“傷だらけの”オリンピック。招致から開幕までの10年は、撤回や辞任の連続だった【振り返り】

国立競技場建設案の白紙撤回⇒エンブレム盗作疑惑⇒JOC会長の贈賄疑惑⇒森会長の女性蔑視発言⇒容姿を侮辱する開会式の企画案⇒開会式の楽曲担当「いじめ加害」告白の過去
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五輪をめぐる問題の数々
時事通信社 / Renters / 組織委員会 / JSC / Getty Images

東京オリンピックが開幕する。

東京都が招致の意思表明をした2011年からちょうど10年。

国立競技場の建設計画の白紙撤回に始まり、エンブレムのデザイン盗用疑惑や新型コロナで1年延期、森前会長の女性蔑視発言。

数々の問題が噴出し、撤回や辞任の連続だった。これまでの歩みを振り返る。

石原慎太郎都知事、招致の意思表明(2011年)

始まりは2011年6月。当時の石原慎太郎東京都知事が、東京オリンピック・パラリンピック招致の意思を表明した。9月には招致委員会が発足し、招致活動が始まった。

東京での五輪開催が決定(2013年)

そして2013年9月。東京が2020年大会の開催都市に決まった

ブエノスアイレスで開催された国際オリンピック委員会(IOC)総会で、当時のジャック・ロゲIOC会長が「東京」と読み上げたシーンは、メディアで繰り返し放送された。

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「TOKYO 2020」と書かれたカードを見せるロゲIOC会長(当時)
picture alliance via Getty Images

安倍晋三首相(当時)は、日本開催決定後のスピーチで、東日本大震災で原発事故が起きた福島について「状況はアンダーコントロールだ(the situation is under control)」と発言し、今もなお物議を醸している。

2014年1月には組織委員会が発足。招致に携わった森喜朗氏を会長に、大会に向けた準備がスタートした。

しかしそこから、数々の問題が噴出することになる。

国立競技場の建設計画、白紙撤回(2015年)

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計画の経緯についての資料で示されたザハ・ハディド氏の案
独立行政法人 日本スポーツ振興センター

最初は、2015年の国立競技場の建設計画の白紙撤回。

大会に向け、国立競技場は約1300億円程度の予算で建て替えられる予定だったが、コンペで選ばれたザハ・ハディド氏のデザイン案は3000億円以上かかることが判明した。

日本スポーツ振興センター(JSC)は、ハディド氏の案を白紙にした上で、1600億円規模のコンパクト案を練り直した。

だが、資材費や労務費の高騰などから、けっきょく2520億円にまで膨れ上がった。JSCが費用増の理由として「新国立競技場の特殊性」と説明したことには、疑問の声が上がった。

紆余曲折の末に完成した国立競技場は、新型コロナの影響で観客を迎え入れることができなくなった。

エンブレムの盗作疑惑⇒撤回(2015年)

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当初発表されたエンブレム
組織委員会

同じ2015年、次は大会エンブレムのデザイン盗作疑惑が発覚する。

組織委が採用した佐野研二郎氏のデザインに対して、ベルギー・リエージュ劇場のロゴと似ていると制作者から指摘があった。

エンブレムは、公募104点から審査委員会で選定され、「東京(Tokyo)」などの「T」をモチーフに日の丸やハートの鼓動や表した赤い円もあしらった。

佐野氏は指摘に対して「作品は全く知らない」とコメント。記者会見でも「全くの事実無根」と盗作疑惑を否定した。組織委やIOCも「問題ない」という見解を示した。

だがその後、佐野氏がコンペ応募時に提出したエンブレム原案が「ヤン・チヒョルト展」のロゴと似ていると別の指摘が寄せられた。エンブレム展開案での画像の無断使用も明らかになった。

組織委は記者会見で、盗用はなかったという見解を示した上で、佐野氏から取り下げの提案があったと説明。「国民の理解を得られない」として撤回を決めた。

デザインを新たに公募し、応募総数1万4599作品から選ばれた、市松模様の今のエンブレムに決まった。

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大会エンブレム。オリンピック(左)、パラリンピック(右)
組織委員会

JOC会長、贈賄疑惑で会見(2019年) 

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JOC竹田恒和前会長
Rio Hamada / Huffpost Japan

2019年1月。日本オリンピック委員会(JOC)の竹田恒和会長が贈賄に関与した疑いがあるとして、フランス司法当局が捜査を始めたと報じられた

東京大会の招致委員会がシンガポールのコンサル会社に振り込んだ約2億2000万円をめぐって、当時理事長だった竹田氏が贈賄の疑いで捜査対象になった。

不正の疑惑は2016年に明るみに出たが、JOCが設置した外部調査チームは当時、コンサル会社との契約に違法性はないと結論付けていた

竹田氏は報道を受けて記者会見を開き「契約に関していかなる意思決定プロセスにも関与していない」と改めて疑惑を否定。質疑応答を受け付けずその場を去り、会場は紛糾した。

