東京オリンピックは大坂なおみ選手や八村塁選手ら、「世界」にルーツを持つ日本代表が多数出場しているが、日本にルーツを持つ海外選手も数多く存在する。活躍が光るその顔ぶれの一部を紹介しよう。
■ジェイ・リザーランド選手(競泳男子/アメリカ)
7月25日に行われた男子400m個人メドレーで銀メダルに輝いた米国代表のジェイ・リザーランド選手(25)は父親がニュージーランド人、母親が日本人だ。
NHKなどによると、三つ子の兄弟の末っ子として1995年に兵庫県尼崎市で生まれ、3歳まで日本で暮らした。実家での会話のほとんどは日本語だったといい、流暢な関西弁を話す。2016年の五輪リオデジャネイロ大会では同種目で5位入賞だった。
関西地方には今も祖母たち親戚が暮らす。25日のレース後の会見で「母方の親族も本来なら観客席で応援できたが、今は自宅にいます。最後の100メートルは特に彼らの応援を感じていました」と話した。
■ナイジャ・ヒューストン選手(スケートボード男子/アメリカ)
東京大会から五輪種目に加わったスケートボードの男子ストリートで7位入賞した米国代表のナイジャ・ヒューストン選手(26)は、父方の祖母が日本人だ。
1994年、カリフォルニア州生まれ。自身の公式サイトなどによると、父親に教わって5歳でスケートボードを始めるとすぐに頭角を現し、7歳でスポンサーを獲得した。世界選手権を4度、世界最高峰の競技大会「Xゲーム」を12度制覇するなど、世界ランク1位のスケートボード界のスーパースターだ。
米国で黒人男性が警官に暴行され死亡した事件を受けて「ブラック・ライブズ・マター(BLM)」運動が広がった2020年6月には、父親と肩を組んだ写真などをインスタグラムに投稿し、「僕の父は黒人であり日本人で、母は白人だ」「僕は25%だけ黒人かもしれないが、僕は黒人だし誇りに思う」と綴っていた。
■スカイ・ブラウン選手(スケートボード女子/英国)
英国史上最年少の13歳で夏季五輪に出場するスカイ・ブラウン選手は、父が英国人で、母が日本人。「女子パーク」種目の世界ランクは3位で、8月4日の競技日にはメダル獲得が有力視されている。
毎日新聞などによると宮崎県高鍋町で生まれ育った。現在は米国在住だが、1年の半分は日本で過ごし、日向灘でサーフィンも楽しむ。
2020年6月にはハーフパイプで練習中にバランスを崩して高所から転落し、頭蓋骨や腕を骨折する大けがを負ったが、その後、2021年7月の「Xゲーム」で優勝するなど、完全復活した。
開幕前に収録された五輪公式ポッドキャストでは、「私は半分日本人だから、父の国を代表して母の国に行けるのが、とてもクールだと思う」「オリンピックで女子スケートボード選手の限界を押し広げたい」と話した。
■國米櫻選手(空手女子/アメリカ)
東京五輪で初めて正式競技に追加された空手。8月5日に行われる「形(かた)女子」に米国代表として出場する國米(こくまい)櫻選手(28)は、日本人の両親の下、ハワイ州ホノルルで生まれた。
7歳で空手を始め、14歳で米国ジュニア代表に選出。大学は同志社大学に進学し、その後は早稲田大学大学院で国際関係学を修めた。全米大会で8度の優勝を誇る。
日本代表を目指さなかった理由について、「ハワイで空手を始めて、米国チームのアスリートを仰ぎ見てきた。『選ばなくてはいけない』という局面がこれまでなく、自然に14歳の頃から米国を代表してきた」とアジア系米国人の人権団体の取材に答えている。
また2021年4月には、米国で深刻化するアジア系住民への人種差別を受けた経験をインスタグラムで公表。投稿された動画では、白人とみられる男性から「負け犬」「国へ帰れ」「中国人」などと罵倒される様子が映っており、國米選手は、「これは誰にでも起こりうること。おたがい思いやりと敬意を持とう」と綴った。
このほか、五輪開会式でカナダの旗手を務めた7人制ラグビーのネイサン・ヒラヤマ選手(33)は日系4世。2021年6月の全米女子オープンを史上最年少で制した女子ゴルフの笹生優花選手(20)は母の祖国フィリピン代表として出場する。