東京オリンピック中に迎える8月6日の広島原爆の日、大会組織委員会や国際オリンピック委員会(IOC)は黙とうなどを呼びかけない方針を示している。
これに異を唱え、IOCや組織委に対応を求め続けているのが前広島市長の秋葉忠利氏だ。
ハフポストの取材にメールや文書で応じ「『平和の祭典』としてのオリンピックを日本で開く意味と、オリンピックの存在意義そのものを自己否定したことになる」と訴える。
広島に原爆が投下された8月6日の朝8時15分、オリンピック会場で黙とうをするよう求める署名活動をchange.orgで実施。5日時点で1万6900筆が集まっており、IOCや組織委に送ったという。
広島、長崎訪問したのになぜ...
署名ページでは、IOCトーマス・バッハ会長と組織委の橋本聖子会長の広島訪問に言及。コロナ禍で反対の声があった中での訪問を踏まえて、日本で開かれるオリンピックとして、平和の象徴である「広島・長崎」や被爆者らのメッセージを発信する必要があると訴えている。
ところが、秋葉氏の願い虚しく、黙とうを呼びかけないというIOCの方針が組織委を通じて8月1日に明かされた。
この方針に対して秋葉氏は、日本開催の意味や「平和の祭典」というオリンピックの存在意義の否定になると指摘。「おかしいと感じる人が圧倒的多数」と訴えている。
それでも、IOCが有観客から無観客に方針変換したことを例に「圧倒的多数の人々の8月6日への思いを届けることで、方針変更で黙祷が実現する可能性はゼロではない」と期待する。3日付で、署名のデータを添えて、黙とうの実施を求める書簡を組織委やIOC宛に送付したという。
秋葉氏は、ハフポストに寄せた文書で、黙とうしないIOCの方針に対して「自ら首を絞めている」と訴えている。
「8月6日がいかに大切な日であるのかは理解しているはず。それが分かっているから、無理を押して広島まで来たのではないか。だから、会長として果すべき責任が問われている」と強調している。
この8月6日、広島に原爆が投下された朝8時15分に開催中の予定である競技は、女子ゴルフと男子50km競歩。競技の中断は難しく、競技中のアスリートの示威行為はルール上は認められていない。
秋葉氏は、IOCの方針転換に加え、選手や大会関係者が自主的に黙とうをしてくれるのではと期待をかけている。
そうすることで「『平和の祭典』としてのオリンピックという看板は下ろさなくても済むことになる」と考えている。
秋葉氏は1999年から2011年まで広島市長を務めた。
市長時代に、長崎市と共同で、今回のオリンピック2020年大会の招致に名乗りをあげていた。市民の反対が強かった上、1都市開催を原則とするIOC側が共催に否定的で採用されず、広島でのオリンピック構想は消えた。