緊急避妊薬(アフターピル)を薬局で入手できるよう、スイッチOTC医薬品にすることを求める要望申請が5月28日、厚労省に提出された。
アフターピルは、コンドームの破損で避妊に失敗したり、性暴力を受けたりした際、72時間以内に服用して妊娠の可能性を著しく下げることができる。
海外の約90カ国では薬局で入手できる一方、日本では産婦人科などでの受診や処方が必須で、価格も高くアクセスのハードルの高さが問題になっている。
市民団体「緊急避妊薬の薬局での入手を実現するプロジェクト」はこの日、要望申請を提出後に記者会見を開いた。
「どんな人であっても、健康を守るために世界標準の方法と価格で緊急避妊薬にアクセスできて、自分の体を自分で決められる社会になる必要がある」と訴えている。
同団体は、今回の要望申請の理由について、
・新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、意図しない妊娠、性暴力、DVなどの相談が増加しており、アフターピルへの迅速なアクセス改善が求められている
・WHOなどの国際機関からもアクセスを確実にするよう求める提言や、薬局での販売が可能であるという声明が出されている
・オンライン診療が条件付きで解禁されたが、迅速な入手経路として依然高いハードルがある
といった点を挙げた。
「重要なバックアップを確実に」
アフターピルの薬局での販売をめぐっては、「性教育が先だ」「性教育をしっかり行い、アフターピルのお世話にならないようにすることが大切」という考え方も根強い。
メンバーの一人で産婦人科医の遠見才希子さんは、「たとえどんなに性教育が充実して知識があったとしても、『万が一』は誰にでも起こり得る。利用可能な社会システムがなければ、必要な時にたどり着けません。重要なバックアップを確実にする必要があり、薬へのアクセス改善と性教育は両輪で推進されるべきです」と主張した。
性暴力被害者が使用することを想定した場合では、「被害者が産婦人科や警察に相談せずに、薬局で済ませてはいけないのではないか」といった意見もある。
遠見さんは、性暴力の被害者が警察や産婦人科医に相談する割合は極めて低いことから「産婦人科医は、性暴力のごくごく一部しか見られていない。背景には性暴力に対する理解の不足、セカンドレイプなどの問題がある。タイムリミットのある緊急避妊薬を、迅速に安全に入手できる選択肢を広げることがまず重要だと思います」と強調した。
アフターピルの薬局での販売解禁について、厚労省は6月7日から検討会での議論を本格化させる方針だ。
団体は「いま一度、エビデンスに基づく国際機関の勧告や推奨の確認をぜひしてほしい」と訴えている。