サッカー女子日本代表選手が7月24日、東京五輪のイギリス女子代表とのグループリーグ第2戦の開始直前、片膝をつくアクションを通して人種差別に抗議した。アメリカのスポーツ界を中心に広がった行為で、黒人への暴力や差別への抗議の意思が込められている。
「人種差別について考えるきっかけになった」
今回の東京オリンピックでは、サッカー女子選手などが試合前に片膝をつく行為を行なっている。
サッカー女子のイギリス代表は、アクションを行うことを大会前に表明。競技初日の7月21日、チリ戦の試合開始直前に、選手たちが実際に片膝をつくポーズをした。
日本代表選手もその動きにつづいたかたちだ。
報道各社によると、イギリス代表へのリスペクトの意味も込めて、片膝をつくことを決めたという。
毎日新聞によると、日本代表の熊谷紗希主将は試合後の記者会見で、「チーム全員で話し、人種差別について考えるきっかけになった。英国のアクションへのリスペクトの意味もあって、やろうと決めた」と話した。
「政治的な行動」はNGじゃなかったの?→ IOCがルールを緩和していた
オリンピックでは歴史上、アスリートが政治的な意見表明をすることは禁じられてきた。
IOCは五輪憲章50条で、「いかなる種類のデモンストレーション」や「政治的なプロパガンダ」などを禁止している。
しかし、今回の東京オリンピックでは方針を変え、片膝を立てる行為などの『意見表明』が事実上容認された。一方で、表彰式や開閉会式、選手村、試合中などの場でこうした行為をすることは、引き続き禁じられている。違反した場合は処分の対象となる。
BBCによると、短距離走のイギリス代表として出場するアッシャー=スミス選手は、アスリートによる抗議活動の“全面解禁”を求めて声を上げた。
スミス選手は、「抗議すること、意思表示することは、基本的人権だと私は思っている」と述べたという。
Black Lives Matter運動で広がった抗議アクション
片膝をつくポーズは、黒人への暴力や差別に抗議する「Black Lives Matter」運動の高まりとともにスポーツ界に広がった。
抗議の始まりは、2016年。アメリカプロフットボールリーグ(NFL)の選手らが国歌斉唱時に起立を拒否し、膝をつくことで人種差別に抗議した。
このアクションを始めたコリン・キャパニック氏は「黒人や有色人種を抑圧するような国の国旗に敬意は払えないので起立はしない」と訴え、同調する選手らが後に続いた。
2020年には、ジョージ・フロイドさんが白人警官に首を押さえつけられて死亡した事件を発端とし、Black Lives Matter運動が世界に拡大。片膝をつくアクションもスポーツ界に広がっていった。