自民党が「LGBT理解増進法案」の今国会への提出を断念したことを受け、LGBT関連団体が6月4日、全国にある自民党の都道府県支部を訪問し、今国会での制定を求める要望書を提出した。
団体は、自民党三役に対し、法制定を求めるFAXを送るアクションなども呼びかけている。
何が起きているのか?
東京オリンピックパラリンピックを前に、LGBTQ当事者や人権団体は、日本でも性的指向や性自認を理由にした差別を禁止する法律を作るよう求めてきた。
野党は「差別解消法案」を提出したが、自民党が作ったのは差別を禁止する法案ではなく、LGBTQ当事者に寛容な社会を目指す「理解増進法案」。
与野党での一本化協議でお互い譲歩し、法案には「差別は許されない」との文言が入った。
しかし、自民保守派の反発により議論は紛糾。法案はいったん了承されたが、党内手続きの最終関門となる総務会で国会への提出を断念する方針となった。さらに、この法案の審議の中で、自民党の議員らが「道徳的にLGBTは認められない」「LGBTは種の保存に背く」などLGBTQ当事者に対する差別的な発言をし、問題になった。
産経ニュースは法案の扱いについて、二階俊博幹事長、下村博文政調会長、佐藤勉総務会長の「自民党三役の預かり」とすることが決まったと報じている。
「今国会の制定を」要望書を全国の自民党に提出
法案の見送りに対し、当事者や支援者から抗議の声が上がっている。
6月3日から4日にかけて、当事者団体らは東京都や大阪府、兵庫県、愛知県など、全国にある自民党都道府県支部を訪問。今国会で新法制定を求める要望書を提出した。
東京・永田町の自民党東京都市部連合会では、東京レインボープライド共同代表理事の杉山文野さん、プライドハウス東京理事の五十嵐ゆりさんが要望書を提出した。
杉山さんは「一番に、これは命に関する法律です。来年にまた、という状況ではありません。子ども達が差別によって自殺に追いこまれている状況がある中で、まだまだ理解が進まないからと言っている場合ではありませんので、今国会で法案を通してほしい」と話した。
「『国民の理解が得られていない』という議員もいますが、それは自身が理解していないだけで、いつまでも国民のせいにするのは国民に対して失礼だと思います。『社会が混乱がするから』というのも、自身の頭が混乱しているだけなので、ちゃんと学んでほしいと切に思っています」
五十嵐さんによると、全国の提出代表者からは、要望書が受理されたとの報告が寄せられているという。今後も宮城県や福岡県など、全国の自民党支部に要望書を提出予定だ。
「性的マイノリティの生活や命を守る第一歩として、必要不可欠な法律」
LGBT平等法を求める国際キャンペーン団体「EqualityActJapan-日本にもLGBT平等法を」は、6月4日に文科省で記者会見を開き、改めて法整備の必要性を訴えた。
団体に加入するヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表の土井香苗さんは、「LGBT新法は、『差別を許さない』という言葉の入った、性的マイノリティの生活や命を守る第一歩として必要不可欠な法律。十分とは言えませんが、これがあることは絶対必要不可欠な第一歩」だと訴える。
そして、このような法律を日本で導入することは、多様性を掲げる東京オリンピック・パラリンピックの実現を目指す上で「国際的にも必要」だと強調した。
プライド月間が始まった6月2日には、国際オリンピック委員会(IOC)は、スポーツや社会の中での「インクルージョン」と「差別禁止」を訴える声明を発表。性的指向を理由にした差別など、あらゆる種類の差別禁⽌の重要性を改めて強調している。
土井さんは「IOCが踏み込んだ声明にまで至ったということを(日本政府は)重く受け止めてほしい」と話し、「LGBT新法を通すという方針に転換いただくことを強く求めたい」と訴えた。
アクションを起こしたい人はどうすればいい?
「EqualityActJapan」では、Twitter上でハッシュタグを使ったデモを呼びかけるなど、様々な方法でアクションへの参加を呼びかけている。
6月3日に行われたTwitterデモでは、「#今国会でLGBT新法の制定を求めます」というハッシュタグに法制定を求める声が多数寄せられ、関連ワードがトレンド入りした。
今後、アクションを起こしたいと思った場合、どうすればいいか。
同団体は6月4日現在、自民党三役の二階幹事長、下村政調会長、佐藤総務会長、そして加藤勝信官房長官に対し、法制定を求めるFAXを送るよう呼びかけている。
団体はFAXの例文や送り先などをTwitterで共有。「声は間違いなく届く」と、多くの人の参加を呼びかけている。