疑惑によって追い込まれる形で、任期満了の6月に退任した。

マラソンの札幌移転(2019年)

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東京五輪でマラソンの発着地となる大通公園=2019年11月19日、札幌市中央区
時事通信社

さらに同じ年には、マラソンと競歩の会場が札幌に変更された。

暑さを問題視したIOCが会場変更計画を発表すると、小池百合子東京都知事はコメントで「突然の変更に驚きを感じる」と不満を露わにした。

その後の協議で、会場変更に伴う費用は東京都に負担させないことや、今後他の競技の会場変更はしないことなどを条件に、小池都都知事はIOCの決定を容認。「合意なき決定です」と述べた。

新型コロナで1年延期(2020年3月)

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緊急事態宣言
Huffpost Japan

2020年3月、新型コロナ感染拡大の影響で、オリパラ史上初となる大会の延期が発表された

この時期、日本や世界規模の感染拡大から開催を望まない声が相次いだほか、カナダのオリンピック・パラリンピック委員会は選手団を派遣しないと発表した

中止論も出ていたが、日本政府の選択は1年延期だった。延期決定のすぐ後に、東京など7都府県に緊急事態宣言が初めて発令された

その後もコロナは終息せず、2021年3月に海外観客の受け入れを断念し、7月に首都圏や福島などでの無観客開催が決定。これまでに4回の緊急事態宣言が発令されたが、タイミングや期間、政府のコロナ対応が五輪開催ありきではないかと批判が集まっている。

森前会長の女性蔑視発言(2021年2月)

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森喜朗氏の謝罪会見(2月4日撮影)
Reuters

組織委の森喜朗前会長の女性蔑視発言は、記憶に新しい。

2021年2月のJOC評議員会で「女性がたくさんいる会議は長くなる」と発言し、批判や辞任を求める声が相次いだ。

その場にいただれも森氏の発言をとがめず、63人いる評議員で女性が1人だけというジェンダー格差も問題視された。

森氏は記者会見で発言を謝罪・撤回したが、進退や蔑視発言について追及する記者に対して声を荒げ、反省した様子はなかった。さらなる批判を浴び、森氏は会長を辞任した。

後任選びでは、引責辞任する森氏の一存で、選手村の川淵三郎村長に会長就任を打診したことが明るみになった。”川淵氏案”は幻に終わったが、組織委のガバナンス体制が問題視された。

後任にはオリパラ担当大臣だった橋本聖子氏が就任した。

容姿を侮辱する企画提案、開会式の統括が辞任(2021年3月)

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左から渡辺直美さん、佐々木宏さん、MIKIKOさん
時事通信社

開閉会式をめぐる問題も噴出した。

演出の総合統括だったクリエイティブディレクター佐々木宏氏が、お笑いタレント渡辺直美さんの容姿を侮辱するような演出を提案していたことが報道で発覚

佐々木氏は組織委を通じて「⼤変な侮辱」「ダジャレだった」と謝罪し、辞意を表明した。渡辺さん本人も所属事務所を通じて「聞いていた演出と違う、驚き」とコメントした

さらに、佐々木氏が総合統括に就任後、開閉会式の責任者だった振り付け師MIKIKO氏が「演出チームから排除された」と報じられた

MIKIKO氏の企画を乗っ取ったと伝える記事に対して、佐々木さんは「事実ではない」と否定。佐々木氏の後任は発表されず、本番まで数カ月前に“トップ不在”となった。

開会式の楽曲担当「いじめ加害」告白の過去(2021年7月)

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小山田圭吾氏のインタビューが掲載された2誌
Huffpost Japan

7月14日に東京オリンピック開会式の演出メンバーが発表されると、楽曲担当として名を連ねたミュージシャン小山田圭吾氏が、小中学校時代に「いじめの加害者だった」と告白する過去の雑誌インタビューが掘り返された。

内容への批判や「開会式の演出にはふさわしくないのでは」という意見が上がり、小山田氏はTwitterで謝罪声明を発表。事実と異なる内容も含まれていると指摘した上で、「本人に直接謝罪したい」などとコメントした。

大会組織委もコメントを出し、小山田氏の発言を「不適切だ」と批判する一方、留任の意向を示した。

批判は止まず、小山田氏は再び声明を出し、辞任を申し出たことを報告した。

問題のインタビューの聞き手だった『ロッキング・オン・ジャパン』編集長も声明で謝罪。自身の取材姿勢や掲載判断について「いじめという問題に対しての倫理観や真摯さに欠ける間違った行為」と振り返った。

また、同じく小山田さんがいじめに参加していたことを語っていた『クイック・ジャパン』を発行する太田出版も謝罪した