文科省の調査によると、小学2年生がいじめのピークなんです。小学校低学年のいじめとはどんなものなのか、大人はどんな対応ができるか、いじめ経験者、居場所関係者、教員などの話をもとに紹介していきます。(編集長・石井志昂)
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eスポーツの分野で活躍中の永田大和さん(19歳)は、小学2年生から「教室では『居ない者』として扱われることが多かった」と言います。ほかにも心当たりのない噂話をされるなど、いやがらせを受けていました。これは「コミュニケーション操作系のいじめ」と呼ばれており、以前は中学生の子たちに多いいじめの形態と思われていました。
小学校にとどまらず、「幼稚園からコミュニケーション操作系のいじめが始まっていた」と語る女性(20歳)もいました。女性は幼稚園のころから、仲間はずれなどのいじめを受けていたため、小学校に入ってからは、いじめられないキャラを研究。その後は「自分を取りつくろうように生きてきた」と話してくれました。
このような陰湿ないじめの報告は、数年前から小学校低学年のあいだで増加していることが文科省調査でも明らかになりました。2019年度の調査によれば、学年別のいじめ認知件数は小学2年を筆頭に、小学1年生から小学3年生の低学年がトップ3を占めています(※令和元年度 児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査)。
低学年のいじめ、背景には何が
専門家の指摘を総合すると、いじめの低年齢化が進んだ要因は2つです。ひとつは調査の定義が変わったこと。ひやかしや悪ふざけと言った軽微な事例も報告するよう文科省が求めており、これに応じて小学校低学年のいじめ件数は増えました。もうひとつの要因は、小学校低学年の子どもたちが感じるストレスが増加したことです。
不登校の子どもたちなどを長年にわたり見てきた西野博之さん(フリースペースたまりば)は、ストレスのあまり暴発してしまい、人間関係を築きづらい子も増えてきたと感じているそうです。西野さんによれば、自分より弱い立場の子どもに暴力をふるうのは、子どもの性格が悪くなったわけではなく、小さいころからストレスを溜めこむ子が増えたからだと指摘しています。
要因は早期教育。幼稚園や保育園のころから、学校に適応するための教育が盛んになり「手遅れにならないように」と習い事を掛け持ちする子が増えているなど「子どもたちの生きづらさはピークに達している」と西野さんは言います。30年以上にわたり、小学校教員を務めてきた先生も「子どもたちの生きづらさ」を指摘していました。
チャイムが鳴る前に座ることや、班ごとに決めたマナーやルールを守らせるなど「子どもたちに求める規範意識が年々高くなってきていて、子どもがすごく生きづらそう」だと先生は語っていました。高い規範意識を年少のころから求めた結果、子どもたちは表面上「よい子」や「問題のない子」に見えるものの仲間内で暴力が横行してしまうのだそうです。
そもそも4月は、大人の注意が必要な時期です。進学・進級により人間関係が刷新され、「問題がない」と見られていた子もいじめの標的になってしまうことがあります。
この時期に大人にお願いしたいことは、たったひとつです。いじめが起きても「子どもどうしで起きたことだから」や「大げさにしなくても」と大人が勝手に判断するのは避けてください。いじめにより不登校をしている小学5年生の男児は「子どもがやったからと言って軽く扱わないでほしい」と訴えていました。
子どもが苦しんだら安心・安全の確保。これを大原則にして子どもを守ってもらいたいと思います。
(2021年04月16日の不登校新聞掲載記事『いじめのピークは小学2年生、低学年ほど注意を』より転載)