきなのかと迷う人に。ファイナンシャルプランナー(FP)の高山一恵さんに、初心者向けの「お金のきほん」を聞いた。

 

20~30代の相談が増えた理由

こんにちは、FPの高山一恵です。近年、20~30代で、マネープランの相談に来る人が増えています。

「日本の景気は低迷し続けているようだ」

「少子高齢化が進んでいるけれど、自分が老後を迎えるころには年金制度はどうなっているのだろうか」

日々の仕事に忙しくて、ニュースを気にする時間があまりなくても、いろいろなキーワードが耳に入ってくるはず。漠然とした不安にさいなまれ、それを解きほぐす方法が分からずに悩む人が多いのです。

ただ、お金について分からないことが多かったり、調べるのさえおっくうだと感じたりしてしまうのは、皆さんが「だらしないから」ではありません。そもそも、従来の日本では、お金の知識を身に付けるための教育が著しく不足していました。

実際、金融庁のデータで、ここ20年間(1998年から2018年)の日本と米国・英国の家計金融資産の推移を比べてみると、大きな差が付いています。

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金融資産額の比較
HuffPost Japan

特に、「運用リターンによる家計金融資産」の値は、米国は20年間で2.0倍に伸びているのに対し、日本は1.2倍にとどまっています。日本人は、持っている資産における現金・預金の割合が多く、預金の金利はほぼゼロに近いからです。効率的な資産形成ができていないといえます。

教育現場では2022年度からようやく、高校の家庭科の授業で「金融教育」が導入されることになりました。つまり今のビジネスパーソンは、主体的にお金と関わっていくにはどうしたらいいのか、さらにいえば自分の資産をどう形成していけばいいのか、ほとんど教わった経験がありません。だから、突然「よく考えてお金と付き合いなさい」と言われても、戸惑うのは無理もないわけです。

メディアから得られる情報は、「無駄づかいをしないこと」「だまされないこと」など消費者としての心構えや教訓に偏ったものが多いです。親から「預貯金が一番安全だと教わった」と言う20~30代の相談者もいますが、今は銀行に預けておくだけでお金が増える時代ではありません。

昔の常識は今の非常識――知識はどんどんアップデートしていく必要があります。今からでも決して遅くはありませんので、一緒に学び直していきましょう!

 

第一歩はライフプランを立てること

今回はまず、「どれだけお金を貯めたらいいのか分からない」不安への対処法をお伝えします。それは、ライフプランを立てることです。

自分に関わりそうな大きなライフイベントごとに、ざっくりとしたもので構わないので、どれくらいの金額が必要か見積もってみましょう。一例として下表に、あくまで目安ですが、金額の例も示してあります。

例えば、「結婚」の金額例は、数十人を招くホテルウエディングの場合です。よりコンパクトな挙式会場を選ぶ場合は、金額をより抑えることもできるでしょう。

また、「出産」に関して、分娩費用は約50万円が目安です。健康保険に加入していれば、「出産育児一時金」が支給されるため、ほとんどはそれでまかなえます。ただ、無痛分娩を選択する場合などは費用が上乗せになりますし、出産後のベビー用品やミルク・おむつの購入費用なども継続的にかかってくるので、「ざっくり50万」と意識しておいてもいいと思います。

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ライフプランをイメージしてみるための表。あくまでも一例です。
高山一恵さん案に基づき、ハフポスト日本版作成

この表はあくまでも一例です。結婚や出産をするつもりがない人や様々な理由でできない人、あまりに先のライフイベントについて考えるのはどうしても難しいと感じる人は、資格取得や旅行など、1~2年以内の目標にできそうな小さなイベントを設定してみるのがおすすめです。

まずは大まかなイメージをつかんでから、自分の希望に合わせてこまかな金額を調べ、プラスしたり、差し引いたりしていきましょう。

お金を「貯められる人」と「貯められない人」の違いは、「いつまでに、何のために貯めるか」という目標が明確になっているかどうかです。人生の「やりたいことリスト」をつくっていくイメージで、まずはあまり思い詰めずに挑戦してみてください。具体的な貯め方・増やし方のコツは、今後の連載の中で紹介していきます。

お金は本来、人生を豊かにするための手段です。漠然とした不安に駆り立てられて、蓄えることが目的化してしまうのはもったいないこと。「何のために貯めるのか」がはっきりしないと、挫折もしやすくなります。一歩一歩で構わないので、少し先の「ありたい自分」を思い描きながら、現在地を確認する癖をつけましょう。

(取材・文:加藤藍子@aikowork521 編集:泉谷由梨子@IzutaniYuriko

 

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高山一恵さん
高山さん提供

高山一恵さんプロフィール

Money&You取締役、ファイナンシャルプランナー。2005年に女性向けFPオフィス、エフピーウーマンを設立。10年間取締役を務めた後、現職へ。女性向けWebメディア「FP Cafe」や「Mocha(モカ)」を運営。全国での講演活動、執筆・相談業務も行う。著書は『やってみたらこんなにおトク! 税制優遇のおいしいいただき方』(きんざい)、『はじめてのNISA &iDeCo』(成美堂出版)など。