息子の進学サポートや訴訟業務もあって、1年ぶりに渡米した。
降り立ったNYは報道でみていたロックダウン時とは違い、マスクをしている人はそう多くはなかった。
アメリカではバイデン大統領が成人の約7割が独立記念日までに少なくとも1回接種する目標を掲げ、各州がこぞってワクチン接種を促している。無料でワクチン接種ができる上に、接種すれば宝くじ、商品券、野球のチケットが当たるという州もある。
また、5月中旬には12歳以上も接種できる体制が整って、9月からの新学期を前に子どもたちは長い夏休みを活発に過ごし始めている。
買い物のついでに薬局でワクチン接種
私も渡米してすぐにワクチンを接種した。
1回目はNYである。数千人規模が収容できる会場に軍隊が配備され、まるで映画のワンシーンかのようだった。ワクチン注射を打ち終えるとくじを渡されて一定の時間、その場で待てるような仕組みになっている。くじは当たらなかったけれど、ワクチン接種を促進する人の流れを作るうまい仕組みだなと思った。
2回目はノースカロライナで受けた。これがなんともユニークだった。なんとスーパーマーケットに併設されている薬局でも接種することができるという。
予約をしたいと尋ねたら、「なぜ?」と聞き返された。今ではワクチンの接種率もあがり、待つ必要もないというのだ。「それならば今すぐに」と申し出て待っていると、担当者がスーパーマーケットの買い物カートに消毒や注射器などを載せ、カートを押しながら現れた。
10分足らずで接種は終わり、15分程度は接種後の反応を確認するためスーパーマーケットに留まるようにとの指示であったが、薬局の前にいなくてもよいとのこと。私はスーパーマーケットで日用品を買って帰った。
あまりにも簡単で、気軽な、まるでクリーニングに出したスーツを取りに行くような感覚で拍子抜けしてしまった。
アメリカではこうした取り組みが功を奏しており、街ではマスクをしている人のほうが少なく、あくまで私見であるがNYでは3割程度、ノースカロライナでは1割程度ではないだろうか。
ホテルやレストランのスタッフは常時マスクをしているものの、街行く人はすがすがしいほどにマスクを外し、コロナ前のアメリカの風景に戻りつつある。
とはいえ、感染を気にかけ、他者を気遣う風潮はいまだ健在で、エレベーターが混雑しているとき等は「気になさるようでしたら一機見送ります」「私がこのエレベーターに乗っても問題はないでしょうか?」と声をかけあう光景が見られる。こうした気遣いが習慣的に行われているのだなと今回の渡米では感じた。
アメリカでは報道されていない東京の現状
ところで、日本ではまもなく高齢者以外のワクチン接種の予約が始まると聞いた。東京オリンピックの話題に絡めて日本の話をすることがあるのだが、アメリカ人に「日本ではまだ一般の人々は接種できていない状況にある」と話すと多くの人が驚く。
アメリカ人は、日本でもアメリカと同じペースで接種が進んでいると思っていたようだ。衛生的、先進的な国である日本でなぜ?という反応を得ることも珍しくない。
まして、東京オリンピック開催も日本ほど頻繁に報道されておらず、やや盛り上がりに欠けているような印象もある。
東京オリンピック開催前に帰国の途につく予定であるが、日本に到着したら目の前には「マスク無しの光景」が広がることを夢見ている。
(文:ライアン・ゴールドスティン)