東京都に同性パートナーシップ制度を求める請願が、都議会本会議で6月7日、全会一致で趣旨採択された。都議会選の投開票は7月4日で、この日の本会議が最後の定例会だった。
日本で同性カップルは結婚ができない。しかし自治体が「同性パートナーシップ制度」を創設することで、同性カップルの関係が公的に認められ、一部の権利を保障することができる。
都内では12の市区が同性パートナーシップ制度を導入しているが、東京都が制度を導入すれば、都内の制度がない地域で暮らす同性カップルも家族として認められるようになる。
請願を提出した「東京都にパートナーシップ制度を求める会」は都議会の議決を受けて記者会見を開き、請願が採択されたことへの喜びとともに、制度の早期実現を訴えた。
会の発起人で代表の山本そよかさんには、10年間交際している同性パートナーがいる。制度があることで、病院などでも「家族として示せる安心感がある」と話した。
「これまでずっと同性を愛するということで未来が見えなかったり、生きる希望を失ったりしたこともたくさんありました。その中で、こうして個人のあり方を社会が認めてくれることを受けて勇気が出ました」
「パートナーシップ制度は当事者の心と命を救うものと考えています。具体的な取り組み内容はもちろん、性的マイノリティに対して真摯に向き合い、適切なスピード感を持って取り組むことが当事者やその家族の生きる希望へつながると感じています」
「プライドグループ」リーダーの竹内勝人さんも「最愛のパートナーがいますが、今の行政ではパートナーシップ制度がないため、他人扱いにされてしまいます。私自身、今大きい手術を控えていて、今回のパートナーシップ制度の趣旨採択、小池都知事が導入に対する意向表明をしたということは大変嬉しく思います」と話した。
「パートナーシップ制度の導入だけがゴールではありません。差別の完全解消を今後もみんなで目指していきます」
同性パートナーシップ制度は現在全国100以上の自治体で導入されているが、保障する権利や自治体間の相互利用など、内容が異なることもある。
「東京レインボープライド」共同代表理事の杉山文野さんは、トランスジェンダー当事者で女性パートナーと子育てをしている。異性カップルとして子育てをしながら暮らしているが、杉山さんは戸籍上の性別を変更していないため法的には同性カップルとされ、子どもたちとも家族として認められてない。
杉山さんは同性パートナーだけでなく一緒に暮らす子どもも家族として認める「ファミリーシップ制度」について言及した。
「0歳と2歳の子育てをしていますが、法的には赤の他人のシングルマザーとその子どもたちと同居しているという状況です。保育園の送り迎えをしても、ミルクをあげてオムツを換えても、日本の社会からは家族として認められません」
「日常生活で非常に困ることもありますし、寂しい気持ちもずっとありました。早期に、そして充実した内容になることを願っています」
小池百合子都知事はこれまでに「調査の結果をふまえて、都としての同性パートナーシップ制度の検討を進めていく」と前向きな姿勢を示している。
「プライドハウス東京」代表の松中権さんは「早期実現にまったなし」と語った。
「採択はされましたが、制度自体はまだできていません。東京の中で困っている方はすでにいるので、調査を長いことかけてずっと制度ができないということではなく、なるべく早く実現していただきたいと心から思っております」と話した。
今、国会ではLGBTQの権利をめぐる議論が紛糾している。自民党が「LGBT理解増進法案」の今国会での提出を断念したからだ。
国の法整備が停滞している中、今回の都議会の採択や、福岡県・古賀市がファミリーシップ制度の導入方針を表明するなど、自治体レベルでの性的マイノリティの権利擁護は着実に進んでいる。
松中さんは「LGBTの人権に関してはなかなか理解が届かなくて、法律さえも実現できていないという状況なので、そのことを考えると悲しい気持ちになります。一方で、都議会の中で趣旨採択、全会一致で自民党も採択をしたというのは大きいのではと感じています。この動きが東京だけでなく、パートナーシップ制度のない都道府県や市区町村、そして国全体へのエンジンになってほしいと思っています」と話した。