MLBオールスターゲーム2021が、日本時間の7月14日に開催される。
年に一度の夢の球宴にMLB史上初めて“投打の二刀流”で選出され、新たな歴史を作ったのがロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手だ。
オールスターでは「特別ルール」でアメリカンリーグの「1番・DH」で先発出場しながら、投手としても「先発登板」する。
打者、そして投手として躍動する姿に多くの野球ファンが心を奪われた。2021年のシーズン前半の主役は、間違いなく彼だったと言ってよいだろう。大谷選手のここまでの歩みを改めて振り返る。
日本人初の「本塁打王」も夢じゃない
まずは「打者・大谷」から振り返る。日本時間の7月12日に行われた試合が終了した時点で、84試合に出場し打率は2割7分9厘、84本の安打のうち33本が本塁打だった。
本塁打数ランキングでは両リーグで単独トップに立っている。今シーズン初の本塁打は、4月3日の対シカゴ・ホワイトソックス戦だった。
そこから順調に本塁打を積み重ね、日本時間の7月8日の対ボストン・レッドソックス戦で32号を放ち、過去にヤンキースやエンゼルスなどで活躍した松井秀喜さんのMLBの日本人シーズン最多本塁打記録「31」をシーズン前半で塗り替えた。
2004年当時に松井さんが記録した31本は159試合目での達成だった。大谷選手が32号で記録を塗り替えたのは86試合目。いかに驚異的なペースでホームランを量産しているかが分かる。
松井さんはかつて所属していたエンゼルスを通じて、大谷選手に以下のようなメッセージを送った。
「シーズン32本塁打は、大谷選手のバッティングをもってすれば、ただの通過点に過ぎないと思います。大リーグでは私も長距離打者とは呼ばれたことはありましたが、彼こそが真の長距離打者だと感じます。さらに、大谷選手は素晴らしいピッチャーでもあります。大リーグの常識を変えた、唯一無二の存在です。今後もファンの方々や少年たちの夢を背負い、シーズンを乗り切って欲しいと思います。私も1人の野球ファンとして、楽しみにしています」
少々気が早いかもしれないが、仮に大谷選手がこのペースを維持しながらホームランを打ち続けた場合、1927年にベーブ・ルースが記録した「シーズン60発」に届く計算だ。
ちなみに、1927年の60本塁打は二刀流として知られるルースが打者に専念して生んだ記録で、シーズンを通じて二刀流でプレーを続けたまま60本を記録した選手は過去にいない。
松井さんが「唯一無二」と表現したように、大谷選手は今、まさに前人未到の挑戦の道半ばにいるのだ。
打者・大谷の「6月」が異次元だった
大谷選手の前半戦の本塁打で特筆すべきは、6月だった。
本塁打数を「月別」で見ると、4月が7本、5月が8本だったのに対し、6月は13本と2桁に乗せていた(※7月は日本時間12日の試合終了時点で5本)。
試合毎に見ていくと、6月は3試合連続ホームランが2度あり、また1試合に2本放った日も2度あった。6月の月間打率は3割9厘、23打点。安打数25のうち本塁打の割合は52%だった。文句なしの成績で6月の月間MVPに選ばれた。
二刀流で躍動する大谷選手について、Twitterでは「日本人初のホームラン王のタイトルも見たいから、打者に専念する姿を見てみたい気もする」と声が上がるなど、「打者・大谷」にかかる期待は膨らんでいる。
シーズン後半、目指すは「投手10勝」。なぜ?
続いて「投手・大谷」を振り返る 。打者として前述のような記録を残しながら、投手としての今シーズンは13試合に登板し4勝1敗。防御率は3.49。
日本時間7月7日の対レッドソックス戦の勝利で、記念すべき日米通算50勝の節目を迎えた。特に7日の試合では、四死球0と安定したピッチングを見せた。
打者としての評価のみならず、MLBオールスターでは選手間投票の「先発投手部門」で5位となり、MLB史上初めて“投打の二刀流”での選出となった。
シーズン後半、投手として6勝すれば2桁の10勝に届く。これを達成すれば、自身キャリアハイの成績になるのはもちろん、偉大な記録の「更新」も実現する。
“野球の神様”と称されるルースが過去に達成した「打者として2桁本塁打・投手として2桁勝利」という記録だ。ルース以来、これを達成した者はいない。
もちろん、時代が異なるため単純な比較が正しいかは分からないが、“投打の二刀流”の元祖であるルースは、ボストン・レッドソックスに所属していた1918年に打者として11本塁打・投手として13勝を記録している。
大谷選手はすでに30本以上の本塁打を放っているため、もし投手としてシーズン後半に6勝以上出来れば、このルースの記録を大幅に塗り替えることになる。
今の私たちは間違いなく、メジャーリーグの歴史と常識を大きく変えるかもしれない偉大なプレイヤーの歩みを目の当たりにしている。
シーズンの後半も、“SHOTIME”から目が離せない。