ウイグル、外国人技能実習…。繊維業界がサプライチェーンの人権リスク管理、指針を作成へ

日本の繊維業界は今後1年かけて指針をつくる方針です。国内外の強制労働問題などが背景にあるようです。
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アパレルなど繊維産業のサステナビリティ(持続可能性)を議論する経済産業省の検討会は7月12日、人権侵害のリスクを管理する「人権デューデリジェンス(人権DD)」について、ガイドライン(指針)の策定を求める報告書をまとめた。これを受け、業界団体の⽇本繊維産業連盟は1年ほどかけて指針を作る方針だ。

政府の検討会がサプライチェーン上の人権対策強化を業界に求めるのは異例。強制労働の存在が疑われている中国・新疆ウイグル自治区の「新疆綿」をめぐり、ユニクロなど日本企業にも影響が出始めていることが背景にある。

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イメージ写真
Achim Prill / EyeEm via Getty Images

 検討会「指針策定、促していくべき」

検討会は、学者や業界関係者らで構成され、2021年2月から計6回の会合を開催した。今回まとめた報告書では、「日本企業の中には、欧米企業と取引をする際には(人権)DDの実施が求められるケースが増えているとの声が聞かれる」と指摘。消費者意識についても「商品を購入する際にトレーサビリティや環境負荷を考慮するといった傾向が高まっている」との見方を示した。

そのうえで、繊維業界において「国際機関とも連携しつつ、企業がよりDDに取り組みやすくするためのガイドライン策定などを促していくべきではないか」と提言。サプライヤーの生地メーカーなどには「国際認証取得の必要性を周知していくべきでは」と訴えた。

また、劣悪な労働環境が指摘される外国人技能実習制度にも言及し、「業界や企業に対し、制度の法令遵守等の徹底を求めていくべきではないか」と是正を求めた。

日本政府は2020年10月に策定した「ビジネスと人権の行動計画」で、企業に対して人権DDを導入するよう期待を表明していた。検討会がガイドラインの策定を求めたのは、行動計画から一歩踏み込んだ対応となる。

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ユニクロの店頭に掲げられた看板=東京・銀座
時事

ユニクロは仏当局の捜査対象に

繊維産業の人権問題をめぐっては、強制労働が疑われている「新疆綿」を使用したとして、ユニクロの綿製シャツがアメリカの輸入禁止対象に。7月にはフランス検察がユニクロの現地法人に対し捜査に着手したことが明るみに出た。

ユニクロを展開するファーストリテイリングは「生産過程で強制労働などの問題がないことが確認されたコットンのみを使用している」とのコメントを出している。

ただ、6月の主要7カ国首脳会議(G7サミット)でも、各国は「個人を強制労働から守り、グローバルなサプライチェーンが強制労働の利用に関わらないことを確保する」と宣言し、日本は取り組みの強化に賛同している。

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日本アパレル・ファッション産業協会の大澤道雄理事長
ハフポスト日本版

 業界団体「海外進出に指針必要」

指針作成に乗り出す⽇本繊維産業連盟(東京都中央区)は、国内の繊維関係28団体などが加盟する。

同連盟の担当者はハフポスト日本版の取材に対し、「繊維産業は国内市場が飽和状態とも言われるが、海外に進出する際には原材料の調達先までチェックを求められる可能性がある」と、指針の必要性を述べた。

一方、連盟傘下の「日本アパレル・ファッション産業協会」の大澤道雄理事長(オンワード樫山・会長)は、6月下旬の記者会見で「サプライチェーンに関する課題解決については協会として発信し、会員企業を啓蒙していく」と語ったが、「個々の企業の調達について、(協会が)とやかく言うことはできない」とも話した。

積極的に海外展開をするユニクロや無印良品は同連盟には加入しておらず、人権DDの取り組みを業界として徹底していくことの難しさを印象づけた。