厚生労働省は、新しい履歴書の様式例を4月16日に公表した。従来のJIS規格の様式例から性別欄の男女の選択肢を削除し、任意の記入としたほか、扶養家族の人数や配偶者の有無といった項目もなくした。国として履歴書の様式例を作成するのは初めて。
これまで厚労省は、企業向けのパンフレットなどでJIS規格の履歴書の様式例を掲載していた。市販の履歴書の多くも、この様式例を基に作られていた。
従来のJIS規格の様式例には、性別欄に男・女の選択肢が表記され、どちらかに丸をつける形だった。
新しい様式例は、性別欄を残した上で、男女の選択肢を削除した。欄外に、注釈として性別欄の「記載は任意です。未記載とすることも可能です」と明記した。
このほか、配偶者の有無、扶養家族の人数、配偶者の扶養義務の有無といった欄はいずれも削除された。
履歴書をめぐっては、トランスジェンダーの当事者や支援者から「カミングアウトを強制される」などとして性別欄の削除を求める声が上がり、1万3000筆を超える署名が集まっていた。
こうした要望を踏まえ、日本規格協会は2020年7月、JIS規格の様式例ごと削除した。JIS規格に替わるものとして、厚労省は今回初めて様式例を作成した。
トランスジェンダー当事者の遠藤まめたさんは、「これまで男か女かを選択しなければいけなかったのが、書かなくてもよくなったことは画期的で前進です」と評価する。
一方で、「性別を書かせることは『当たり前ではない』という国の見解が示された今、それでもあえて採用時に性別を尋ねる合理的な理由があるのか、ということが今後それぞれの企業に問われていきます」と話す。
厚労省の担当者は、性別欄そのものを残した理由について「企業などへの聞き取りなどを踏まえ、欄を削除することは混乱を招く可能性があると判断した」と説明する。
新しい様式例は、厚労省が事業者向けに毎年度配布しているパンフレットや、ハローワークの公式サイトなどに掲載される予定。
(國崎万智@machiruda0702/ハフポスト日本版)